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<Wコラム>夏こそ行きたい! 韓国南部の旅1~済州島でアワビを食べる

Wow!Korea / 2016年8月2日 17時51分

長老はさかんに大型のアワビを勧めてきた。今度の言葉はよく聞き取れる。相手から色好い返事を引き出そうと必死の長老は、まるで公営放送局のアナウンサーのように言語明瞭となった。

大きな声では言えないが、私は気も弱いし、疑い深い。まず、「今そこで採ってきた最高のもの」というのが怪しい。そんな新鮮な上物は真っ先に西帰浦の高級店に持ち込むのではないか。滝を見に来た観光客にパッと出すだろうか。そう思うと、どうしても相手の言葉を額面通り受け取れない。

一応、お勧めのアワビの値段を聞いてみた。5万ウォン(約5千円)だそうだ。予想をはるかに超えていた。

上目遣いに長老の顔を見た。笑っている。目以外は……。

どうする?買うか、買わないか。

何よりも、買わなかったときの、長老の再度の豹変ぶりが怖かった。

耳元には、滝の水しぶきの音がたえず聞こえてくる。それが、いかにも催促の声のように聞こえてきた。

■焼酎を飲みながら

ようやく覚悟を決めた。生唾を呑み込みながら、細い声で言った。

「あの……、2万ウォン(約2千円)のアワビを……」

その瞬間、長老の顔が一気ににやけた。

本当に、目も笑ったのだ。

小さい奴だとあきれたのか、と思ったが、そうでもないらしい。

長老はたらいの中を見渡して、ヒョイと一つのアワビを取り出し、まないたの上で手際よくさばくと、白い皿に盛って私に手渡してくれた。その動作には私に対する好意すら漂っていた。

堅実な奴だと評価してくれたのかもしれない。「観光地では口八丁手八丁でいろいろなものを売りつける商売人がいるけど、そんな者に惑わされないで堅実に飲み食いをしろ」と私に無言で語りかけてくれたのかもしれない。私は焼酎も頼み、2万3000ウォン(約2300円)を払った。

海女さん3人をしっかり正面に見据える岩場に腰を下ろして、焼酎を飲みながらアワビの刺身を食べた。

固くてコリコリしていて容易に噛み切れないが、口の中に潮の香りが満ちて、舌に独特なヒンヤリ感が漂う。うまく噛み切ると、コロッと身が裂けていき、あっさりした味わいが舌に残る。

この食感の良さがアワビ人気の秘訣か。

■「ありがたい」という気持ち

アワビの刺身には肝も付いていた。食べてみると、苦みがなく、甘味すら感じられた。

このあたりはサザエの肝とは違った。

ツマミが旨いから焼酎もよく進む。「ありがたい」という言葉が自然と口から出た。誰に感謝するわけでもない。

とにかく、「ありがとう」なのだ。

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