【倉本聰:富良野風話】ああ!國政
財界オンライン / 2021年11月19日 11時30分
最近こんなに腹立たしかったことはない。
衆議院選挙で自民党公認候補の応援演説に、小樽に現れた自民党副総裁・麻生太郎が街頭演説でのたまった、真面目ともジョークともとれぬ放言である。
「年平均気温が2度上がったおかげで、北海道の米がおいしくなった。昔、北海道の米は、厄介道米と言われるほど売れない米だった。(それがおいしくなったのは)農家のおかげですか?農協の力ですか?違います。温度が上がったからです」
麻生は「地球温暖化でいいこともある」例として、いつものべらんめえ口調に手ぶりをつけた熱弁で、エネルギッシュに聴衆に語りかけたという(東京新聞)。
本来、自民党の副総裁だから麻生氏と氏をつけるべきところなのだろうが、とても敬称をつける気にならず、あえて呼び捨てで呼ばせていただく。
一、彼は地球温暖化を一体どのように捉えているのだろうか。平均気温が2度上がったことを、本気で、真剣に考えているのだろうか。それは果たしてこのような形でジョークの種にして良いことなのだろうか。しかも一国の与党の副総裁の立場で。
一、農業者でつくる北海道農民連盟は、委員長名で直ちに抗議の談話を出した。「今までの北海道米を作る生産者の努力と技術を蔑ろにするような発言は断じて許されない、強く抗議する」。麻生は農民の永年にわたる血と汗の努力を知っているのか。本気で知ろうとしたことがあるのか。
一、ジョークというものを彼は果たして判っているのか。それがどれ程真剣に生き、食のために全身全霊を捧げているものたちを傷つける放言であるかということを、少しでも考えたことがあるのか。
一、この放言が、彼の地盤から遠く離れた北海道でなく、彼の地盤である九州でだったら果たして同じようになされただろうか。地元の農民たちに対して同じような放言をやってのけただろうか。
いやしくも彼は、日本全体の副総理であり、必死に国民に旨い米を喰べさせようと試行錯誤をくり返し、失敗をくり返し、そして血の出るような努力の結果、漸くみんなからおいしいと言われる北海道米を創り出した北海道の農民に対し、愚にもつかないこんなジョークを言い放つのは、まず無礼としか言いようがない。いや、無礼にも程がある。これは職業に対する侮辱であり、上から目線の差別である。
一方、かつての総理大臣はモリカケ・サクラのいずれにも詫びず、役に立たなかった不完全マスクを大量に余らして、その保管料を含め120億円近い血税を浪費して、これにも国民に謝罪しようともしない。それでもイチャモンをつけるだけの野党連合よりまだましと自民は再び国政を握ってしまった。
日本人であることが、もうイヤになる。
【倉本聰:富良野風話】朗読國会
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