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あっさり「火消し」された金融所得課税見直し論【人気エコノミストの提言】

財界オンライン / 2021年11月6日 11時30分

岸田文雄首相は10月18日に出演したテレビ番組で、富の偏在を是正するための具体的方策として自らが提言していた金融所得課税(現在は一律20%分離課税)の見直しに関し、「当面は触ることは考えていない」、「すぐやるのではないかという誤解が広がっている。しっかり解消しないと関係者に余計な不安を与えてしまう」と強調した。

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 賃金を引き上げる企業への優遇税制拡充などに触れつつ、「成長なくして分配はない。金融所得課税を考える前にやることはいっぱいある」とも首相は述べた。「分配」重視を掲げる新内閣の目玉政策の1つが「火消し」された瞬間であり、マスコミは大きく取り上げた。

 金融所得課税見直しを岸田首相にあっさり撤回させたのは、株式市場、なかんずく海外投資家の影響力である。日経平均株価は10月6日にかけて約12年3カ月ぶりの8営業日続落を記録した。東証株価指数(TOPIX)は7日にかけて9営業日続落である。

 この株価続落劇を英経済紙フィナンシャルタイムズは「岸田ショック」と報じた。金融所得課税見直し論が株式投資家から嫌われたことを、下落の主因とする見方である。

 筆者はこの日経平均株価8日続落について、いくつかの原因が複合的に作用した結果だと理解している。最も大きな売り材料は、米欧を中心に急速に強まったインフレ懸念だろう。天然ガスや原油の急速な値上がりが米欧の中央銀行による利上げ前倒し観測につながり、「官製バブル」の様相を帯びてふわりと上昇していた株価を圧迫した。

 また、中国の大手不動産会社の経営不安や米国債の債務不履行懸念など、海外で意識される大きなリスク要因が、他にもいくつかあった。

 さらに、8日続落の前に、異例の急ピッチで日本株が買い上げられていた反動が出た面もある。菅義偉首相(当時)が自民党総裁選への不出馬を突然表明したのが9月3日。日経平均株価の終値は2日に2万8543.51円だったが、14日には3万670.10円になった。わずか8営業日で2127円もの急上昇である。

 自民党が衆院選で勝利する可能性が高まると同時に、新たなリーダーが推進する「改革」が日本株上昇に結び付くのではという期待感が海外投資家の間で強まったがゆえの、急速な日本株上昇だったとされている。しかもその動きは現物ではなく、足が速い先物の買いが主導していた。

 所得格差是正を、株価に悪影響を与えずに実現するのは、なかなか難しい。コンセプトとしては与野党とも掲げているが、実際にそれを短期間で実現できる切り札のような政策は、資本主義経済の下では存在しない。海外投資家の意向を無視しえないという、厳しい現実も浮かび上がっている。

 なお、フィナンシャルタイムズはその後、岸田首相インタビューを掲載。所得格差解消の狙いでアベノミクスと手を切るとの見出しをつけた。

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