ネトフリ『極悪女王』登場の伝説レスラー・マキ上田が作品絶賛「よくここまで」ビューティ・ペア役2人と対面も
よろず~ニュース / 2024年9月18日 12時10分
「極悪女王」配信記念イベントでリングに登場したマキ上田(後列中央)。前列の(左から)白石和彌総監督、ダンプ松本、ゆりやんレトリィバァらと声援に応えた=後楽園ホール
Netflixシリーズのドラマ「極悪女王」が19日、世界独占配信される。東京・後楽園ホールで開催された記念イベントのリングサイドには同作に登場する〝本家〟のレジェンドたちが陣取り、その中には1970年代に空前のブームを巻き起こした「ビューティ・ペア」のマキ上田がいた。女子プロレスを社会現象にまで押し上げた功労者の一人であるマキが、よろず~ニュースの取材に対し、同作の感想や出演女優とのエピソードを語った。(文中敬称略)
配信を1週間後に控えた12日夜、格闘技の聖地で行われたイベントには、主役のダンプ松本に扮(ふん)した芸人・ゆりやんレトリィバァ、好敵手となる「クラッシュ・ギャルズ」の長与千種を演じた唐田えりか、ライオネス飛鳥役の剛力彩芽ら女優陣が集結。長与が旗揚げしたプロレス団体「マーベラス」の全面協力で現役レスラーによるタッグマッチも行われた。
ビューティ・ペアは76年に結成され、マキと相方のジャッキー佐藤による敗者引退の日本武道館決戦を最後に79年に解散。劇中では、小学生の松本香(後のダンプ松本)が全日本女子プロレスの練習場に足を踏み入れ、一目でジャッキーの輝きに魅せられる。白石和彌総監督は「僕がこだわったのは実はビューティ・ペア、ジャッキー佐藤なんです」と証言。原点となる存在だった。
イベントのリングに上がったキャストのうち、ジャッキーを演じた鴨志田媛夢(ひとみ)は「宝物のような時間を過ごすことができました」と撮影を振り返り、マキに扮した芋生悠(いもう・はるか)は「レジェンドを演じることにプレッシャーもありましたが、マキさん、ジャッキーさんの2人がいたからプロレスが今も愛されているんだと思います」と心情を吐露。リングには、マキ、ダンプ、長与、ジャガー横田、ブル中野、大森ゆかり、ジャンボ堀、本庄ゆかり(クレーン・ユウ)ら往年の名選手がリングインし、それぞれが自身を演じたキャストと並んで記念撮影した。
終演後、マキを直撃すると、開口一番、「いくら女優さんだとしても、よく、ここまで作り上げたなと思いますよ。感心しました」と作品を絶賛した。
マキを取材したのは、コロナ禍の初年となる2020年、浅草の釜飯屋「田毎(たごと)」を訪ねた夏以来だった。48歳で結婚した11歳上の2代目店主が営む老舗店の女将として切り盛りしながら、左手を腰に当て、厨房から店内を見渡す姿は、コーナーポストの後ろからリングの相方を見守る姿と重なった。「浅草には縁を感じています」。今はなき浅草国際劇場で行われた伝説のビューティ・ペア公演を懐かしんだ。活動期間は3年だったが、業界の救世主として多忙を極めた。デビュー曲「かけめぐる青春」は約80万枚の大ヒット。人気絶頂の77年には東映映画「ビューティ・ペア 真っ赤な青春」に本人役で主演した。
マキは「すごく濃い3年間だったんですけど、あまりに(周囲の動きが)速すぎて、その重さが分かっていなかった。若いから突っ走れたというのもあります。2人とも歌で売れたい、テレビに出たいというキャラではなく、歌は仕事の一環だった。それがヒットして、会場の観客はおじさんから中高生の女の子に変わった。忙しくて、主演映画も観たことはないんです」と振り返った。
その店に、自身を演じた芋生が鴨志田と共に訪れたという。マキは「ジャッキー役の方と2人で、うちの店にご飯を食べに来てくれたんです。挨拶もしてくれました」と明かし、「(演技も)頑張ってましたね。作品も面白いものになっていると思います」とエールを送った。
ジャッキーは99年8月に胃がんのため41歳の若さで死去。この世を去る前年、当時、鳥取県で営んでいたマキの店で2人は再会した。「カラオケでビューティ・ペアの曲を何曲も一緒に歌いました。自分の体について何か察知していて、最後に会いに来てくれたのかもしれない…と後々、考えました」。その死から25年後、ジャッキーは新たな映像作品の中でよみがえった。
マキ(59年生)は今年65歳になった。「年もそれほど変わらないダンプ(60年生)やジャガー(61年生)が体にムチ打ちながら、よくやっていると思います。どんな世界でも最終的には精神力。私も入門時は『こいつより強くなってやる』という思いがあった」。全女ОGらとは現在も交流が続く。
超満員の会場には女子プロ〝黄金時代〟を追体験する若い世代の姿が目立った。女性客も多い。当時との相違点を問うと、マキは「そんなに違うとは思わなかったですね」と指摘。時代が変わってもファンの熱量は健在であることを実感していた。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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