ピアノ、ヴァイオリンを習わせても「練習しない」「続かない」…原因は親のNG行動?!【教えてまろさん! 悩みだらけの「音楽の習い事」 第2回】
Woman.excite / 2024年12月28日 18時0分
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子どもに人気が高いピアノやヴァイオリンなどの「音楽の習い事」。しかし、親にとっては「練習しない」「上達しない」などの悩みが尽きません。
そこで、NHK交響楽団特別コンサートマスターで、絵本『おんがくはまほう』で子どもが音楽に出会う最初の扉を紹介した、ヴァイオリニストの篠崎史紀さん(愛称まろさん)に、子どもの可能性を広げる音楽との触れ合い方や、親ができる最適なサポートについて伺いました。
後編では、音楽の習い事でよくある悩みについて、親の対処法をご紹介します。
NHK交響楽団特別コンサートマスター及び九州交響楽団ミュージックアドバイザー及び福山リーデンローズ音楽大使。愛称“まろ”。3歳よりバイオリンの手ほどきを受け、1981年ウィーン市立音楽院に入学、ヨーロッパを中心に幅広く活動し88年帰国。群馬交響楽団、読売日本交響楽団のコンサートマスターを経て97年NHK交響楽団のコンサートマスターに就任。九州交響楽団ミュージック・アドバイザー、リーデンローズ音楽大使、WHO国際医学アカデミー・ライフハーモニーサイエンス評議会議員。現在は後進の育成にも力を注いでいる。
■習い事が続かない…どうしたら?
“自分からやりたいといったのに、行きたくないと駄々をこねる”という悩み、ピアノやヴァイオリンを習っている子どもを持つ親御さんなら、一度は経験があるのではないでしょうか。
音楽の習い事は、親も一緒に楽器を学んでいくことが、楽しんで続けていくコツだというのを前編でご紹介しました。
そして、もうひとつ大切なことがあるとまろさんは教えてくれます。
「子どもと『共通意識』を持つことです。たとえば、サッカーや野球をみんながやりたがるのは、同年代の子が多く共通意識が持てるから。一緒に練習する友だちがいて、指導してくれる監督がいて、同じ目標に向かってがんばっていける。子どもは一緒にものごとをやって欲しいし、共感してもらいたいんです。
僕の生徒の中に、ピアノの発表会のために大好きなプリンセスの衣装を、おばあちゃんとお母さんと作りあげる女の子がいます。自分でドレスの絵を描いて皆で生地を買いに行き、ピアノを練習してる間におばあちゃんとお母さんが縫って完成させていくんです。こんな風に共通する目標に向かって一緒に進んでいける家庭の子は続くんです」
■コレがあれば子どもは進んで続けていく!
共通意識を持ってスタートできたら、子どもが進んで続けていくためにはどのようなポイントがあるのでしょうか。
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「結局、子どもは『好奇心』と『憧れ』以外では動きません。僕は実家が音楽教室だったから、小さい頃から楽器を持ったお兄さんやお姉さんが家に出入りしていて、自然と憧れを持ち、真似してやるようになっていました。
ある怪獣が好きな3歳の生徒は、ヴァイオリンを持つ手を矯正するために、自分で手首に大好きな怪獣を巻きつけて、腕を真っ直ぐにする実験をしています。僕自身も小さい頃にゾウと友だちになりたいと思って、動物園に楽器を持っていきそこで演奏したことがあるんだけど、親はそれを止めなかった。そうやって自由にやっているうちにどんどん友だちは増えていくし、面白くなってくる。
絵本「おんがくはまほう」のページを開くと…。
ちょっとくらい反則技でもやりたい気持ちを尊重し、可能性や想像力を最大限に広げて、自分で考える力を与えると、子どもは自ら歩いていこうとする。その『きっかけ』を大人が規制せずに与えてあげられるかで、続くかが決まります」
■子どもにとっていい教室の見極め方
それでも「習い事に行きたくない」といった時に辞めさせるべきかの判断は難しいもの。そもそも子どもに合う教室はどう見極めればいいのでしょうか。
「親は先生の肩書きなどで決めようとするけれど、子どもにとっては意味のないこと。きちんとした先生ほど、当たり前に正しいことしか教えないんだけど、子どもは「正しいこと」はまるで面白くないんです。
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もちろんそれが合う子ならいいけど、親は子どもの性格を分かっているはずなので、その子に合っていないと感じるなら辞めるべき。どんなに経歴が素晴らしくても、合わない人と一緒に居るのは大人でも苦痛でしょ。
いちばんは、子どもが興味を持った先生のところに行くことです。先生が好きだと続きます。あとはなるべく近いところ、また道中に興味のあるお店や寄り道したい場所があるという動機でもいいと思います」
■「家で練習しない」はどうすれば?
たとえ相性のいい先生に出会えたとしても、普段から家で練習するかというとそうでないのが厄介なところ。まろさんは両親から練習しなさい! と言われたことが一度もないのだそうですが、プロの音楽家になるほどの腕になるには相当な練習量が必要なはず。幼い頃はどうしていたのでしょうか?
・未就学児のうちの習慣づけ
「練習は習慣づけるというのが大事! 僕の場合、憧れのお兄さんお姉さんが身近にいたことや、楽器ができると世界中に友だちができるといわれたのがきっかけだったけど、気づいたときには楽器を弾くことが習慣化していたんです。歯磨きをしない、お風呂に入らないと気持ちが悪いでしょ? それと同じようにできれば未就学児のうちに習慣化してしまうのがベスト。習慣づけがうまくいかない原因は「親が先に結果を言ってしまう」こと。『歯を磨かないと虫歯になるよ』というように子どものうちから忖度させてはダメ。先ほどもいった『好奇心』や『憧れ』をうまく活用するといいですよ」
すでに小学生になっている場合でも諦めずに、とにかく「対話」をすることが重要とまろさんは続けます。
「小学生になると人格が出来上がってくるので、その人格を否定することなく、本人の意見を聞き、親の意見もきちんと伝えて対話を繰り返していくことが大切です。
日本人は“皆までいわずに察して”となることが多いけれど、それではすれ違ってしまう。対話をすることは時間もかかるし面倒だけれど、そこを省かないようにしてください」
親自身が時間に追われる毎日を送っていると、つい子どもにもスピード感や結果を求めてしまいがち。ほかの子よりも上達が遅いとヤキモキして、「自分の子は向いていないのでは?」と考えてしまうことも。
特に発表会などでは、否応なしにほかの子と比べてしまいます。そんな親御さんに向け、まろさんがアドバイスをくれました。
「親の競争心が強すぎると、子どもは潰れてしまいます。人と比較するのではなく、毎日その子自身がどうなのかが大事。発表会が何のためにあるかというと、子どもの自立を促すもの、自立のための訓練です。
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舞台の上に立ったら、何が起きたとしても最初から最後までひとりで解決しなくちゃならない。それまで何時間練習したとしてもたった1回の本番で独り立ちするという体験をするためのもの。
それを親が勘違いして、できていなかったことを指摘などしたら、子どもはやる気をなくしてしまいます。子どもが自立しようと一生懸命やったことを褒めてあげましょう」
■失敗して子どもが悩んでいたら?
もし、子どもが発表会で失敗して落ち込んでいる時にどう手助けしたらいいかも悩みどころです。
「失敗は成功の証。失敗したことを“やっちゃった〜”と子どもが楽しめていたらオッケー。でも悩んでいたら、なぜできなかったのか、一緒に考える時間を持つようにしましょう。
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そのときに重要なのが、無理に答えを出そうとしないこと。『回答ありき』の接し方をしていると、大人の様子を伺うような子どもになってしまう。
要は、答えが出ないことを議論して、『考える力』をつけることが大切なんです。そうすれば自ずと結果はついてくるはず」
■音楽の才能やセンスは必要なの?
音楽の世界では、持って産まれた才能やセンスが必要なのでは?と考えてしまいます。世界を舞台に活躍してきたまろさんはどう考えているのでしょうか。
「たしかに、もともと音楽の才能やセンスを持っている子はいるので、ゼロとはいいません。でも、環境がものすごく大事。
だいたい親御さんを見れば分かるんです。すごくファンタジックな子をみると親御さんが子どもと一緒にファンタジックに色々なものに興味を持って動いている。才能やセンスというものが存在するのであれば、それがいかに環境に左右されるものかが分かります。
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『感性』っていうのはどれだけ夢を見られるか。弟子たちにはよくモーツァルトの“夢があるから人生は輝く”という言葉を伝えています。その夢を持つのは子ども時代。子どもが直感で感じるものを大切にして欲しいです」
■いずれ親のサポートなしで歩んでいける!
大人はつい先回りして結果を求めてしまいがち。しかし今回のまろさんの取材を通じて、一緒になって夢を見たり、答えのないテーマを延々と話し合ったりすることが、いかに子どもの将来のために大切かを感じました。
共有時間を惜しまず寄り添うことで、いずれ親のサポートなしでも歩いていけるようになる。まろさんのお話には、心に留めておきたいヒントがたくさん散りばめられていました。子どもの音楽の習い事をどうしたものか…とお悩みの方は、まずはまろさんの絵本をお子さんと一緒に楽しんでみることから始めてもよいかもしれませんね。
\ ご紹介した書籍 /
リトルモア刊 文/篠崎史紀 絵/村尾 亘 1,879円(税込)
音楽は、どんな気持ちも伝えてくれるよ。音を鳴らせば、ワクワクするような出会いがきっとある!
NHK交響楽団の特別コンサートマスターを務め、「音楽は世界をつなぐ」と子どもから大人まで広く伝えてきた人気ヴァイオリニストの“マロさん”こと篠崎史紀による、初の絵本。
(佐々木彩子)
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