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どうなる、エネルギー安全保障? 日本エネルギー経済研究所理事長を直撃!

財界オンライン / 2022年1月28日 18時0分

寺澤 達也・日本エネルギー経済研究所理事長

原子力とどう向き合うのか

 ―― 世界的に脱炭素化の流れが加速し、日本も2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル実現に向けて動き出しました。寺澤さんは日本のエネルギー政策をどのように見ていますか。

 寺澤 やはり、世界も、日本もカーボンニュートラルの実現に向けて取り組むのは当然の流れだと思います。この際に重要なのが、『S(安全性)+3E(エネルギーセキュリティ、経済効率性、環境適合)』という従来のエネルギー政策の基軸をしっかりと確保するということです。

 ただ、昨今の議論で懸念されるのは、3Eの中でも環境に焦点が当たって、エネルギーセキュリティや経済効率性に十分に焦点が当たっていないことを非常に危惧しております。

 特に再生可能エネルギーを増やすにあたっては、気象条件などによって出力の変動が大きくなるわけですから、実際には出力制御や蓄電システムの設置、グリッド(電力網)の増強などに係る追加的な費用がかかってきます。

 ―― なるほど。具体的なコストの見通しはわかりますか。

 寺澤 われわれ日本エネルギー経済研究所が試算したところ、発電と電力貯蔵、地域間送電に係る固定費・変動費などを電力需要で除した「電力平均費用」は、再エネ比率19%の現在で1キロワット時あたり13円かかっています。それが再エネを50%まで上げると19円に、それを100%にもっていこうとすると27円となり、現在の倍以上になるのです。

 そうした中、重要になってくるのは既存の原子力発電所をいかに活用するかということです。今は日本に36基(建設中を含む)の原発があって、再稼働しているのは10基に留まっているわけですが、今後はCO2(二酸化炭素)対策という意味でも、コスト抑制という意味でも、原発の存在は非常に重要です。

 その上で、わたしは40年以上が経った原発も安全対策を徹底すれば60年まで延長することも必要だと思いますし、さらに長い時間軸で考えたら、新増設も重要になってくると思います。

 ―― 原発に関しては、国民の不信感も根強くあるわけですが、この辺の理解は進むのでしょうか。

 寺澤 ここは本当に難しいところですが、丁寧に説明をして、安全性を確保しながら、国民の理解を得ていくしかないと思います。

 実は、フランスではわたしがお話ししたような文脈から、マクロン大統領が昨年11月になって国内の原発建設を再開すると発表しました。これまでは新増設はしないと言っていたのですから、大きな政策転換です。

 特に注目されているのがSMRという小型モジュール炉です。フランスや米国、カナダなどがSMRの開発に注目していまして、新しい技術を生かしながら、カーボンニュートラルの実現に取り組んでいこうと。

 脱炭素の観点から原子力が世界的に見直されていまして、日本としても同じように、コストを抑えながらエネルギーセキュリティを高めるという意味で、原子力について正面から向き合う必要があると思います。

日産と住友商事が自治体の「脱炭素化」支援事業で協業

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