紀州のドン・ファン事件、元妻の「覚醒剤購入を頼まれた」真相は?小川泰平氏「家政婦の証言あれば…」
よろず~ニュース / 2024年11月10日 8時30分
2018年、実業家の野崎幸助さんが不審死した和歌山県田辺市内の自宅(撮影・小川泰平)
2018年に〝紀州のドン・ファン〟と称された和歌山県田辺市の資産家野崎幸助さん=当時(77)=を殺害したとして、殺人罪などに問われた元妻須藤早貴被告(28)の裁判員裁判が8日に和歌山地裁で開かれ、被告人質問が始まった。事件を取材してきた元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏が、よろず~ニュースの取材に対し、焦点を解説した。
捜査関係者によると、野崎さんは18年5月24日、自宅で倒れた状態で発見され、死因は急性覚醒剤中毒と判明した。物的証拠はなかったが、須藤被告のスマートフォン解析など状況証拠の積み重ねによって、21年4月に同被告が逮捕された。起訴状によると、被告は殺意を持って何らかの方法で野崎さんに致死量の覚醒剤を摂取させて殺害したとしている。
今年9月12日の初公判で、須藤被告は「私は殺していないし、覚醒剤を摂取させたこともない」と無罪を主張。一方、検察側は同被告が18年4月に密売サイトから致死量の3倍を超える覚醒剤を注文し、その翌日には和歌山市内で密売サイト関係者に十数万円を支払って入手した計画性を指摘した。
そして、今回の被告人質問。須藤被告は55歳年上だった野崎さんとの関係について、「お金をくれるしラッキーで、うまく付き合おうと思った」「(求婚されて)毎月100万円ちょうだいと言った気がする」「契約みたいな結婚。愛し合ってする結婚ではないので(家族や友人には)言いませんでした」などと供述した。
その中でも注目されたのは「(野崎さんから)『もうダメだから覚醒剤でも買ってきてよ』と言われました」という供述。同被告が「お金くれたらいいよ」と返すと、野崎さんから20万円を渡されたとも付け加えた。この「ダメ」とは性的機能の衰えを指しているとみられるが、故人が自分の意志で購入を依頼し、結果的に自ら覚醒剤を過剰摂取した可能性を示したことで、被告による殺意の完全否定となった。
その真相について、小川氏は事件発生当時、須藤被告と共に自宅にいた家政婦が〝カギ〟を握る人物の1人ではないかと示唆した。
「須藤被告が田辺にいる時は常に家政婦さんと行動していた。2人で健康ランドから一緒に帰ってきたり、被告が教習所に通っていた時は家政婦さんが送り迎えをしたり…といった関係です。その家政婦さんに、私は事件発生の翌日にテレビ局のスタッフと共に単独インタビューをしたところ、家政婦さんは『社長は最近、若い奥さんをもらったから、夜、頑張ろうと思って、覚醒剤を飲んだんじゃないの』という話をしていました。『ラブラブタイム』と称し、野崎さんと須藤被告が1日4時間くらい、2人きりでいる時間があったなど、いろんなことを知っていた」
野崎さんが自宅2階にある寝室で意識のない状態で発見されたのは午後10時半ごろ。家政婦は同日午後3時過ぎに外出し、野崎さんと須藤被告を2人きりにしたという。ルーティンの「ラブラブタイム」を経て、家政婦は午後8時頃に帰宅。不在だった5時間の間に覚醒剤を摂取したと推測されている。
小川氏は「野崎さんがいる2階の部屋に須藤被告が8回も様子を見に行ったと思われること。4月7日、実際に覚醒剤を購入した日に、被告は『覚醒剤 過剰摂取』とか『完全犯罪』という項目をスマホ検索した履歴が残っていること。そういった状況証拠はあるが、被告は初公判から『殺害していない』『覚醒剤を飲ませていない』と言っているわけですから、今回も『野崎さんが頼んで、自分で飲んだ』という言い分になったのでしょう」と指摘した。
その夫婦生活の最も近いところにいた家政婦だが、出廷はしていない。小川氏は「家政婦さんの調書を作成した検察官が証人として出廷しただけで、本人に直接質問する機会は与えられなかった。『健康状態の理由』とのことですが、家政婦さんの証言があれば真相究明のポイントになり、何かが分かるのではないか」との見解を示した。
事件から4か月を経た18年9月下旬、都内の店で働いていた元家政婦を取材した際、記者に対しても「早貴ちゃん」と過ごした田辺での日常や、野崎さんの性生活などについてストレートに語っていた。ただ、核心に触れることはなかった。その後は公の場から消息を絶ち、他の関係者も含め、現時点で決定的な証言がないまま、公判は続く。被告人質問は11日にも行われる。
(デイリースポーツ/よろず~ニュース・北村 泰介)
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