「脱炭素」に向けた移行期、日本製鉄がタイに電炉拠点を構築する理由
財界オンライン / 2022年2月18日 18時0分
「コモディティ(汎用品)は現地化していく流れにある。いかにインサイダー化して、需要を的確に捉えていくかが課題だった」と話すのは日本製鉄副社長の森高弘氏。1月21日、日本製鉄(橋本英二社長)はタイの電炉大手・Gスチール、GJスチール2社の買収を発表した。
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日鉄は海外で需要が見込める地域で、上工程から下工程まで一貫体制づくりを目指してきた。しかも、新規立ち上げではなく、立ち上げリスクの少ない現地企業の買収で実現する戦略。
今回は、その戦略に合う案件が、日鉄の主要市場であるASEAN(東南アジア諸国連合)、しかも下工程に経営資源を投入してきたタイで出てきた。買収金額は株式・負債合計で約880億円。
日鉄にとって国内市場が頭打ちとなる中、成長には海外展開が不可欠。だが、新興国では鉄鋼の「自国産化」の流れが進む。これまでは日本から母材を輸出し、現地で加工するという形で対応してきたが、今後は「インサイダー」、つまり現地企業化することが求められる。19年にはインドでアルセロール・ミタルと製鉄会社を共同買収、そして今回はASEAN市場でインサイダーとなる。日鉄がASEANで一貫製鉄所を持つのは初だ。
もう一つ、大きな課題は脱炭素。最終的には水素還元製鉄の実現が求められているが、高炉と比較してCO2排出が4分の1程度に抑えられる電炉は「移行期」において貢献することが見込まれている。
将来、このタイの2社を、電炉での高級鋼製造の拠点とする可能性も探っていく。
国内では主要顧客であるトヨタ自動車を提訴してまでも、自社の技術を守る姿勢を鮮明にし、鋼材価格交渉で製品値上げも勝ち取った。22年3月期の業績は最高益を見込む。ただ、中国勢の新規製鉄所の立ち上げも控え、鋼材市場の先行きが不透明な中、自らの体質強化を急ぐ。
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