【財務省】「賃上げ税制」で早速、手腕試される鈴木大臣
財界オンライン / 2021年11月9日 11時30分
鈴木俊一財務相は10月31日投開票の衆院選後、さっそくその手腕を試されそうだ。選挙戦で岸田文雄首相は賃上げを軸にした分配政策を掲げ、支持を訴えたため。賃上げは実現すれば多くの国民が実感しやすいだけに、すみやかに実績を示せなければ失望を招きやすく、政権運営が揺らぎかねない。
賃上げ税制の検討状況について10月15日の記者会見で聞かれた鈴木氏は「制度設計は正直これからだ」とした上で「追加的な税制支援を検討するよう指示を受けた」と説明。「首相の考えを受け、与党税調での議論を踏まえ対応していきたい」とも述べた。本格議論が始まる選挙戦後の11月以降、2022年度税制改正大綱をとりまとめる12月前半まで残された時間は1カ月程度と短いが、鈴木氏はいまだ具体策は言及していない。
そもそも、13年度に安倍晋三政権(当時)が賃上げ実施企業の法人税を軽減する制度を導入し、現行の税制でも賃上げや雇用を増やした企業は法人税額が圧縮できるが、従業員の給与アップなど待遇改善効果は薄いままだ。一方、税金や社会保険料の負担率も年々上昇しており、賃上げによる分配政策は容易ではない。自民党内からは現行税制について「財務省の設計は複雑で使い勝手が悪い」(幹部)と恨み節も出ているが、岸田政権の看板政策なだけに、選挙結果次第では議論が紛糾し、調整が難航するおそれがある。
現金給付など経済対策も焦点だ。鈴木氏にとっては直属の部下の筆頭である矢野康治財務次官が雑誌寄稿で与党の経済政策を「バラマキ合戦」と批判し、物議を醸した。事前に鈴木氏は了解していたとされるが、現職次官が公然と政権を批判するのは異例で、今後の財政運営への影響が注視されている。
【財務省】大臣交代で「政権内での主導権確保は難しい」と懸念
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