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「ホテル事業からの撤退」、電通出身・SEN代表取締役・各務太郎氏の転機

財界オンライン / 2021年11月27日 11時30分

2019年に建築家、経営者としての初めての物件「hotel zen tokyo」を開業したが、コロナ禍で撤退を余儀なくされた

当社は現在、法人向けのメンタルヘルスケアサービスを展開しています。自分自身では認識しにくいストレスレベルを定量的に測定し、それを改善するためのマインドフルネスプログラムを提供しているのです。

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 我々のフィロソフィーは「自分と向き合う時間と空間をつくる」です。今はコロナ禍でテレワークが増加する中でストレスを抱える人も増えていますが、誰もが自分でメンタルの状態をマネジメントできるインフラをつくりたいという思いで立ち上げた事業です。

 現在数社に導入いただいており、そのフィードバックをいただきながらプロダクトの改善を続けていますが、皆さん社員のストレスの増加で離職率が高まり、人材コストも含め、経営の重荷になるという悩みを抱えています。その課題解決に、我々のプロダクトが貢献できるのではないかと考えています。

 そんな私の転機はホテル事業からの撤退です。私は2019年3月、東京・人形町に「泊まれる茶室」をコンセプトとしたカプセルホテル「hotel zen tokyo」を開業しました。私は電通出身ですが、元々建築家です。このホテルは私の建築家として初めてのプロジェクトであり、自分の全てを注ぎ込んだ、いわば「初めての子供」でした。

 しかし、コロナ禍で人の動きが止まりました。しかもカプセルホテルは個室で区切られていませんから、空気は共有されています。私はコロナが収束しても、この業態では事業が難しくなると判断しました。

 一時はベッドを取り除いて机と椅子を置き、個室のワークスペースとして提供しましたが、ホテル事業の収益とは比べ物になりません。ですから延命措置でしかないと見切りを付け、経営判断として20年12月で建物を解体することに決めました。

 深い悲しみに暮れましたが、それに浸るわけにもいきません。解体費用や違約金、資金調達をした投資家の方々への説明など、課題が山積していたからです。

 ただ、幸運なことに電通時代の直属の上司から、新会社のオフィスの設計を依頼されました。ホテル跡を紹介したところ入居してくれることになり、発生するはずだったコストがほぼなくなりました。まさにご縁に恵まれた形です。投資家にもご納得いただいて、次の一歩を踏み出すことができました。

 建築は空間デザイン自体が目的ではなく、その中でどのような活動が行われるかが大事だと考えています。デザインの質はそこで行われる事業に従うのです。ですから私はまず面白い事業と空間を自己資本で創り、あとから事業収益で回収する建築家でありたいと思っているのです。

各務太郎氏
各務太郎・SEN代表取締役

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