米刑務所で壮絶な“いじめ“を受けた元ヤクザ いじめ撲滅に尽力、小学女子の妊娠にも向き合う 新刊で思い綴る
よろず~ニュース / 2024年5月17日 12時10分
![米刑務所で壮絶な“いじめ“を受けた元ヤクザ いじめ撲滅に尽力、小学女子の妊娠にも向き合う 新刊で思い綴る](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/yorozoonews/yorozoonews_15264829_0-small.jpg)
米刑務所での過酷な服役体験を経て、現在は子どものいじめ撲滅に奔走する井上ケイ氏=都内
米国の刑務所での過酷な服役体験を経て、帰国後は社会奉仕活動を続ける「一般社団法人Homie子ども未来育成会」代表理事の井上ケイ氏が、日本を代表するヒップホップ・アクティビストのZeebraら第一線で活躍するラッパーやDJらと共に「いじめ撲滅」を掲げた活動を本格始動した。いじめ撲滅チャリティーソング「No Bully」の普及やライブを計画し、17日には自身の信条をつづった新刊「昭和に生まれた侠の懺悔~第2章 いじめ撲滅編」(東京キララ社)を出版する。同氏がよろず~ニュースの取材に対して思いを語った。
ケイ氏は1961年生まれ、東京都出身。幼少期に育児放棄を受け、暴走族や新宿・歌舞伎町の少年ヤクザを経て暴力団員となり、バブル期に20代で経済的な成功を収めるが、ハワイでFBIのおとり捜査によって逮捕され、米国の刑務所で10年以上も服役。殺人が絶えない獄中で「チカ-ノ」と呼ばれるメキシコ系ギャングから「家族」の大切さを学び、2001年、日本に強制送還された。神奈川県を拠点に、アパレルブランドなどの経営、漫画原作者や作家としても活動しながら、非行や児童虐待などの問題に取り組むボランティア活動を通して子どもたちと接してきた。
自身も小学生時にいじめを体験した。
「どんな子でも必ず1回はいじめにあっていると思うんですよ。自分も小学校4年の時、貧乏で毎日同じ服を着て、1年間、靴下も履いたこともないくらい汚い子どもだったからターゲットになった。社会科見学でグループを作る時に誰からも誘われずにハブかれたり。ただ、自分は『いじめられるんだったら、逆に、こいつらみんなやっつけちゃえ』と、学校の机とかで相手全員を殴っちゃったんですね。その後は自分をのけものにしていた子らが毎朝、家まで迎えに来たり、『うちにご飯食べに来いよ』と誘ってくれるようになった」
大人の世界にも「いじめ」はある。
「アメリカの刑務所に入ると、『指を欠損して和彫りが入った日本人のヤクザ』が珍しがられ、夜、看守に『お前、来い』と広場に連れて行かれた。そこで全裸にされ、女性も含む200人ぐらいの看守全員に囲まれてビデオカメラで撮影されるんです。それも、いじめの一種ですね。抵抗したら独居房に入れられるので逆らえない。看守たちは面白半分なんでしょうが、やられてる側は精神的にきつかった。刑務所を移る度にやられ、我慢することを覚えた」
帰国後、偏見の目にもさらされた。
「最初の頃は『今までさんざん悪いことして、何ができるんだ。子どもの名前使って金もうけしてるんだろう』などと言われてきました。それでも続けていると言われなくなり、自分のことが小学校の先生が読む本に載ったり、教育委員会から『学校で授業をやってください』と言われるまでになった」
子どもとは成人後も交流する。
「20年くらい前に接した子どもたちは結婚し、彼らが連れてきた子らも自分のことを『ジイ』とか『ジジジ』とか、おじいちゃん扱いで、孫のような感じです。みんなマジメにやってます。中にはヤクザになった子が何人かいて『自分、いっぱしのヤクザになりました』と報告に来るんです。『それ、違うだろ。そういうとこに入ったら、うちは出入り禁止だから。辞めるまで来るな』と言って追い返しちゃいます」
親の無理解も背景にある。 「いじめられている子が相談にくると、自分は『もう、学校行かなくていいよ』と言ってます。それでも、どんなことをしてでも学校に行かせようとする親がいるんですよ。子どもにしたら地獄です。親を説得する方が全然、時間がかかりますね」。それは「性」の問題にもつながる。
「小学6年生のまじめそうな女の子が『お母さんに言えないんですけど、いま妊娠してるんです。どうしたらいいですか』と聞いてきた。相手の男の子は親友に紹介された中学生だったんですけど、避妊の方法も分からなかったと。それを女の子の母親に伝えると、『うちの子はそんな子じゃない』って信じないんですよ。病院で検査して初めて事実が分かった。女の子は妊娠を周囲に知られたら、いじめの対象になってしまう。出産した自分の子をトイレに流す事件も起きていて、罪の意識も重く考えられていない。それも問題だと思います。アメリカのように、日本でも小学4年生くらいから中学生にかけて、ちゃんとした性教育を行う時期なんじゃないですか」
「No Bully」を小中学校の朝礼などで流してもらえるように教育委員会などにも働きかけている。自身が小学生時代に体験したいじめは〝実力行使〟で立場を逆転させたが、「今はいじめの場がSNSになっていたりして、親や教師の目にも見えづらく、複雑で、より陰湿になっている」と指摘。「昔はいじめで自殺するなんて考えられなかった。この曲を毎週聴いて歌詞を覚えていく内に『自分たち、何やってんだ』と気づいて欲しい」と訴えた。
新刊では「虐めなど 強き者ほど しちゃならぬ 弱き者ほど 庇ってやれよ!」といった言葉を「書」で掲載。ケイ氏は「いじめる人、いじめられる人、それを取り巻く環境、すべてに変革が必要となっている」と呼びかけた。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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