日本製鉄が値上げなど構造改革で、事業利益が前期比7倍増へ
財界オンライン / 2021年12月15日 7時0分
「値上げもあるが、要因はそれだけではない」と話すのは、日本製鉄の関係者。
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日本製鉄(橋本英二社長)は2022年3月期の事業利益(営業利益に受取利息や配当金などの金融収益を加えた数値。本業の儲けを表す)の見通しについて、前期比7倍強の8000億円に上方修正した。
社長の橋本氏は就任以来、「売る力」、つまり「マージン」の確保を重要課題としてきた。自社のコスト削減努力は続けるものの、「ひも付き」と呼ばれる大口ユーザーとの関係では、コスト削減努力を超えた部分について値上げ交渉を進めた。
常に厳しい立場に置かれてきた自動車メーカーとの価格交渉では、特に最大手のトヨタ自動車に対して供給制限も迫りながら合意まで持っていったとされる。
近年、日本製鉄は様々な手を打ってきた。コロナ禍で鉄鋼需要が急減すると一部の高炉でバンキング(一時休止)を実施、21年9月末で呉製鉄所(広島県)の高炉を休止するなど製鉄所の再編も行った。その結果、固定費、損益分岐点が下がっている。
足元の需要好調を受け、日本製鉄だけでなく他メーカーも業績が改善したが、日本全体の粗鋼生産量は19年度に10年ぶりに1億トンを割り、20年度も約8300万トンと低水準が続く。
日本製鉄の今期の業績が見通し通りならば過去最高益だが、直近の最高益は14年度。当時よりも環境が悪化し、構造改革の〝痛み〟の中で出してきた利益だけに内容が違うと言っていい。
事業利益見通し8000億円のうち、約2000億円が在庫評価益。残りの6000億円を常に出していける体質づくりが今後の命題。
ただ、世界最大の生産国・中国では沿岸部に製鉄所が相次いで新設。今後、アジア市場に製品が供給される可能性が高い。さらに鉄鋼は各国が自国産化の動きを強めており、日本メーカーの輸出がこれまで通りにいくかは不透明。先行きを楽観視できない最高益となりそうだ。
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