「SHOGUN 将軍」真田広之が目指す映画における本物~「日本人としても悔しかった」伊藤さとりに語った言葉
よろず~ニュース / 2025年1月13日 12時20分
「SHOGUN 将軍」の来日イベントに出演した真田広之=2024年2月19日撮影
つい先日発表された「第82回ゴールデン・グローブ賞」ドラマシリーズ部門では、「SHOGUN 将軍」が、日本人初の主演男優賞(真田広之)と助演男優賞(浅野忠信)を受賞。他にもアンナ・サワイが主演女優賞(日本人では島田陽子が1980年の「将軍 SHOGUN」で受賞)、さらに作品賞も受賞した。
これに関しては先に発表された「第74回プライムタイム・エミー賞」で作品賞、主演男優、主演女優含む18部門受賞の快挙が意味する作品力とともに、投票者であるハリウッド外国人映画記者協会にも多様性が起こり、票が集まったこともあるのではと予測している。というのも2021年に本賞の選考委員が80人ほどで黒人が居なかったことが記事で明るみに出て、大々的な改革として性別や人種も配慮し、ハリウッド在住でなくとも良いという基準に変更。今や300人以上の投票者によって決まる賞へと変化したのだ。この結果、ほぼ日本語で展開される「SHOGUN 将軍」がハリウッドで開催される賞で作品賞を受賞したと考えると、世界に向けて開かれた賞にしていく為には、審査員の多様性が重要であると気付かされる。
確かにダイバーシティによって、映画製作にも変化は起こった。その影響が顕著に現れたのがディズニーの実写であり、「リトル・マーメイド」(2023年)ではアリエルは黒人に、「ピノキオ」(2022年)でもブルーフェアリーが黒人に変更され、元となるアニメ版が白人だったことで論争が巻き起こった。ただしこれは、観客がオリジナルであるアニメ版をよく目にし、その姿を脳に刷り込まれていたことからの副反応もあるのかもしれない。さらに製作チームの多くが白人スタッフとなれば、人種について意識している者が声を上げない限り、自分達の肌の色だからとキャラクターの肌も白くしてしまうかもしれない。そうなると世界シェアのはずのハリウッドでは白人目線の映画が増え続けてしまう。しかもアメリカには白人だけでなく、黒人はもちろん肌の色が違う人々が多く存在している。だからこそ世界に多くのファンを持つディズニーは視点を多様性に切り替えたし、世界放送となる米アカデミー賞も今や多様性を重視している。何故なら世界には多種多様の人種が存在し、その国特有の生活が物語として存在しているのだ。
この点について早い時点で気づいたのが、真田広之だ。
アメリカ製作の「ラスト サムライ」(2003年)は、トム・クルーズが日本にやってきた南北戦争の英雄を演じ、武士道を知るという日本を舞台にした物語であり、真田広之は侍のリーダー氏尾役で名を連ねていた。撮影時は、多くのアメリカ人スタッフの中、俳優として出演した原田眞人(「日本のいちばん長い日」他監督)とともに日本人から見たおかしな表現についてアドバイスをしたり、殺陣についても関わったと本人から聞いた。
「もっとやれることはあったんですよ。日本人としても悔しかった」
そう「ラスト サムライ」のキャンペーンで京都とへ向かう新幹線の中で当時、「ラスト サムライ」の来日イベント司会をしていた筆者に話してくれた真田広之。
それから何度か、本人出演の海外作品で凱旋するたびに司会者として再会したが、アクション映画ではJACでの経験を活かし、俳優のみならずアクション指導にも積極的に関わったと聞いていたし、「ブレット・トレイン」(2022年)来日時は、主演のブラッド・ピットからも「ヒロユキ」と呼ばれて絶大な信頼を得ていた。
「ラスト サムライ」から22年。間違いなく真田広之が目指したのは、映画として魅せる本物のアクションであり、本物に近い光景だった。日頃の信頼とアクション俳優としての実績、そして英語も話せる演技力により、いまや世界で公開される映画やドラマに関わることになった本人が到達した“日本の歴史を描くならば本物を知る日本人スタッフと”を、俳優だけでなくプロデュースという立場で実現させたのだ。それにより生まれた総合芸術が認められ、世界のニュースとなった。
実はこの「SHOGUN 将軍」というドラマには名セリフがある。「時は来た」という真田広之演じる虎永が吠えるセリフこそが、長年、俳優として海外作品にも貢献してきた真田広之や浅野忠信が、ダイバーシティを意識した今の賞レースの改革の中で、日本語での演技でも目に留まり讃えられたのではないか。何より本物に近い戦国時代の日本の光景と、責務の為に命を落とすことも厭わない武将や女性を迫力満点に演じきった俳優達の姿に世界が驚いたと言えるだろう。
(映画コメンテイター・伊藤さとり)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
真田広之〝叶った悲願〟ドラマ「SHOGUN 将軍」がゴールデン・グローブ賞4冠 求めた「ハリウッドで本物の時代劇を」
zakzak by夕刊フジ / 2025年1月7日 15時30分
-
「SHOGUN」ゴールデングローブ4冠は何が凄いのか 浅野氏のスピーチは「最も誠実なスピーチ」に
東洋経済オンライン / 2025年1月7日 13時0分
-
真田広之さんの主演男優賞など4冠の快挙 米ゴールデングローブ賞
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月6日 16時20分
-
真田広之 渡米から約20年の挑戦 ひたむきに追求したこととは… 日本人初のGG主演男優賞の快挙
スポニチアネックス / 2025年1月6日 12時57分
-
米ゴールデングローブ賞、真田広之さんに主演男優賞 浅野忠信さんは助演賞
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2025年1月6日 11時43分
ランキング
-
1高須クリニック・高須幹弥氏が明かした「中居正広氏について思うこと」 テレビ業界「性的『上納システム』」にも言及
J-CASTニュース / 2025年1月13日 12時17分
-
2激戦の女性アナ界、“新女王”田村真子アナの座を脅かすのは誰か? 岩田絵里奈アナ、原田葵アナ、鈴木奈穂子アナ…職人アナとキラキラアナの二極化時代に
NEWSポストセブン / 2025年1月13日 7時15分
-
3《再婚宣言から5年》ミュージカルに初挑戦の映画監督ジャッキー・ウーが明かした交際相手の元フジテレビアナウンサー河野景子との現在の関係
NEWSポストセブン / 2025年1月13日 10時59分
-
4ノブコブ吉村 新婚旅行でまさかのハプニング「一緒にいれたの3、4時間」結婚をラジオで改めて生報告
スポニチアネックス / 2025年1月13日 10時0分
-
5片岡安祐美 元DeNA・小林公太氏と昨年離婚と発表「この先も父として母として、息子を最優先に」
スポニチアネックス / 2025年1月13日 12時10分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください