分かりやすく「悪」を断罪する危うさ…『よこがお』深田晃司監督に聞く

ウートピ / 2019年7月11日 20時45分

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身に覚えのないことで世間から責められ、気付けば加害者へと転落していた——7月26日公開の映画『よこがお』は、主人公・市子(筒井真理子さん)が不条理なことで“これまでの日常”を失いながらも、どん底から再び立ち上がろうとする物語です。

訪問看護師として働く市子は、訪問先の大石家の長女・基子(市川実日子さん)の介護福祉士の勉強を見てあげるほど一家から信頼されている存在。ある日、基子の妹・サキが行方不明になる事件が起こり、犯人が意外な人物だったことから市子は事件への関与が疑われ、ねじ曲げられた真実と世間によって追い詰められていきます。

分かりやすく「悪」を定義することの危うさを突き付ける『よこがお』。監督・脚本は、『淵に立つ』など人間の心の深淵を描く手腕に定評がある深田晃司監督です。映画を作る際の女性の描き方や表現への向き合い方などについて、3回にわたってお話を聞きました。

誰でも犯し得る気付かない罪

——『よこがお』で理不尽に追い詰められ、気付けば闇に落ちてしまう市子がリアルで信じられる気がしました。というのは、NHKの「連続テレビ小説」に出てくるような、夢を目指して明るくがんばるヒロインを見ると、正し過ぎてしんどいと感じちゃう時があります。この主人公の設定はどこから着想を?

深田晃司監督(以下、深田):もともとはプロデューサーの方から「女性3人の運命が絡むようなドラマにしたい」という提案を受け、それを原案として考えていくうちに別物になっていったんですけど、ああいうふうに主人公が落ちていく展開にしようと思ったきっかけはちょっと記憶が曖昧なんです。

「アイデアはどこからですか?」という質問は難しいんですよね。だいたい、連想ゲームみたいに考えているので。その源泉が分かれば、今後創作が楽なんでしょうけど(笑)。

でもたぶんイメージしていたのは、ジョン・カサヴェテス監督の『こわれゆく女』。途中からはっきり意識していたのは溝口健二監督の『西鶴一代女』ですね。ひたすら1人の女性の流転を描いていく作品にしたいなという気持ちはありました。

——ネタバレになるので詳しい理由は伏せますが、市子が世の中から責められる理由は彼女が昔してしまった、悪気のないセクシャルな好奇心によるものです。「もしかしたら、私も市子のようになるかもしれない」という怖さを感じました。

深田:あのエピソードはなるべく、「起こり得そうで特に罪もないような、かわいらしい話」として描きながら、もしかしたら市子が気付いていない罪かもしれないという、ギリギリの線にあるものを考えました。相手が嫌ではないふりをしていただけで、実は嫌だったかもしれない。見方を変えれば告発につながるようなものにしました。

安心したくて、分かりやすい型にはめる

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