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日本が試される「インフレ」対応【人気エコノミストの提言】

財界オンライン / 2022年2月19日 11時30分

世界でインフレが止まらない。米国では消費者物価指数(CPI、12月分)が前年同月比7.0%上昇と39年ぶり伸び率を記録している。

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 わが日本でも企業物価指数が80年以来の高水準を記録している。しかしCPIは、前年同月比1%以下と諸外国に比べればまだまだ低い。

 主要国ではインフレ圧力が高く、賃金上昇圧力が高まるとの見方が多いが、日本ではどうもその流れは見えてこない。

 岸田首相は、「近年、賃上げ率の低下傾向が続いていますが、このトレンドを一気に反転させ、新しい資本主義の時代にふさわしい賃上げが実現することを期待します」と施政方針演説で述べたが、春闘は厳しいものになるとの見方が多い。賃上げができないと、世界的に起こっているインフレに対応できないと判断されかねない。

 日本はデフレの期間が長く賃金も20年間で約0.4%しか伸びていない。人生の大きな買い物である、住宅や自動車の価格は上がっている。例えば、この10年でマンションは約65%、中古自動車は約62%上昇した。賃金の人生総額がそれほど上がらないのであれば、高い買い物以外はできるだけ節約する。それが多くの財の値段が上がらない構造を生み出した。

 いまだに預貯金で金融資産をため込み、金利収入もまだまだ望めない中で、普通の財が値上がりし始めたら、家計の起こす行動は大きく分けて2つだろう。

 1つは、財・サービスの購入頻度を落とす。もう1つは、人生の大きな買い物をあきらめる。しかし、住むところは買うにしろ借りるにしろ手に入れなければならない。それならば自動車などの大きな耐久財はやめるという決断になる。両方とも家計としては合理的だが、日本経済にとっては景気に急ブレーキをかけかねない。賃金が上がらない日本は、例えインフレ率が主要国よりも低くともインフレ対応力がないとみられて当然である。
 
 22年後半にかけてインフレ率は世界で落ち着くというのがコンセンサスになっている。原油などエネルギー価格の上昇が一服し、価格高止まりから金融政策が引き締めに動き出せば、需要も落ち着くということだろう。ただ、気がかりなのは労働者の価値観変化や環境問題など構造的な要因が物価を押し上げていることだ。

 エッセンシャルワーカーの処遇見直しや、石油などの従来のエネルギー施設の更新と新しい脱炭素領域の二重投資が必要なことなど、コスト高が起こり始めている。

 この要因が強く出れば、FRBを含めて各国中銀のタカ姿勢はより鮮明になり、金融市場の激変も予想される。

 2022年の世界経済・日本経済は21年よりも、とにかくリスク要因が多い。その中でインフレが落ち着くかどうかはかなり重要になりそうだ。日本は対応できるのだろうか。

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