「正しさ」から解放されないと恋愛なんてできない…【鈴木涼美】

ウートピ / 2019年7月10日 20時59分

鈴木:わりと世の中が間違い探しみたいになっちゃって、さあこのイラストの、差別的なところを見つけましょう、この小説と法律・条例を照らし合わせてアウトなところは? みたいな。すごく配慮しなきゃいけないことが増えて、特にネットなんかはそうじゃないですか。

だから、私の本は間違い探しをしたい人には、すごくいいと思います。1ページに4個くらいありますよ。「ここ見落としてますね」「ここもですよ!」みたいな(笑)。自分でやったって全部で何十個も見つけられるだろうし、私みたいな迂闊(うかつ)な人間が見落としてるところも多いでしょうね。

「正しさ」から解放されないとできないのが恋愛

——「正しさ」ばかりだと恋愛もつまらなくなっちゃいますよね。

鈴木:それこそ恋愛って、「正しさ」から解放されないとできないじゃないですか。恋愛って、基本的に“この人”と“あの人”を差別することだし、“この人”にしてあげることを、“あの人”にはしてあげられないことなので、正しさを知ると出家するしかなくなる(笑)。

——別に不倫とか浮気ってことじゃなくて恋愛自体正しさからは遠いものだから。

鈴木:恋愛は本当に一番、正しさの間違い探しをしている世の中では、回収に困る分野だと思いますね。不倫も一時期すごくたたかれましたけど、結局、ポリティカルには間違いだらけの恋愛の分野で、分かりやすくたたけるからなんですよね。でも結局、不倫とかも、恋愛の一部分であるがゆえにたたいてもしょうがない部分はある。

恋愛って、愛し合ってる男女の前に正しさが無効になる瞬間を指す気がするんです。間違ってて、みっともない考えがどうしたって浮かんでくる。恋愛の話を書いてると、正しさをぶっ飛ばして書かないと何も書けないみたいな状況はよくありますよね。

「この善良な人が与えてくれた愛を、どうして受け止め、返してあげられないのですか?」「え、だって好きじゃないもん」ってね。

本にも書きましたけど、女同士って基本、男のちょっとした言動にいちいち反応して妄想とかするじゃないですか。妄想というか、いろいろ深読みするじゃないですか。

——しますねー、学生時代に鍛えた国語の読解力をフルに使っている。深読みしすぎて間違っている場合も多いと思うけれど……。

鈴木:でも経験上、ファミレスでは自分らの妄想へのツッコミも込めて「そこまで考えてない男ばっかりだから」とか言っちゃう。ある種、男性蔑視の塊みたいな。男だって思慮深い人もいれば憂鬱に考えてばかりの人もいるかもしれないのにね。好き勝手言ってるんですよ。

でも、逆に考えると、女に対して好き勝手男が言ってることに、女性は今すごく敏感でしょ? だけど女だって男を語らせたらまぁまぁひどい偏見だらけですよね。だから、お互いもっと懐深くなった方がいいような気がするし、この本も懐深く読んでほしいですね。

実は意外と、男性は好意的ですね。結構ボロクソ書かれてるのに。「つらいです」「ごめんなさい」みたいに言ってくる男もいる。

——男の人が鈴木さんに「つらい」って言ってくるんですね。

鈴木:「これ俺のことでしょ?」とか言ってくる男の人も結構いて。いや、必ずしもそうとは限らないんだけど、と思うこともあります。でも逆に、その人のこと書いてるのに、「すごく面白かった。こんな人たちいるんだね」って気付いてない人もいて。男の人って、自意識過剰か自意識ないか、両方いますよね。

——お前だよって(笑)。

(聞き手:ウートピ編集部:堀池沙知子)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング