1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

【株価はどう動く?菅下清廣氏に聞く】米中対立で「漁夫の利」、難民問題の重荷のない日本が見直される展開に

財界オンライン / 2021年12月11日 11時30分

投資家からは岸田政権に厳しい声
 日本の株価の行方も左右する政治の動向ですが、自民党幹事長に茂木敏充氏、外務大臣に林芳正氏が就きました。岸田文雄首相が、この「二枚看板」、将棋で言う「飛車角」の力をいかに生かすかが重要になってきます。

【あわせて読みたい】【株価はどう動く?菅下清廣氏に聞く】岸田首相が、米株高を導いたバイデン大統領のようになる条件とは?

 岸田政権の「第一手」となるのが、11月19日発表の経済政策でしたが、この政策がもう一つパッとしません。全体的に総花的で具体性に欠けます。おまけに再び金融所得課税を持ち出しているので、株価暴落となっています。早くも「岸田、辞めて欲しい」という声が投資家から出始めています。

 また、18歳以下を対象とする10万円相当の給付を巡っては、所得制限などを巡って議論が起き、せっかくお金をバラまくのにも関わらず、支持率上昇にはつながっていません。

 岸田政権としては、2022年の参議院議員選挙を勝ち抜かなければなりません。ですから菅義偉政権から引き継いでいるデジタル革命、グリーン革命を推進するような政策を打ち出していかないと、岸田政権は短命に終わりかねません。ましてや、ここで増税論が出てくるようでは、来年の参議院選挙で大敗することになるでしょう。

 特に、要となるはずだった甘利明氏の幹事長辞任は痛手です。そして財務省出身で増税派の宮沢洋一・自民党税制調査会長では、株価は上がりません。

 また、日本の株価が上がらない理由として、日本企業全体に生産性が低いという大きな課題があります。

 この状況を改善するには、DX化しかありません。これは政・官・民一体となって、デジタル産業革命を進める必要があります。

 11月19日発表の経済政策が物足りなかったとしても、今後、参院選に向けて次々と政策を打っていく必要がありますから、その政策の波に乗って支持率も上がり、株価もジワジワと上がっていくというのが楽観的な見通しですが。

地政学リスクをどう捉えるか?
 一方、国際情勢を見ると、2つの要因が日本にプラスになる可能性があります。

 1つは米中対立です。この新しい冷戦構造の中で、米国にとっても中国にとっても、改めて日本は重要な国になってくる。ですからかつての米ソ冷戦時のように、日本は「漁夫の利」を得ます。

 米国の同盟国としてのメリットを享受しつつ、中国に対しては米国との対話を支援するといった姿勢でいけば、米国だけでなく中国との関係も悪くないものになるのではないでしょうか。

 台湾海峡問題や尖閣諸島問題もあり、中国はこの件で強烈に威嚇してくるとは思いますが、実力行使はないと見ています。

 もし、中国が実力行使に出たら、それを機会に米国は、民主主義国家にとっての脅威だということで中国を徹底的に叩くことになりますし、そのことを中国はよくわかっているはずです。

 ですから、地政学リスクについては、それほど心配する必要はないのではないかと見ています。そして日本は米中冷戦の恩恵を被って、経済にとってプラス材料が出てきます。それを受けて、日本の株価は2022年以降、ジワジワ上がっていくと見ています。

 もう1つの海外要因は米国、欧州で大きな課題となっている「難民問題」です。今、欧州ではポーランドに難民が集結していますが、これはいずれ欧州全体の問題となっていきます。いわば独裁国家の戦略でもあるからです。武器で攻撃するよりも難民で攻撃した方が簡単だというわけです。

 難民の増加は社会不安につながりますし、社会保障やセキュリティなど、対策には巨額の費用が必要になり、国力の低下にもつながります。

 米国の国境にも、中南米からの難民が押し寄せていますが、この流れは一層強まるだろうと見ています。

 今の世界の情勢は、以前から指摘しているように米国発の大規模金融緩和による「マネーバブル」が起きており、資産インフレが拡大しています。

 その結果、持てる者、持たざる者の格差は一層広がっています。一方に資産30兆円というテスラ創業者のイーロン・マスクのような人間がいますが、世界人口の7割は銀行口座を持っていないと言われます。

 では、難民が押し寄せない国はどこか。それが日本です。難民問題のない日本は、欧米先進国よりも社会が安定していますから、改めて評価が高まるだろうと思います。

 ですから、世界の投資家の中には日本に投資をしたり、住みたいという人も多くなるのではないでしょうか。観光ではなく、自らの資産を日本に置こうという動きも強まるものと見ます。

 1979年の米社会学者・エズラ・ヴォーゲルの著書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』とは違う角度で、日本の文化、社会の質(クオリティ)の高さが再び見直されることになります。そうした新しい「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代がやってきます。

岸田政権の政策が株式市場の一番のリスクに
 今、日本の株式市場にとって一番のリスクは、岸田首相が選挙前に一度「当面触れない」とした「金融所得課税」の強化が再び議論の俎上に上ってきつつあることです。仮に実行したとしたら株価、支持率の急落につながることは間違いありません。「岸田辞めろ! 」の怒声が飛び交うことになるでしょう。政権が短命に終わる要因になりかねません。

 内閣支持率と日経平均株価はほぼ連動していますから、株価が上昇する内閣でなければ持たないと思います。

 金融所得課税の強化をするようであれば、先行きは暗いと言わざるを得ません。その意味でも、経済やDXにも通じている甘利氏の幹事長辞任は、岸田政権のウィークポイントになる可能性があります。

【おすすめ記事】住友生命社長の新発想「生命保険を日常で楽しみながら使える商品に」

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください