<Wコラム>康熙奉(カン・ヒボン)の「日韓古代史が面白い」渡来人の足跡(前編)
Wow!Korea / 2016年7月19日 23時16分
古代、朝鮮半島からやってきた人々はどのように総称されたのか。古代の日本では「帰化人」と言っていた。古代だけではない。1970年代まではその呼び名が定着していた。しかし、今では「渡来人」という呼び方のほうが多い。「帰化」には、君主の徳を慕って臣下になる、という中華思想が込められているからだ。大陸から日本にやってきた人たちを「帰化人」と総称するのは、本来の意味では無理があるということで、今では「渡来人」という言い方が一般的になってきた。
■秦氏の隆盛
渡来人の集団の中でも特に有力だった秦氏(はたうじ)が日本に来たのは、4世紀から5世紀の頃と推定されている。
以後、秦氏は渡来系として急速に勢力を拡大。彼らは、養蚕機織や農業灌漑の技術を持っていることが強みだった。
川に堰を作って水を分散させて各地に供給するという土木技術は、京都盆地を豊かな農地に変えていく礎となった。
映画の撮影所が多かったことで知られる京都の太秦(うずまさ)。この地名に「秦」の字が入っている。このことからわかるように、太秦も秦氏にゆかりがある土地である。
かつて原野だった太秦から嵯峨野にかけての土地は、秦氏によって開拓された。それによって秦氏は莫大な資産を持ち、大和の朝廷が資金的に頼った。
■広隆寺を建立
秦氏の中で、特に名が知られたのが秦河勝(はたのかわかつ)である。彼は嵯峨野に居住し、大和にいた聖徳太子を援助した。秦河勝が太秦に広隆寺を603年に建立したのも、聖徳太子が仏教の教義を深めるためであった。
広隆寺は古くは蜂岡寺と称され、他に秦寺、秦公寺、葛野寺、太秦寺とも呼ばれた。広隆寺の成立を「日本書紀」はこう伝える。
太子が言った。
「私は尊い仏像を持っている。誰か、この仏像を祀る者はいないか」
秦河勝が進み出て言った。
「臣がこれを拝みましょう」
秦河勝が仏像を受け、蜂岡寺を建立した。
秦河勝が聖徳太子から譲り受けた仏像が、広隆寺の御本尊として現存する弥勒菩薩半跏思惟像だという。
これは推古天皇11年(603年)の話だが、以後も秦氏の勇名は轟いた。
■京都を開拓した秦氏
桓武天皇が都を移すときに京都を選んだのも、秦氏の財力をあてにしたからだ。こうして、794年に平安京の建設が始まる。
今も嵐山に行って川の岸辺に佇んでいると、随所に堰があるのがよくわかる。こうした堰の数々も、秦氏が嵐山一帯を開拓したときの名残だと言われている。
川の名は、渡月橋の上流は保津川と呼び、渡月橋の下流は大堰川という。この大堰川という名前も、秦氏が大堰を作って水利をよくしたことが起源になっている。
近くには松尾大社がある。
ここは秦氏とゆかりがある大社だ。
氏の神が住む山として秦氏の一族が崇めたのが松尾山(標高223メートル)で、そのふもとに秦氏が建てた社殿が松尾大社である。
ここは、京都でも最古に属する神社だ。
まさに、京都の発展は秦氏から始まった。都が築かれてから1200年以上。これほど長きにわたって人々を引きつけてきたのは、地の利が良かったからだろう。首都の座は譲っても、やはり京都は日本の歴史そのものである。
文=康熙奉(カンヒボン)
出典=『宿命の日韓二千年史』(著者/康熙奉発行/勉誠出版)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【初開催】京都 嵐山秋花火2024特別観覧 開催のお知らせ
PR TIMES / 2024年9月7日 16時45分
-
聖徳太子、実は「存在しなかった」説浮上。では、あの肖像画の人物は
日刊SPA! / 2024年9月7日 8時50分
-
「日本の仏教1500年史」大特集!釈迦の悟り、仏教の伝来から13宗派の教えと歴史まで/「歴史道 (れきしどう)Vol.35」9月6日発売
PR TIMES / 2024年9月6日 14時45分
-
お盆に実家に帰省したら、タンスから「聖徳太子」の千円札が! これってまだ使えますか? プレミアがついて価値が高い場合もあるのでしょうか?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月28日 3時0分
-
実家に帰省したら、父が孫に「聖徳太子」の1万円札をくれました。「旧札はめずらしいだろうから」とのことですが、今でもお店で使えるのでしょうか…?
ファイナンシャルフィールド / 2024年8月26日 2時20分
ランキング
-
1「コナン」「クレしん」出演声優 所属事務所が契約解除発表「重大な契約違反が認められた」
スポニチアネックス / 2024年9月22日 21時29分
-
2内田有紀、元俳優の“パートナー”との関係性は「彼女、彼氏でもなく、家族。一番厳しい」重要さを力説
スポーツ報知 / 2024年9月22日 22時20分
-
3来場者トラブルで逮捕者が出た野外フェス 中止の決断「大変申し訳なく、心苦しく…言葉にならない想い」
スポニチアネックス / 2024年9月23日 0時1分
-
4《あえて物議を醸す?》トレンド世界1位連発『海のはじまり』が最終話までバズり続けた本当の理由
NEWSポストセブン / 2024年9月23日 7時15分
-
5【光る君へ】「ナレ死!?」序盤のメインキャラ退場「まだ生きてたの」再登場なく「あっさり逝った…」
スポーツ報知 / 2024年9月22日 21時1分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください