圧巻の江戸職人漫画 坂上暁仁氏「画力に振り切った結果、桶屋がただ桶を作るだけに」手塚治虫文化賞
よろず~ニュース / 2024年6月7日 7時0分
![圧巻の江戸職人漫画 坂上暁仁氏「画力に振り切った結果、桶屋がただ桶を作るだけに」手塚治虫文化賞](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/yorozoonews/yorozoonews_15296127_0-small.jpg)
坂上暁仁「神田ごくら町職人ばなし」(リイド社)の書影
漫画家の坂上暁仁氏が6日、東京・築地の浜離宮朝日ホールで催された第28回・手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)の贈呈式に出席。新生賞に輝いた「神田ごくら町職人ばなし」(リイド社)の秘話を明かすとともに、職人への敬意を口にした。
江戸の職人の技に込めた思いを卓抜した画力で描いた独自性が評価された受賞。ただひたすらに、ひたむきに……伝統の手仕事を圧倒的ディテールで描くことで、桶職人、刀鍛冶、紺屋、畳刺し、左官と江戸職人の技と意地がよみがえる物語になった。
坂上氏は「ようやく自分は漫画界の中にいる、と胸を張って言える。手塚治虫さんに憧れて漫画を描き始めたので、夢が叶えられたようで嬉しいです」と受賞を喜んだ。同人活動と並行して方向性を模索していた頃、現担当編集者と出会い、「画力に振り切った作品を描いてみたらどうか」とアドバイスを受けたという。
坂上「画力に振り切るとストーリー、キャラクターが全部抜け落ちてしまうけれどいいですか」
担当「いいですよ」
坂上が「画力に振り切った作品を作った結果、桶屋がただ桶を作るだけのお話ができました」と続けると、会場は笑いに包まれた。
取材を通して職人の魅力に触れ、「『伝統もかつては革新から来ている』という言葉を僕はとても好きです」と敬意を持つようになった。「自分の作品で、少しでも職員さんの世界の魅力をエンターテイメントとして描くことができて、それでご興味を持っていただけるのであれば幸甚に存じます」と話していた。
なお、この日は大荷物で会場入りしたという坂上氏。「明日から島根に行って、たたら場で鉄を作ってまいります」。高い画力の持ち主は、職人の奥深さに心を奪われているようだ。
同賞のマンガ大賞はヤマザキマリ、とり・みき「プリニウス」(新潮社)、短編賞は益田ミリ「ツユクサナツコの一生」(新潮社)、特別賞は発足40年を迎えたコミティア実行委員会(吉田雄平代表)が輝いた。
【次ページ】坂上暁仁氏のあいさつ
【坂上暁仁氏あいさつ(一部省略)】
子どもの頃から漫画を描いてきて、プロとアマの境目が分かりませんでした。この度、栄えある賞をいただいたことで、ようやく自分は漫画界の中にいる、と胸を張って言えると思います。手塚治虫さんに憧れて漫画を描き始めたので、子どもの頃からの夢が叶えられたようで嬉しいです。
「神田ごくら町職人ばなし」は、いろんな偶然が重なってできた作品でありまして、2017年に立川談志落語「死神」を題材に描いた漫画が、ちばてつや賞入選をいただきました。ちば先生から「もっと貧乏な生活感を描けたらいいね」と指摘を受けました。そこから、その意味について深く考えてきました。
大学時代から一緒に同人漫画誌「すいかとかのたね」を作り続けている友人たち、親族の助力があり何とか漫画活動を続けられて、現担当の中川(敦)さんとお会いできました。そのときに「画力に振り切った作品を描いてみたらどうか」という話を受けまして、画力に振り切るとストーリー、キャラクターが全部抜け落ちてしまうけれどいいですか、と聞くと「いいですよ」ということでした。画力に振り切った作品を作った結果、桶屋がただ桶を作るだけのお話ができました。リイド社の「コミック乱」で描き始めたんですけれども、担当さんや出版社の方々が気に入ってくれて、続きを描くことができました。
何人かの職人さんや、金沢市の金沢職人大学校を取材に伺ったんですけど、職人さんは普通の人が目をやらないところまで創意工夫を行っていて、そのこだわりは個人の感性からくるものもあれば、伝統を受け継ぐという意志、両方があると感じました。金沢市の前の市長さんがおっしゃっていた「伝統もかつては革新から来ている」という言葉を僕はとても好きです。
今は職人さんのなり手がとても減ってしまっていると聞きますが、もし自分の作品で、少しでも職員さんの世界の魅力をエンターテイメントとして描くことができて、それでご興味を持っていただけるのであれば幸甚に存じます。実は今日、大荷物で来たんですけど、明日から島根に行って、たたら場で鉄を作ってまいります。今日はありがとうございました。
(よろず~ニュース編集部)
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