チェ・ジウ主演映画「ニューノーマル」チョン・ボムシク監督、孤立の先に見えた「犯人の“多様化”」に警鐘
よろず~ニュース / 2024年8月24日 8時20分
チェ・ジウが7年振りに出演した映画「ニューノーマル」が日本で公開となった(©2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.)
チェ・ジウが、7年ぶりにスクリーン復帰を果たしたことで話題を集めた映画「ニューノーマル」が、8月16日に日本で公開された。今回の日本公開を記念して、チョン・ボムシク監督が来日。「ニューノーマル」誕生完成までの胸の内を明かした。
「ニューノーマル」は、6つのオムニバスで構成されている。その物語のトップバッターとしてチェ・ジウが登場するのだが、思いがけない彼女の〝正体〟が早々に判明し、驚かされる。チョン・ボムシク監督は「この作品を考えた時、観客に〝オムニバス作品〟と思わせることが私の狙いでした」と明かし、「でもチェ・ジウさん演じるヒョンジョンは、その後のチャプターにも登場します。そんな彼女を見て、観客は初めて『この作品は、全てのチャプターがつながっているんだ』と気が付くんです。物語の展開を、映画『パルプ・フィクション』(1994年)のようにしたかったんですよ」と伝えた。
◆〝孤立〟によって引き起った事件の増加、犯人はいたって普通で身近な人々
本作は、ホラー・サイコ・サスペンスの要素でできているが、舞台はわれわれがまさに今生きている現代社会の日常の中で発生する。身近な題材なだけに、鑑賞後に抱いた恐怖感はより大きい。「今の時代は〝孤立〟によって、自殺や犯罪が起きているのではないかと思うんです。コロナ禍以降は、その傾向が強まったと感じます。私たちはそれぞれが〝個〟として存在していますが、生きる上では互いに影響を与え合っているし、つながっている。『ニューノーマル』は、それをわかってほしくて作りました」。
チョン監督は社会問題の一つとして〝孤立〟を挙げ、その結果が現代社会で次々に起こっている事件だと考える。それを分かりやすく伝えるため、劇中に登場する〝加害者〟たちは、いたって平凡で普通の人々だ。「昔は、驚愕・凶悪犯罪といえば少し遠い出来事というか、わかりやすい〝悪〟がそこにあったと思うんです。でも今は、人々の間にあったはずの〝安全の壁〟が崩れてしまった。私個人の考える〝安全の壁〟は法律や規律、道徳といったものを指しますが、あり得ないと思っていたことが、今の世の中ではたくさん起きていますよね。事件を目にするたびに『事件の関係者(犯人像)が、もはやニューノーマルになってしまったんだ』と思います。昨今耳にする〝多様化〟という言葉は、犯人にも当てはまるんですよね」。
同作は、2007年にフジテレビ系で放送された「トリハダ ~夜ふかしのあなたにゾクッとする話を」がクレジットされており、懐かしさのあまりその理由が気になった。「この映画を作る時、スタッフとたくさんの素材を集めました。韓国で起きた事件や犯罪、怪奇現象なども含めあらゆるものを収集し整理する中で、スタッフの一人が『トリハダ』で、似たエピソードが出てくると教えてくれたんです。それで、要素が似ているならきちんと版権を買って、作品に生かそうという話になりました。フジテレビに連絡した時、やはり『こんな古いドラマの版権を買って、どうするんですか?』と不思議がられましたね(笑)。その後、無事版権を買って、映画作りが始まりました」。
◆挿入歌が世界観の彩りに大きく貢献、RIIZEアントンも音楽制作に参加
劇中に流れるOST(オリジナル・サウンドトラック)も、劇中の世界観を彩るうえで大きな役割を果たしている。本作の音楽監督は、1990年代の韓国を代表する作曲家でありプロデューサー、そしてミュージシャンのユンサンだ。「私はシナリオを書く時から、映画音楽を並行して考えるタイプなんですが、今回は撮影に入ってからも悩んでいて音楽監督が決まっていませんでした。もちろん事前に選曲はするのですが、それをどう使うかというのがはっきりしなかったんです。そんな中、私は撮影現場に行く時、運転しながらユンサンの「Running」をよく聴いているのですが、ふと『ユンサンに頼んでみようかな』と思いました。依頼したところ、快く引き受けてくださり、私の描く雰囲気を伝えつつたくさん話し合い、想像以上に力強い音楽を完成させてくれました。ユンサンの親しいミュージシャンの方たちも参加してくださり、さらにユンサンの息子さんでRIIZE(ライズ)メンバーのアントン君も協力してくれて、それも一つの力になったと思います」。
「ニューノーマル」鑑賞後、夜道を一人で歩く時、いつも以上に注意深くなったことを伝えると、チョン監督は「してやったり」ともとれる笑みを浮かべた。「先ほども言いましたが、人々が孤立を好み楽しむようになった結果、現代のような社会ができあがってしまったと思っています。この作品のエンディングでは、登場人物たちがスマホを片手にご飯を食べるシーンが出てきますが、そこはかとなく虚しさや寂しさが見え隠れしているんですね。そして悪い方向に芽生えた〝自己依存〟が事件を引き起こす、その危うさが身近に潜んでいるということを、作品のメッセージとしてお伝えしたいです」。
◆チョン・ボムシク(ちょん・ぼむしく)1970年、韓国生まれ。2007年に映画「1942奇談」で監督デビュー。美しくも切ないホラー作品として評価を受け、同作で数々の新人賞を受賞した。近作「コンジアム」では、「体験型ホラー」というジャンルを開拓し、商業的な成功と人気を獲得。「Kホラー・マスター」「韓国ホラー映画の誇り」という確固たる肩書を手に入れた。そして新作「ニューノーマル」で、韓国映画界に再びセンセーションを巻き起こしている。
「ニューノーマル」
全国公開中
監督・脚本:チョン・ボムシク「コンジアム」
出演:チェ・ジウ「冬のソナタ」、イ・ユミ「イカゲーム」、チェ・ミンホ(SHINee)「ザ・ファビュラス」、ピョ・ジフン(Block B)「ホテル・デルーナ」、ハ・ダイン、チョン・ドンウォン
2023年/韓国/韓国語5.1ch/113分
原題:뉴 노멀(英題:NEW NORMAL)/字幕翻訳:根本理恵
提供:AMGエンタテインメント ストリームメディアコーポレーション/配給:AMGエンタテインメント
©2023 UNPA STUDIOS.ALL RIGHTS RESERVED.
(よろず~ニュース・椎 美雪)
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