長期化する不登校…解決策は「家の外」にある!? 3つのヒント【知っておきたい「不登校」のこと Vol.3】
Woman.excite / 2024年8月31日 15時0分
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「学校に行きたくない」と子どもに言われたら、多くの親御さんにとっては青天の霹靂です。本連載の最終回は、ママやパパがテンパらないために大切なことを3つにまとめてお伝えします。引き続き、花まるエレメンタリースクールの校長“はやとかげ”こと、林隼人先生にお話を伺いました。
不登校が増加の一途を辿る中、関連情報は刻一刻とアップデートされています。
楢戸:国の登校支援の考え方は「学校復帰が前提」から、学校以外の場での多様で適切な学習活動の重要性を認める方向に変化しています。学びは「(地元の)学校に行く」の一択ではないことを頭に入れ、フリースクールなど別の居場所についての情報もインプットしておくと選択肢が広がります。
また、そもそも不登校について相談する場所は、学校以外にもあるという「他の相談先の存在」を知っておくことも大切です。情報収集をするときに役立つサイトをピックアップして記事の最後につけておきました。
情報収集をする中で、「こんな考え方があるんだ」「こんな場所があるんだ」「こんな活動をしている人たちがいるんだ」と知ることも閉塞感を和らげる一助になると思います。
(地元の)「学校に行く」一択ではなく、「いろんな場での学び方を試してみる」という選択肢を国が認めていること、「学校以外にも相談先として頼りになる場所がある」ことを知っておく。
ヒント2.「勉強の遅れが心配」で勉強させても意味がない
楢戸:学校を休むとなると、「勉強が遅れてしまわないかが心配」というママも多いと思います。そこは、どんなふうにお考えですか?
はやとかげ:不登校だった子が登校できるようになると、勉強の遅れが気になりはじめる方も多いです。そのときは、「もう(心配性や欲が)出ちゃっていますよ、お母さん」という話をします。
保護者の方が、勉強のことを心配するのは当たり前のことです。けれども、「今、保護者が勉強のことを考えたからといって、彼ら・彼女たちの心のエンジンが動き出すのか?」という話です。
心のエンジンは、ガソリンが満たされてから動くんです。勉強とは異なるモチベーションからでもエンジンが回りさえすれば、ボンと勢いがついて巻き返すことができます。
だから、心のエンジンが回っていないのに、「勉強が遅れるのが心配だから」という理由で勉強をさせようとしても、正直なところ、あんまり意味がないというか…。
楢戸:そうは言っても、周りに遅れを取っているのが不安になってしまうんですよね…。
はやとかげ:保護者の切実な心配も理解できますから、面談で対話をしながら時間をかけて丁寧に伝えていくこともよくあります。
たとえば、本を読み出すタイミングって、人それぞれです。小学校のときから読んでいるからOKという訳でもなくて、高校になってから急に読みはじめる子もいます。それは、なぜか? といったら、自分で「これだ!」と思ったからなんですよね。
「宇宙飛行士になりたい」という目的が見つかって、「この中学に行くんだ!」「この高校に行くんだ」となれば、本人に「何のために勉強するのか」というモチベーションがしっかりあるので、必要だと思えば勉強はします。実際に、入学当初は勉強に強い拒絶反応を示していてプリントにはまったく見向きもしなかった子が、「ここに行きたい!」という中学校を見つけたことがきっかけで夢中になって勉強をするようになったということもありました。
そういった内なる動機づけがなく、「心配だから勉強をやる」というのは大人でも難しいと思います。勉強は、「その子のヤル気スイッチが、いつONになるか?」という話です。
楢戸:「ヤル気スイッチ」は、保護者の永遠のテーマです。
はやとかげ:スイッチがいつONになるのか? ということで言えば、いろんな機会、いろんな体験をする中で、心が本当に「私、これやりたいんだ!」に出会うかなんだと思います。気になったことを調べてすぐ芽が出ることもありますが、それだけでなく、大人になってから「こういうことだったのか」と面白さに気づくこともとても大切です。
芽を出すタイミングはその子によってバラバラですが、見たり、聞いたり、触れたり、感動したりしたものは、その子の心の中に種がまかれています。今、私たち大人が子どもたちにできることは、できるだけ多くの種をまくことだと思って、いろいろな体験の機会をつくるようにしています。
■ひとりの友だちがいればすべてを超える
はやとかげ:不登校の場合は、それ以前の話として、その子が悩んで、心のエンジンが動かなくなっていないかを考える必要があります。そう考えていくと、根本は「人生、今、楽しいな」って思えるか? 1番は、そこの部分です。そして、それは何かといったら、「ひとりの友だちがいるかどうか」なんです。
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信頼できる仲間と出会えれば、すべてを超えてしまうんです。心のエンジンさえ動けば、彼ら・彼女らは、僕らが想像しないことを成し遂げていく…。僕らは、そんな卒業生を見てきました。
楢戸:花メンの第1回の卒業式に臨席しました。卒業証書を受け取った後、卒業生がひと言ずつ話す場面がありましたが、みんな自分の言葉をしっかりと持っていました。
はやとかげ:うちには、3~4年間くらい学校に行っていなかった子も多数在籍していますが、勉強についてはまったく問題ないです。これは、全員に断言できます。
勉強は心のガソリンを満たして動き出してから! いろんな体験をして、ひとりでいいので信頼できる友だちを作ることが大切!
楢戸:最後に、ママたちに「これだけは伝えたい!」ということはありますか?
はやとかげ:不登校が長引いてしまった場合、彼ら・彼女らが変わるときは、おそらく家の中ではないんです。変わるときは、何か機会が与えられて、「きっかけ」が生まれたときです。
右:はやとかげこと林隼人先生、左:著者
たくさんの不登校の子どもたちと出会ってきた僕は「不登校が長引いてしまった場合は、放っておいて治るということはない」と考えています。そのまま放っておくだけだと、「ただ家にいる」という状態が年単位で続くこともあります。
「トラウマだから家で休んだ方がいい」と勧める医師がいたり、勇気を出してバスに乗ったら、やっぱり怖くなってパニックになってしまったり…ということもあるでしょう。
でも、やっぱり僕は人が変わるときは、家の外で何かが起こっているときだと思うのです。「今日を凌ぐこと」だけに終始していたら、子どもはあっという間に大きくなります。
気がつけば数年経っていた、となったときに、「家で休んだ方がいい」と言っていた人が責任を取ってくれるのだろうか? そこは冷静に考えた方が良いと思います。焦る必要はありませんが、このことは忘れないでいて欲しいです。
焦りは禁物! でも、今の状況を変えるきっかけは「家の外にある」というのを頭においておくこと。
■不登校の子どもの課題がわかる…花メンの学び
楢戸:花メンには、数年単位で不登校だった子どもたちが毎日楽しそうに登校しています。どのような学びが行われているのでしょうか?
はやとかげ:漢字や計算といった基礎学習の時間は、全体の20%くらいです。その他の比重イメージとしては、PBL(プロジェクトベースドラーニング・課題解決型学習)が20%、体育が20%、畑が20%、宿泊学習といった野外学習が20%といった学びの中で子どもたちは育っています。
いろんなタイプの授業をやってみると、その子が抱えている課題がわかるんです。ある長期不登校の子は、1年生からまったく学校に行っていませんでした。中学年になった今年から花メンに通うようになりましたが、その子の今の課題は、(PBLの一環である)フリマ(フリーマーケット)で見えたんです。課題が見つかったら職員室の全員で、その子のことを話し合います。
■多種多様な生きた学びを子どもたちに!
楢戸:花メンの職員室に伺うと、いつもいつも、子どもたちのことを話し合っています。
はやとかげ:花メンをつくる前に、みんなで「どんな学校をつくりたい?」ということを話し合いました。結論、「職員室を、日本一子どもたちのことを話している職員室にしたい!」となりました。
花メンは、不登校に特化した学校としてつくった訳ではないんです。そうではなく、「(既存の学校にはない)独自の子どもの伸ばし方をガンガンやろう!」という気持ちで、毎日子どもたちと向き合っています。
英語、スポーツ、農業と、僕らが今までやってきたことすべてを注ぎ込んだ学校で、いわば「日本版インターナショナルスクール」というイメージです。花メンの開校時間から考えると、不登校の子どもたちが通ってくれることは僕たちの思惑通りです。
楢戸:取材当日、商店街で「一番好きな夏の歌」について街頭インタビューをしている花メンの子どもたちにばったり会いました。子どもからお年寄りまで世代の違う人に声をかけるのは勇気がいることだと思いますが、臆することなく話しかけていく姿に人間としての力強さを感じました。こうした多種多様な生きた学びで個性がどんどん発揮されていくのだなと感じました。
いかがでしたか? 長年、花まる学習会の高濱先生を取材してきました。花メンを運営している花まる学習会グループは、「新しい学びを追求しよう!」というエネルギーに満ち溢れていますが、そのエッセンスを濃縮したのが、花メンだという気がします。
子どもが不登校になるかもしれないという状況に動揺する親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、発達障害と診断された息子を育てた筆者は、子どもが「ふつう」から外れたときこそ、親子ともども世界が広がるチャンスなのだと実感を込めて思います。ぜひ、多くの学びの選択肢にアンテナを伸ばしてみてくださいね!
■不登校に関する情報収集で役立つサイト
●フリースクール全国ネットワーク
日本全国の子どもの居場所・フリースクールをつなぐネットワークのサイト。「加盟団体一覧」を見てみると、「新しい学びの可能性に挑戦している団体が、こんなに世の中にあるのか!」と驚く。地域毎に分かれているので最寄りのフリースクール探しに役立ちそう。
【学校以外の不登校についての相談先】
●こころもメンテしよう(厚生労働省)
国が作った若者を支えるメンタルヘルスサイト。「困ったときの相談先」をクリックすると、若者向けのサイトなので「どんなふうに相談すればいいの?」と初めて相談をする時の心の持ち方を知るコンテンツもある。「こころの相談窓口」には、地域の保健所や保健センターなど、公的な相談先が多数紹介されている。
●児童相談所一覧(こども家庭庁)
不登校の相談は、児童相談所でも受け付けている。都道府県別の対応窓口の電話番号が出て来るのでアクセスしやすい。
●カタリバ相談チャット
不登校支援の名著「不登校親子のための教科書」を作ったNPOカタリバのサイト。他の保護者の話が聞けるオンライン(Zoom)でゆるやかにおしゃべりする会を定期的に開催して」いるそう。不登校傾向で悩んでいる保護者を対象に、30分のオンライン面談も行っており、利用は無料。
花まるエレメンタリースクール(通称・花メン)は、学校に行かない選択をした子どもたちのためのフリースクールです。写真は実際の花メンの子どもたち。全員が不登校の経験があるとは信じがたい、生き生きと自信にあふれた表情です。
林 隼人(はやし はやと)プロフィール
花まるエレメンタリースクールの校長“はやとかげ”こと、林隼人先生
花まるエレメンタリースクール校長、ファッションブランド「ノットイコール」代表、農業×ビジネス教室「みんなビレッジ」主宰。元中学校教諭、サッカー日本代表 川島永嗣と立ち上げたグローバルアスリートプロジェクト学長を経て、高濱正伸との運命的な出会いがあり現在に至る。親と離れて暮らす社会的養護の子どもの人権活動にも取り組んでいる。
(楢戸ひかる)
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