「ツユクサナツコの一生」益田ミリ氏 ほんわかと笑い呼ぶ「自分が描く主人公に似ている」手塚治虫文化賞
よろず~ニュース / 2024年6月7日 7時10分
益田ミリ「ツユクサナツコの一生」(新潮社)の書影
漫画家の益田ミリ氏が6日、東京・築地の浜離宮朝日ホールで第28回・手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式に出席。「ツユクサナツコの一生」(新潮社)が同賞の短編賞に輝き、喜びの言葉を口にした。
マスク生活2度目の春を過ごす、32歳・漫画家のナツコを主人公が「いま」を漫画に描く中で、日々感じるモヤモヤ、社会の仕組み、アルバイト先に来たおじいさんのこと、戦争のこと、コロナで大学生活がままならないバイト仲間のこと…描くことで、世界と、誰かと、自分と向き合える、“わかり合える”って、どうしてこんなに嬉しいんだろう、と自分の「好き」を大切に生きる物語。
益田氏は「デビューをしてまもない頃、将来、何か賞をもらうことになったら、人前でスピーチがあるかもしれないと心配になり、スピーチ教室に申し込んだことがあります。説明会に行くと、毎週1分間スピーチがあると言われ、説明会で挫折しました。こういうところは自分が描く漫画の主人公たちに似ている気がします」と語り出し、会場の笑いを誘った。
空想の世界に登場する理想の自分を、絵に描き続けたという子ども時代を回想。手塚治虫「リボンの騎士」の主人公・サファイヤ姫にも憧れたという。今も当時の空想世界を思い出すことがあるといい「主人公のセリフに『自分が好きやと思うことは、一生死ぬまで自分だけのもんや』というものがあります。私も好きなことを続けていられる今に感謝し、これからも描き続けていきたいと思います」。さらなる創作への思いを口にし、改めて受賞の感謝を述べた。
同賞のマンガ大賞はヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス」(新潮社)、新生賞は坂上暁仁「神田ごくら町職人ばなし」(リイド社)、特別賞は発足40年を迎えたコミティア実行委員会(吉田雄平代表)が輝いた。
【次ページ】益田ミリ氏のあいさつ全文
【益田ミリ氏あいさつ】
デビューをしてまもない頃、将来、何か賞をもらうことになったら、人前でスピーチがあるかもしれないと心配になり、スピーチ教室に申し込んだことがあります。説明会に行くと、毎週1分間スピーチがあると言われ、説明会で挫折しました。こういうところは自分が描く漫画の主人公たちに似ている気がします。
子供の頃は空想ばかりしていました。空想の私は勉強ができ、ドッジボールが得意な、私がなりたい女の子そのものでした。私はそんな空想の自分を、いつも絵に描いていました。
「リボンの騎士」のサファイヤ姫もまた、私の憧れでした。私も空想の世界で、たくさんの冒険をしていました。学校ではドッジボールも逃げ回るばかりでしたが、漫画を描いているときは、深いところにある自分だけの世界に没頭することができました。今でも原稿に向かっている時、子供時代に潜っていた、あの楽しい場所を思い出すことがあります。
この度短編賞をいただいた「ツユクサナツコの一生」は、漫画家を目指す若者の物語です。主人公のセリフに「自分が好きやと思うことは、一生死ぬまで自分だけのもんや」というものがあります。私も好きなことを続けていられる今に感謝し、これからも描き続けていきたいと思います。この度はありがとうございました。
(よろず~ニュース・山本 鋼平)
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