【岸田政権への提言】スピード感のある政策、決断力・責任のある政治を!
財界オンライン / 2021年11月24日 18時0分
与党は『絶対安定多数』を議席の上では確保したが、国民はスレスレの所で〝支持〟を出したという印象。野党は政権を担おうとするのなら抜本的に行き方を変革すべきという審判を国民は下した。要は、沈滞する日本をどう活力ある国にするかである。新型コロナ感染症は今、小康を得ているものの、第6波襲来の懸念はある。コロナ対応では後手後手に回り、医療崩壊の局面にあったという現実を踏まえ、政策決断の〝スピード感のなさ〟を反省、決断力のある政治を実行する時である。
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日本再生の行方
「危機感がまるで感じられない。日本再生が成るかどうか、大事なときなのに」─。
総選挙の結果、岸田文雄政権は一応、国民の支持を得て第2次内閣を発足させることになった。『成長と分配の好循環』は岸田政権の政策の根幹をなす考えだが、「改革や政策断行のスピードがとにかく遅い」とする意見が多く聞かれる。
財務省の矢野康治事務次官の〝与野党ともに財政バラマキ状況を憂える〟という雑誌への寄稿を巡って、政治家と官僚の関係もギクシャク。コロナ危機という国難にあって、日本再生をどう果たすかという時のリーダーとしての危機感、使命感が薄い現状を憂う声は強い。まずこのことを日本の行方を定める役割を担う政治家は肝に銘じるべきである。
グローバル展開をしている某有力経営者が憤る。「海外の主要先進国はコロナ対策と経済再生の両立を図って、迅速、機敏な対応策をとっているが、日本はまさに旧態依然。これでは世界に取り残される」と政府の対応のまずさを批判。
コロナ危機下で海外から入国する場合に、自宅やホテルなどで14日の待機義務があったが今回、3日間に縮小。しかし、海外での業務に携わるために、社員が出国の申請をすると「審査の結果は3週間後にお知らせします」と言われたという。これでは仕事にならないとして、政府の対応の鈍さを批判。
「特に政治のトップ層が決断すれば済む話」と、欧米に比べて対応が遅い、つまりスピード感の欠如である。
リーダーは責任を!
日本全体がリスクを取らず、車で言えば旧式の自動車で安全運転にこだわり続ける日本という姿が浮かび上がる。投資をせず、内部留保の蓄積に走る日本。このことは1990年、バブル経済が弾けて以降、GDP(国内総生産)は全く伸びず、「失われた30年」と言われる今日の姿につながっている。
このことは、『なぜ、GAFA(ITプラットフォーマー)が日本に生まれないのか? 』という問題意識を想起させる。
しかし、若い層には自らの手で起業し、グローバルに事業を展開したいという層もいる。こういうベンチャースピリッツの旺盛な若者への支援はもちろん、海外から優秀な頭脳や資金を呼び込む場づくりも必要だ。
岸田首相は『新しい資本主義』を掲げ、その考え方を元に基本政策を生み出すための『新しい資本主義実現会議』を設置。メンバーにAI(人工知能)やIoT(全てのものがインターネットにつながる)の専門家や、女性の社会参加を促すために活動している女性の識者も多数参加した会議だ。
会議は活発で、具体的な知恵が論議されている模様だが、ある有力メンバーは「要はスピードを持って実行していくことが問われる」と注文を付ける。
なぜ、政策実施のスピードが出ないのか。「結局は誰も責任を取らない体質」という指摘もある。また既得権益者の抵抗もある。改革で、既得権益が失われることへの恐怖から、新しい政策に非協力的ということだが、本当にそれだけか?
要はリーダーが責任を持って、国民に自分たちの政策の真意を伝え、国民もそれに応えるという関係をつくれないでいるということではないか。つまりは責任逃れの行動である。
矢野財務次官が指摘したように、財政は「打ち出の小槌」ではない。その財源の返済を担うのは今の現役世代ではなく、子どもや孫の世代。つまりは子どもや孫にツケ回しをしているに過ぎないということを一顧だにしないという無責任さである。
もちろん、困窮者を助けるのは政治の役割。要はその救い方のあり方である。真に困っている人を支援するのは当然として、そうでない人まで一律に支援金を支給するということには、多くの国民が疑問を唱える。
問題は本質的な議論、意見の集約がなされないまま、将来世代にツケを担わせる国債発行で賄う考え方の貧困である。
国民の微妙な判断
今回の総選挙では、大方の国民が均衡ある判断をした。与党・自民党は261議席という絶対安定多数を取り、公明党の獲得議席(32)を合わせると293議席。日本維新の会の41議席を入れると334議席になり、憲法改正案を国会で発議できる3分の2を上回る。
これで国民は完全に与党を支持したと〝自己満足〟してもらっては困る。立憲民主党は日本共産党との共闘が国民の反発に遭い、解散前の議席(109)を下回る96議席にとどまった。野党が本当に政権を担う政党になるには、与党に伍して真の政策立案政党になれるかどうかである。国民はそれに審判を下したということであろう。
与党も謙虚であるべきだ。与党の留意すべき点としては、1万票差で野党と争った選挙区が31あったということ。国民のさじ加減一つで、もし31議席が野党に流れていたとすれば、自民党の議席は230と解散前より大幅減になった可能性もある。
国民はスレスレのところで与党を支持したということに思いを致してのスピード感のある政策実現が必須である。
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