制作側から探る!NHK『妄想ニホン料理』面白さの秘密

Woman Insight / 2013年12月20日 17時30分

料理マンガ、グルメマンガなど、マンガ界では食マンガが大ブーム。王道の自分で作るレシピ解説型から、飲食店への訪問型、はたまた妄想を語りあうだけだったり、バトルに発展したり、共通していることは「食」という題材のみで非常に表現はバラエティ豊か。

一方、テレビでは、食を題材にした料理番組は多いが、ほとんどがレシピの解説か店舗紹介に重きが置かれている。自分でも作ってみたい、行ってみたい!というストレートな要望が多いのかもしれない。

そんな中、新しいテレビ番組がNHKでスタートした。『妄想ニホン料理』である。キャッチコピーは「新感覚の異文化交流クッキングバラエティー」。わかるようで、よくわからない。これは日本オリジナルの料理の名前を海外の料理人に伝え、どういう料理であるかは説明せずに、その名前と簡単なヒントから妄想で料理をしてもらうという番組。

例えば「メロンパン」の回のヒントは「メロンのパンという意味であるが、メロンは使わない」「口の中でくっつくことがある」「上から触ったときと下から触ったときとで触感が違う」というもの。嘘はもちろん言わないが、そのものズバリを特定するヒントはなく、これだけの情報で料理人が妄想して料理を作る。

奇想天外な料理が生まれる面白さは、誰でも想像がつく。でもそれ以上に、この番組が味わい深いのは、万国共通の料理人のプライドを感じる真剣さ、お題の料理に近づくのではなく、それをヒントにした自由な発想の豊かさ、料理に込められたその国の国民としての誇り、作る過程に見えるその人自身の人となり……など、ただの「料理番組」とくくるには惜しい、見どころが多い点にある。また、MCに清水ミチコさんと、初のMCとなる栗原類さんを起用し「組み合わせがシュールで面白い」と、人選がネットでも話題になった。

MCの2人へのインタビューはコチラ→ 栗原類「まかせっきりで申しない」と清水ミチコにネガティブ謝罪

この番組の企画から制作を担当する、NHKエデュケーショナル 特集文化部 部長プロデューサーの角野史比古氏にお話を伺った。

Woman Insight編集部(以下、WI) そもそもの番組コンセプトだけでも、既に面白そうだなと感じる番組ですが、どのようなきっかけで思いつかれたんですか?

角野史比古さん(以下、角野) 僕が食い意地が張っててかつ旅行が好きっていうのが大前提にあって。旅行中にメニューが読めなくて、何なのかわからない料理ってありますよね。そういうのを見ながらどんな料理か妄想して、お店の人に聞くと面白くないので敢えて聞かないで、料理が来てから「オッ!」ってなるのが好きだったんです。あと旅行に行ったときに現地のレシピ本を必ず買ってくるんですが、イタリア語とかフランス語とか、翻訳してみてもわからないのってありますよね。そういうのを、わからないのを承知でエイヤッって作ってみたりするんです。そういう風に、正解にまっすぐ近づいていくんじゃなくて、どちらかというと外れてるんだけど、何かおいしいものが出来上がるっていうのがとても好きで。そんな面白くて、新しい発見があるような番組ができないかなって思ったのが始まりです。

WI 正解に向かって進んでいかない感じがNHKの番組っぽくない印象ですが(笑)、すんなり企画は通りましたか?

角野 特番から始まった番組なんですが、ロケの前は「(海外の料理人から)そんなに自由な発想なんて生まれないんじゃないの」っていう人もいたんです。僕も周りにそう言われて、大丈夫かなって若干不安もあったんですね。でも実際にロケに出てみたら、ディレクターが「とにかく面白い」と言う。カメラマンも「ロケをしていて、こんなにどうなっていくかわからない料理番組なんてないし、すごくワクワクする」と言うんです。僕が思っていた以上に料理人の人たちの発想が豊かで、思った以上に面白かった。だから特番の評判がとても良く、ここまで来たっていう経緯です。確かに今までにないタイプの番組だったので、よくここまでやらせてくれたなって思います。偉い人で、誰か企画をかってくれた人がいたんでしょうね(笑)。

WI 想定していたこと以上のことが、連鎖して起きて今の状況になったんですね。なぜ清水さんと栗原さんを起用しようと思ったんですか?

角野 清水さんは当然、お料理がお得意でお好きであること。あとは『妄想ニホン料理』っていう番組はちょっと変わったコンセプトの番組なんで、これがツボにはまって面白がってくれる人をって思ったんですよね。清水ミチコさんなら、こういうのを面白がってくれるだろうってことと、清水さんって妄想と現実が入り混じったような、他のモノマネの方とは違う芸をされるじゃないですか。そういう清水さんの持つ感じが、この番組にはいいんじゃないかなって思ったんです。栗原さんは、存在自体が不思議な感じが面白いかなっていうのと、まったく新しいコンセプトの番組なんで、変にこなれていない、真っ白な状態の方に入っていただいてって考えました。実際にここまでやってきて、すごく、このお2人にお願いして良かったなって思っています。

WI この組み合わせも話題を呼んでいましたもんね。実際に放送が始まってから意外だったことってありますか?

角野 最大の(嬉しい)想定外は思った以上に、どの料理人の方も発想が自由で、それを引き出せたってことですよね。視聴者の方からの反応で意外だったのは、親子丼、カツ丼って、丼ものが続いたときがあったんです。すると視聴者の方から、「丼、丼と続いたので、ネタが少なくなっているのでしょうか」と始まり、さらに「長寿番組にしていただきたいので」と続き、「こういう風に(料理の)カテゴリをいくつかに分け、そのカテゴリを順番にやられるなどしてはいかがでしょうか?」っていうところまで考えていただいた、すごくありがたいご意見をいただたんです。面白いですという感想はよくいただくものの、ここまで考えてくださる、非常にこの番組を楽しんでいる方がいらっしゃるんだなって思いました。

WI テーマになる料理はどうやって決めてるんですか?

角野 会議で決めているんですが、「ニホン料理」っていう枠を広げたいっていうのもあって、例えば「メロンパン」みたいな、新しいけれど、大正から昭和にかけて日本オリジナルで生まれたものから、「ぬた」みたいに500年は歴史があるようなものまで、いろいろやりながら実験している感じです。あとはヒントを出しやすい料理ですね。まぁ、けっこう「これでいっかー」とか、適当ですよ(笑)

WI 訪問する国はどうやって決めているんですか?

角野 今回は「土手鍋」だったので「土手と言えばオランダだろう」とか、「ひやしたぬき」のときは、ベトナムとイタリアだったんですけど、「やっぱり麺を扱っている国がいいだろう」とか、何かリンクする部分があって面白くなりそうだろうっていう想定から選んでいますね。

WI 作ってもらう料理人の方(レストラン)はどうやって決めているんですか?

角野 現地コーディネーターさんにレストランのリストをもらって決めるんですけど、3つ星のレストランから気さくな食堂まで、幅を持たせるようにしています。あともうひとつ大きいのが、企画を実際にレストランに持っていったときの反応ですね。制作スタッフの間では「この2つの反応だったら当たる(面白くなる)」っていう法則が見つかったんです(笑)。まずは「こういう番組だ」って説明したときに、すごく面白がってくれる人。もう1つは、警戒しながら面白がる人。「ええ、それ何? 俺を試すっていうの? そんでどういう番組なの?」っていう風に、警戒しながらも興味のある反応を見せる人は、実際に面白いものを作ってくれる。そういう企画を持ち込んだときの反応とかも、レストラン選びに影響しますね。

WI 海外の料理人の方たちも、真剣に楽しそうに作っているのが印象的でした。

角野 我々が撮影で一番大切にしているのが「楽しく作っていただく」っていうことなんです。だいたいロケが終わると、みなさん幸せそうな顔になりますね。それだけ自由な発想で楽しく、真剣に作っていただけてるんですよね。料理名のヒントを出したら、そのまま流れで作っていただき、撮影する場合が多いので、こちらもどうなるか全くわからないんです。一番大変だったのがベトナムのときで、調理に10時間かかりました。それでもう、飛行機の時間が近づいて、でもまだ一生懸命作ってるし、って(笑)。そういうところがありがたいですね。

WI では最後に、この番組の見どころのアピールをお願いします。

角野 単純にバラエティとして楽しんで見ていただいてもいいですし、料理だけじゃなく、発想のヒントにもなるかなって思っています。ピースフルでハッピーな世界観を目指しています。1月の特番もすごく面白いのでぜひ!

この番組がまさに「新感覚」なのは、もちろんコンセプトの斬新さが大きいのだが、面白い料理を妄想してくれる料理人選びや、MCのふたりの人選、そしてスタッフのモチベーションなど、確実にやってもらえる規定路線だけに収めず、かといって投げっぱなしでもなく、チャレンジしつつ人の持つ可能性を引き出せるように練られている点にある。出演者、制作者、すべての関わる人がワクワクしながら作っているのが、視聴者にも伝わる。そんな、楽しいコンテンツ作りの原点を改めて認識させられた。(安念美和子)

NHK総合『妄想ニホン料理 新春スペシャル』
「あけまして、おめだて巻き!の巻」
2014年1月4日(土)23:20~24:00放送

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