【ヤマトHD】EC事業者を囲い込み アマゾンとも「特別運賃」で協調
財界オンライン / 2021年10月28日 18時0分
「ヤマトホールディングス(HD)の下にグループ会社がぶら下がる形だったが、この春からそれを1社にまとめ上げた。これにより、物流の上流から下流までの経営資源を全社的に有効活用することができるようになった」──。ヤマトHD社長の長尾裕氏はこう語る。
同社はコロナ禍で動き始めたEC分野に対応できる態勢づくりを進めている。その1つが年内から始めるアマゾン・ジャパンと共同で提供する「特別運賃」だ。ヤマトにとっては出品者を囲い込むサービスにつながる。
アマゾンのマーケットプレイスに中小企業などの出品者が自社で配送業者を手配して出荷する場合、ヤマト運輸を使えば割安な特別運賃が適用される。前月の利用実績により3段階の料金体系を採用し、実績が500個以上で最も割安な運賃となる。
ECに取り組み始めたばかりの新規の出品事業者は出荷のための人的リソースが不足していたり、配送品質に不安を覚えるケースがある。そういった事業者をサポートする考えだ。アマゾンに出品している中小規模の販売事業者数は約16万社に上るため、開拓の余地は大きい。
一方でヤマトHDはヤフーとも提携。商品管理や受注、出荷などの配送業務を一括して請け負うフルフィルメントサービスを始め、ほぼ全ての商品について全国での翌日配送を打ち出す。そのため「ヤマトの物流網がどこまで耐えられるのか」(配送業者幹部)と指摘する声も出る。
ヤマトHDの20年度の宅配便取扱数は初めて20億個を突破するなど、足元の環境は良好だ。だが利益面では法人向けに注力するSGHDに後塵を拝している。今後、ラストワンマイルを巡る戦略の差が業績に表れてきそうだ。
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