竹中直人が語る〝ショーケン論〟「リズムと本能、誰にも影響されないオリジナル」初対面で衝撃の第一声
よろず~ニュース / 2024年6月20日 7時30分
伝説のテレビドラマ「傷だらけの天使」のトークイベントで萩原健一さんについて熱く語った竹中直人=都内の新宿ロフトプラスワン
〝ショーケン〟こと萩原健一と水谷豊のコンビが躍動した伝説のテレビドラマ「傷だらけの天使」(以下「傷天」)が放送開始から今年で50周年を迎えた。その節目として世に出た書籍『永遠なる「傷だらけの天使」』(集英社新書)の刊行記念トークイベントがこのほど開催され、生前の萩原と公私ともに交流のあった俳優・映画監督の竹中直人が同作の魅力や独自の〝ショーケン論〟を熱く語った。(文中一部敬称略)
後追い世代となる70年代生まれの著者・山本俊輔、佐藤洋笑の両氏に迎えられ、ゲストの竹中が登壇した。
「僕は1956年生まれなのでリアルタイム世代です。萩原さんが(2019年に)亡くなった年齢と同じ68歳になりました。テンプターズ(※萩原が在籍したGSバンド)、『約束』(※萩原が大女優・岸恵子と共演して役者開眼した72年公開の松竹映画)、『太陽にほえろ!』(※日本テレビ系ドラマ、萩原はマカロニ刑事役で72-73年出演)、『傷天』…と見続けてきた。まさにスターでした」
74年の「傷天」放送開始当時、竹中は18歳。司会の2人から最も印象に残ったシーンを問われ、竹中は最終回(75年3月)でアキラ(水谷)の亡骸をドラム缶の風呂に入れ、オサム(萩原)が女性のヌードグラビアをその体に貼り付けるシーンを挙げた。「『アキラーッ!女、抱かせてやるからよ』ってセリフ、あれには僕も泣いたですね」
傷天ファンだった青年は俳優になった。
「まさか自分が映画(※89年公開の五社英雄監督『226』)で萩原さんと共演するとは思わなかった。(撮影時)僕は31歳でした。『226』は琵琶湖にセットを立てて撮ったんですけど、初日に萩原さんの方から声かけていただいたんです」
初対面の会話は竹中が出演していた毛髪関連商品CMの「ブランド名」を巡る不思議なやりとりだったという。
「遠くの方から『竹中さ~ん』という萩原さんの声が聞こえてきて、『見てるよ!アートネイチャー』って。その当時、僕は『アデランス』のCMをやっていたんで、『いや、アデランスです』と答えたら、萩原さんは『アートネイチャーだろ』。『いや、本人が言ってるんで…アデランスです』(竹中)、『いや、アートネイチャーだよ』(萩原)、『はい…、アートネイチャーです』(竹中)と答えてしまった(笑)。琵琶湖のオープンセットの遠くから走ってくる萩原健一の姿は一生忘れられない。夢を見ているようでした」
『226』の撮影で約2か月、京都に滞在。「土日の休みには飲みに連れて行ってくださった。『竹中さん、恋してる?』なんて聞かれたり」。東京の現場でも顔を合わせた。「日活撮影所のトイレで萩原さんに『竹中さん、写真、撮ってる?』と聞かれ、映画のことを『写真』と言うのがとても印象的だった。その表現に、テレビドラマもフィルムで撮影していた時代を生きた萩原健一をすごく感じました。『傷天』後では『祭りばやしが聞こえる』(※日本テレビ系で77-78年放送)という35ミリのフィルムで撮った作品がたまらなく好きでした」
同世代のライバルだった松田優作との比較を通し、竹中は敬愛する両者の個性を解析した。
「演劇をずっとやっていた優作さんは映画でも劇的なセリフを残していますが、萩原さんは音楽的なリズムというか、生理的、本能的なものが強かったんじゃないですかね。優作さんは原田芳雄さんに影響を受けつつ、萩原健一さんにも憧れていた。映画『ヨコハマBJブルース』や『ブラック・レイン』の芝居でもそれを感じました。(逆に)萩原さんって誰にも影響されていない。僕の勝手な分析で言うと、『祭りばやしが聞こえる』で共演した山﨑努さんによって芝居に対する興味や自分を変えたいという意識が強くなったという影響はあったかもしれないですけど、萩原さん自身がオリジナル。こんなに〝ブザマさ〟を表現できる俳優はいないと思います。そして、女性に対する憧れを常に持っていた」
竹中は萩原の「遺作」でも共演した。「NHKドラマ『不惑のスクラム』(18年)です。ラクビーの話で、炎天下の撮影中、僕は何度も萩原さんにタックルされてうれしかった。『萩原健一に後ろから抱きしめられてる!何度でもNG出してくれ!』って(笑)」
25日発売の自伝的エッセイ集「なんだか今日もダメみたい」(筑摩書房)でも「萩原さんのことを書いた」という。竹中は「萩原さんには浮遊感があり、常に揺らいでいる狂気がある。永遠に語り継がれる人物だと思います」と思いを込めた。(※同イベントの動画アーカイブは25日まで視聴可能)
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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