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【株価はどう動く?菅下清廣氏に聞く】岸田政権の政策と国際情勢不安が株価の重荷に

財界オンライン / 2022年1月8日 11時30分

安倍政権と比較して岸田ビジョンは政策に具体性を欠く
 政治情勢を見ると、日本は岸田政権が誕生後、政策の具体性を欠いています。例えば安倍政権の時には経済政策として「アベノミクス」が打ち出され、市場に好感されました。中身は「3本の矢」として第1に異次元の金融緩和、第2に機動的な財政出動、第3に成長戦略・構
造改革というものでした。

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 アベノミクスは道半ばでしたが、日本の景気をよくする、雇用を拡大すると受け止められ、株高を実現しました。

 また、菅政権もアベノミクスほどではありませんでしたが、デジタル革命とグリーン革命という国策を前面に打ち出した点は評価されます。

 これらに比べると、岸田政権の政策は極めて具体性に欠けます。「成長と分配」というのはこれまでも言われてきたことですし、財政出動の規模は大きいですが、成長戦略、構造改革にどれくらい投資するかといった中身がよくわかりません。これは株価が上がらない一因になっています。

 そして今までのところ、岸田首相自身に経済政策に関する確たる信念がないように見受けられます。一方で安倍元首相は野党時代に様々な勉強会を通して、デフレ脱却に対する自らの考え方を固めてきました。これがアベノミクスにつながったわけです。

 菅前首相は短い任期の間に、デジタル化推進に向けてデジタル庁という新組織を発足させました。しかし、岸田首相からデジタル庁に関するメッセージはほとんど聞かれません。

 唯一、賃上げをした企業に対する減税を打ち出しているのが具体的政策と言えます。しかし、その一方で「金融所得課税」の強化を検討するとしており、株式市場の失望を招いています。問題なのは、岸田首相の周辺に経済・金融に関する側近、アドバイザーがいないことで
す。これでは株式市場が好感するような政策は打てません。

 この連載で何度か指摘していますが、本来ならば司令塔となるはずだった、前幹事長の甘利明氏の中枢からの離脱は痛手となっています。

 現幹事長の茂木敏充氏は有能な方だと思いますが、甘利氏のようにDX革命や経済安全保障の推進に関する強い信念は持っていないのではないかと思われますし、現時点までにそうした発言もしていません。DX革命や経済安全保障に関する明確な発信がないことは、株価が上がらない要因となっています。

 また前回、米中対立は日本にとってプラスになると指摘しましたが、これは長期的な見方です。短期的に米中対立は国際情勢不安を招き、日本、世界の株価にとってマイナス材料です。

 それ以外にも今、国際情勢が不安定化してきています。1つは北京五輪の行方が不透明になっていることです。すでに欧米からは「外交ボイコット」が相次いでおり、中国にとってはプレッシャーになっています。

 今後もし、「少数民族の弾圧など人権問題のある国では競技をしたくない」と、欧米諸国の選手がボイコットし始めたら、場合によっては開催すら危ぶまれる事態になります。

 すでに、中国の有名女子テニスプレーヤーが行方不明になった事態を受けて女子テニス協会(WTA)は中国での全ての大会の中止を決めています。

 もう一つの懸念材料は、ウクライナ情勢です。ロシアの侵攻の懸念が出てきているのです。ロシアは今、ウクライナ国境に兵力を増強しています。当然、米国は情報を掴んでバイデン大統領に報告しており、12月7日のビデオ会談ではバイデン大統領がロシアのプーチン大統領に「侵攻すれば強力な対抗措置を取る」と警告しています。

 もし、ロシアがウクライナに侵攻すれば、さらに国際情勢が不安定化することになりますし、ロシアと中国が結託して欧米諸国と対立する「新冷戦」が始まる恐れがあります。当然、株の売り材料です。

「波高きは天底の兆しあり」
 様々な不安材料が浮上していることから、米国は景気がよく、企業業績などの指標がいいにもかかわらず、株価は波乱の展開になっています。

 このように株価が高値圏で大きく上下する展開を「波高き相場」といいます。テクニカル分析の手法である「酒田五法」には「波高きは天底の兆しあり」という格言があります。

 このまま、米国株の波乱が続くと、当面の天井を付ける可能性があります。ニューヨーク株は短期的には20年3月のコロナショック以降、ほぼ一本調子で上昇、長期的には09年3月9日の7000ドル割れから長期上昇トレンドが続いており、どこかで大きく下落してもおかしくありません。

 いずれにせよ国際情勢不安やFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策次第です。年始は国際情勢、岸田政権の政策に要注意です。

 例えば前述のロシアのウクライナ侵攻はリスク要因です。ウクライナへの侵略は民主主義への侵略と同義と言ってもいいでしょう。つまり、ここで起きた争いには民主主義が生き残ることができるかが懸かるということです。なので、バイデン米大統領は直近、民主主義サミットをオンラインで開催し、結束を固めようとしています。

 以上のように、内外情勢が一段と不透明になっていますので、投資家の方々は、できるだけ現金比率を高め、年末年始は天下の情勢を見極めるところです。

 私は21年の年初から、20年のコロナショックから始まった世界の中央銀行の金融緩和と政府の景気対策で「コロナバブル相場」、「マネーバブル相場」が21年は本格化するだろうと指摘してきました。その象徴はテスラの株価とビットコインでした。

 足元ではどちらも頭打ち、または下落となっています。これは国際情勢不安を含めた不安材料を、先に織り込んでいるのかもしれません。その先にやってくるのはニューヨークダウの暴落です。それがいつかはわかりませんが、年末年始の波高き相場には、警戒が必要です。

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