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東大の『知』をどう生かす? 藤井 輝夫・東京大学総長に聞く!

財界オンライン / 2022年1月31日 18時0分

対話を通じて課題解決に取り組む
 ―― コロナ禍で人の生き方や働き方が大きく変わりました。世の中の変化が激しい時代にあって、これからの大学の役割をどのように考えていますか。

 藤井 昨年4月に総長に就任して以来、今後の数十年を見据えて、東京大学がどのように進むべきかという基本方針を半年かけて作成してきました。それが9月末に発表した『UTokyo Compass』で、「多様性の海へ:対話が創造する未来」というタイトルをつけました。

 多様性を大事にすることと、学内外の皆さんとの「対話」を重視して、信頼関係をしっかりと構築し、大学が社会の中で求められている役割を果たすための具体的な目的と行動計画を示しています。

 行動計画の策定にあたっては、『知をきわめる』、『人をはぐくむ』、『場をつくる』という3つの視点(Perspective)を大切にしています。今まで教育、研究、社会貢献のような切り口で語られることが多かったと思いますが、「知・人・場」という多元的な視点から、目標を定め行動の計画を立て、これら3つの視点の好循環を生み出すことによって、優れた多様な人材を輩出し、人類が直面する様々な地球規模の課題解決に取り組もうとしているのです。

 ―― 社会とのつながりをもっと深めようということでの対話ですね。

 藤井 はい。この構想をまとめるにあたって前提となったのは、現代社会において、経済的発展や物質的発展を追い求めてきた従来の資本主義の限界が際立ってきているという考えです。

 気候変動や食料危機、エネルギー問題、そして新型コロナウイルス感染症(COVID―19)のような様々な地球規模の問題が生じてきています。これらの課題解決にあたっては、文理の垣根を超え、大学が有するあらゆる分野の知を集結して取り組む必要があります。

 大学は本来、対話を通じて「学知」を生み出す場です。より創造的な対話を生み出すためには、大学が学内にとどまらず、様々な組織と組織、地域と地域、あるいは人と人をつないでいくことが重要な役割になってくると考えています。その中で知が共有されれば、社会全体の困難を乗り越えることにつながるだろうと考えています。
 
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世界の誰もが来たくなる大学に

 

 ―― では、大学が組織や人とつながっていくために必要なことは何なのか。

 藤井 多様性をしっかりと受け入れることが大事です。多様な人間が集まり、対話をおこなうことで、学問のレベルにおいてもより高いものが得られます。社会課題を解決する方策を考える際も、より多様な視点で議論したほうが、共感性の高いソリューションが得られるだろうと思います。

 同質的な集団だけで議論していても、なかなか良い解決策は見つかりません。その意味でも、多様性は重要です。

 そこで、「世界の誰もが来たくなる大学」を目指すと宣言しています。大学という場を、学内外問わずより多様な人々が集う場にしたいのです。各々が伸び伸びと活動していく場として大学に集い、そこで自分たちのやりたいことを実現していく。そういった場にしたいと考えています。

 ―― 最近は経済安全保障という言葉が出てきたり、自国第一主義を掲げる国が出てきたりして、分断が進んでいるという声もありますが、逆に言えば、そういう時代だからこそ、大学の「つなぐ」という役割が重要になってきますね。

 藤井 それはあると思います。大学をはじめとするアカデミアには、それぞれの国の様々な事情を越えて、世界的な結びつきがあります。分断が進んだ時代だからこそ、アカデミアのネットワークは重要な存在になるのかもしれません。

 カーボンニュートラルの問題にしても、コロナの問題にしても、それぞれの国々でアプローチの方法は違うわけです。大学は先進国にも途上国にもあり、学知を世界共通にきちんと共有できる存在です。

 アカデミアの結びつきを生かし、知を共有して、人類が直面する共通の課題に真摯に向き合い、対話を重ねることで、相互の理解と信頼を築いていく。この対話と信頼の相互連環こそが、新たな未来を拓くと信じています。

 大学の果たす役割は今後もっと大きなものになっていくと考えています。

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