驚きの最高益更新で『商社首位』! 三井物産会長を直撃
財界オンライン / 2022年2月10日 18時0分
2022年3月期の最終利益は8400億円と、過去最高益を大幅に更新する見通しの三井物産。経営改革を断行し、現在の同社の基礎を作りあげたのが前社長で会長の安永竜夫氏。社長在任時の総括、そして、今後の役割とは――。
現地に自分たちの社員がいることの強み
―― 昨年から会長となった安永さんですが、2015年の社長就任から7年弱の経営者生活を総括してくれませんか。
安永 わたしは、この会社の収益基盤をもっと強くしたいという「想い」から、世界各国で働く社員を鼓舞し、われわれにはもっとできることがあると言い続けてきました。
これまで当社は投下した資本のリターンに対するコミットメント(約束)が弱いのが課題でした。投資して、それで満足していては駄目です。まずは既存の仕事がきちんと収益が上がる形にするために、徹底的に既存事業の見直しをやりました。成長できる事業には追加投資を行い、一方でできないと見切りをつけたものは、先延ばしをせず、撤退を決めました。
その結果、わたしの社長在任6年間で約7千億円の減損や撤退損を出しました。課題案件はほぼ解決し、鉄鉱石や原油・ガスの市況に関係なく、安定して毎年5千億円くらいの基礎収益力を有する体制になりました。
GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)、ヘルスケア、マーケットアジアに経営資源を大きく投じ、今後、大きく飛躍するための土台を整えたという自負はあります。
―― やるべき改革はやってきたということですね。
安永 ええ。もちろん、最後にパンデミックが起こって、この影響で需要が驚くほど変わってしまった案件や、まだ集中治療室に入っている事業はあります。しかし、それも想定内でコントロール可能な状況ですから、それほど気にはしていません。
アナリストからは、次から次に減損を出しますねと言われました。しかし、わたしは意味ある減損もあると思います。われわれは攻めの会社なので、攻めていれば当然、環境の変化、あるいは投資する時に思っていなかったことが起こって、実質的に価値が棄損して、減損につながることもあるでしょう。この一定額はしょうがないと思っています。
しかし、それは攻めの経営の裏返しであり、逆に言えば、全く減損がないということは、攻めの姿勢が足りなかったのではないかと。そういう意味では、投資規律を高めることを言いすぎたと感じており、会長になった途端に、急に優しく背中を押してあげられるようにもなりました(笑)。
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多様性に対して受容性の高い日本人を育てる
―― これからはウィズコロナ・アフターコロナを見据えて、感染症対策と経済成長を両立させていかなければなりません。アフターコロナにおいて大事なことは何だと考えますか。
安永 日本は失われた30年と言われますが、これまで日本人はあまりにも島国の中で同質性を重んじ、出る杭を打ってきたところがあります。多様性に対して、ダイバーシティ・アンド・インクルージョン(個々の違いを受け入れ、認め合い、生かしていくこと)と言いながら、それをやろうとしてこなかったのではないかと思います。
特に、商社は世界中で事業を行っていますので、徹底的に多様性のある会社でなければならないと思っています。ですが、以前、社外取締役の内山田竹志さん(トヨタ自動車会長)から「思った以上に外国人も女性も少ないね」と言われたことがありますが、確かにその通りだったのです。
―― 本社にいる外国人はどれくらいの割合ですか。
安永 本社で働いている4400人のうち、外国籍の社員は100人もいません。
連結では世界で約4万5千人の社員がおり、海外に在籍する社員は6割超になる中で、本社の外国籍社員は少な過ぎると思います。多様な人材が刺激を受け合いながら、能力を最大限に発揮できる環境を整備しなくてはなりません。
ただ、海外の事業の現場を見てください。それは間違いなくハイブリッドです。現地の人を最大限生かしつつ、日本から入った人間がチームをつくって、まさにインターナショナルチームとして経営をやっています。
海外に行けば、それが当たり前ですし、現地では性別も年齢も宗教も国籍も関係なく一緒に仕事をしています。それをどうやって東京に持ち込むか。
要するに、日本人でない人が常に組織の中にいるという状況をつくっていかなければならない。そこが今後の当社の課題であり、そのような多様性に対して、受容性の高い日本人を育てることが、われわれの役割だと思います。
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