経済安全保障担当大臣に聞く! 経済安全保障政策をどう構築するか?
財界オンライン / 2021年12月24日 11時30分
次世代の半導体産業を見据えて
─ 戦略物資である半導体の戦略の方向性とは。
小林 半導体が日常生活にとって必要不可欠であることは、今では多くの国民の皆様が肌で感じていると思います。私の地元でも、リフォーム業者の方から、お風呂の給湯器が足りない。リフォーム会社にFAX機が足りないといった話を聞きます。自動車販売業者の方からは、注文を受けても納車まで3カ月かかるといった話も聞いています。
更に、今後、社会のデジタル化が進み、半導体の安定供給は死活的に重要になります。だからこそ、他の主要国が半導体戦略を国家戦略に掲げ、国の総力を挙げて製造工場を作ったり、人材を自国内に囲い込もうとする動きが出てきているわけです。
その中で日本はどうすべきか。かつて日本の独壇場だった半導体産業ですが、今の立ち位置は極めて心細いものです。そのまま諦めるのか、もう一回勝負をかけるのか。私は後者だと思っています。
─ 半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)が日本国内に新工場を建設します。
小林 はい。私はこれを歓迎しますし、これが第一歩になると思っています。そしてやはりその先を考えなければなりません。日本に建設されるTSMCの工場で製造が予定されているのは、現時点では20ナノメートル台(ナノは10億分の1メートル)の製品ですが、世界の最先端の製品は3~5ナノメートル台の世界に既に入っていて、その先の次世代の半導体の開発が始まっているのです。
この次世代半導体についても日本がどう取り組んでいくのか。日本だけでできなければ、どういうパートナーと組むのか。こういった話も同時に進めなければいけません。さらにその先には例えば光電融合をはじめ、いろいろな技術が出てくるので、そこでどう勝負していくのか。目先のことだけではなく、少なくとも今後10年くらいのスパンを見据えた上で、どういう産業にしていくのか。これを考えることが重要です。
─ その場合、国家はどんな役割を担いますか?
小林 例えば、10年先の姿を作り、そこを目指していく際、国としてどれだけ投資していくのか。民間とどう役割分担していくのか。そこが非常に重要な視点だと思っています。政府だけが旗を振っても、民間企業が本気にならなければ意味がありません。
【経済産業省】半導体産業の育成に向け、3段階の強化計画を提示
「ビジネスは原則自由」
─ では、隣国で日本にとっての最大貿易相手である中国とは、どのような付き合い方をしていくべきだと考えますか。
小林 まず、経済安全保障に限らず大きな視点で見ると、建設的かつ安定的な日中関係が、日中両国のみならず、東アジア地域や国際社会にとっての平和と繁栄に寄与します。その上で、中国が世界第2位の経済大国として、大国にふさわしい責任を果たし、国際社会のルールに則って行動することが重要です。
先般、岸田総理が電話で日中首脳会談を行いました。岸田総理からは日中間の様々な課題について提起をし、率直に意見交換をしたと承知しています。また、今後の日中両国にとって共通の課題について、しっかりと協力していこうということで一致したとも聞いています。これが本当に重要な話になります。
経済安全保障の文脈で言えば、私たちは特定の国を念頭に置いているわけではありません。日本の企業にとっても、中国との関係は重要でしょう。ですから、国として中国とのビジネスを控えてくださいということでは決してありません。
ビジネスは原則自由です。グローバル経済となり、オープンイノベーションと叫ばれるようになって、1企業や1国の中で閉じこもっていたら、革新的なイノベーションは起きません。
─ 国境を越えて、いろいろなプレイヤーと協調していくことも重要であると。
小林 はい。それが大前提です。ただし、海外の企業とビジネスをする中で、時に日本の法律を含めたルールや慣習と外国のそれとでは違いがあります。ですから、企業自らが事前にその国の法律やルールに対する万全の準備をした上でビジネスを行っていただきたいと思います。もちろん、これは中国に限ったことではありません。
中国の例で言うと、サイバーセキュリティ法などの中で、中国に拠点を置く企業は重要なデータを中国の国外に自由に持ち出すことはできないと規定されています。日本とはルールが違うわけです。こういったものをしっかり把握し、理解しておく必要があります。
─ グローバル時代でも国という存在があるわけですね。
小林 ええ。企業によっては「経済安全保障室」といった部署を設置する動きが出てきていますが、まずは企業自身が自分たちの責任の中で対策を講じていく必要があります。
そして、国もそういった個々の企業や産業界全般の動きに対応し、協力をしていく必要があると思っています。
「時代が求めるように会社の形を変えていく」御手洗冨士夫・キヤノン会長兼社長CEO
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