女子スポーツ発展の裏に現代にも通じる「女の苦悩」あり【いだてん】

ウートピ / 2019年7月13日 16時10分

寺島が菅原の五輪出場を勧め、傷ついた心を支えていく穏やかなシーンがとてもよかったので、かいつまんで抜粋しておく。

国際大会出場を躊躇する菅原に、寺島は「今、あなたはご幸福ですか?」と問う。菅原は「婦女子はスポーツなどやるべきではない。さっさと結婚して子を産むこと、それが幸福というならば、私は幸福などなれないし、ならなくても結構です」と頑なだ。世間のヤジに傷つき、幸福とは程遠い気分だともらす。寺島は現状を踏まえつつも、こう励ます。

「あなたには品がある。女性らしい恥じらいがある。笑われて悔しいと思う負けん気もある。出るべき、変えるべきよ。女子スポーツの未来を」

自分が持つ女性性を否定してしまう空気

寺島の言葉は、菅原の心をほぐす、実に素敵な言霊だった。ものすごいプレッシャーを与える言葉でもあるのだが、化け物と言われてきた菅原は自分自身の「女性性」すら否定的にとらえてしまっていた。

「女は清く正しく美しくおとなしく、黙って結婚して子供を産んでりゃいい」という世の中で、「ああ、では自分は女ではないのだ」と思いこませてしまう罪深さ。これは現代にも通ずる、呪縛でもある。

何がどうあろうと女は女なのに、自分の女性性を否定してしまう空気。女であることに自信をもてない空気。強いる世の中のほうがおかしいのに、なぜか女性は自分を責めてしまいがちだ。

そして、五輪に出場した菅原は、100メートルで予選敗退したものの、一度も走ったことがない800メートルに出場を懇願し、見事に銀メダルを獲得する。

帰国後、メダル獲得の報告に来た菅原に、寺島は再び「今、ご幸福ですか?」と問う。菅原は顔を上げて「はい」と即答する。「次は結婚ね」と寺島は言う。自らは成し遂げなかった経験を菅原には体験してほしいという願いもあったのだろう。しかし、菅原は「もう少し走ります」と日本の女子スポーツ選手を勇気づけたい、と強い意志を語るのだ。

幸せは誰かに押しつけられるものでもなく、世間に合わせるものでもない。自分が主語で考えて獲得するものなのだと教えてくれた、素晴らしいシーンだった。

もはや配慮を超えた平等の意識

現在、主人公は中村勘九郎から阿部サダヲへ移りつつ、しかも森山未來や神木隆之介らの落語パートも絶妙に絡んで、「スポーツと落語の二重奏」状態。ただ、現代女性の心の琴線に触れるポイントだけ書き出すと、もうこれは「おんな大河」ではないかと思われる。 

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