「民主主義の危機」に日本はどう動くか?【私の雑記帳】
財界オンライン / 2022年2月7日 10時43分
民主主義崩壊の危機
民主主義の危機─。人類普遍の価値観と思われたものが今、随所で崩壊しようとしている。
ロシアが隣国・ウクライナとの国境沿いに約12万人の兵を配置し、侵攻の構えを崩さずにいる。
ロシアは2014年にウクライナ南部要衝の地、クリミア半島に侵攻し、自国領に組み込んだ。それから10年と経たない内に、次はウクライナ東部沿いに自国軍を貼り付け、いつでも踏み込める体制を敷く。
1989年、『ベルリンの壁』崩壊で社会主義体制が崩れ、91年に旧ソ連邦も崩れ去り、後継国家として、ロシアが誕生した。
欧州域の安全保障の観点から、西側はNATO(北大西洋条約機構)を築くが、東西対立が頂点に達していた1989年以前はドイツ、フランスなどを中心に、加盟国は12か国であった。
それが『ベルリンの壁』崩壊以来、旧東欧圏の国々も加わり、今や30か国にまで膨れ上がった。
これに業を煮やしたのがロシアの現大統領プーチン氏である。
かつての自分の勢力圏に属したウクライナ、ジョージア、ボスニア(旧ユーゴスラビアの構成国の1つ)をはじめ、北欧のフィンランドやノルウェーなども加わって、NATO加盟の準備を進めるものだから、プーチン大統領も心穏やかではないようだ。
今年1月初めに行われた米ロ首脳会談で、プーチン大統領は「1997年の線まで戻せ」と主張。
プーチンの要求
「1997年というのは東欧諸国がNATOに加わり始めた頃。ロシアは、全部戻せというわけです。それぞれの国が自分で判断したわけですからね」
元防衛大臣の森本敏さんは、「それ位、冷戦終焉後に西側が東ヨーロッパを自分たちの陣営に組み入れたことへの恨みがある。その恨みがものすごく強いです」と分析。
ウクライナとの国境沿いに自国軍を配備しているのも、そうした気持ち、恨みから派生しているものかもしれない。
だからといって、他国へ武力介入し、侵犯することは許されない。
しかし、現実に侵犯は起きている。2014年には中国が南シナ海に人工島をつくり、南シナ海全体の支配権を握ろうとしている。
北朝鮮はミサイルの試射を何度も行い、自分たちの力を誇示。
日本を取り巻くのはロシア、朝鮮半島の北朝鮮と韓国、そして中国。韓国とは民主主義などで価値観を共有するが、その韓国とも歴史問題では認識面でズレがある。
日本はどう動くべきか?
民主主義の危機に際して
2001年のニューヨーク同時多発テロ、シリア内戦、イスラム原理主義の『イスラム国』の台頭。アジアでもミャンマー、アフガニスタンと不穏な情勢が続く。
あちこちで内戦が起き、国境紛争が続く。
21世紀入りして20年余が過ぎた今、世界はどうなっているのかというと、民主主義国と非民主主義国との関係は2019年に逆転し、「いま民主主義国は87カ国なのに対し、非民主主義国は92カ国。われわれは民主主義が多いと思っているけれども、どんどん民主主義ではない国のほうが多くなっている」と森本さんは語る。
諸問題を解決するはずの国連も無力化。SDGs(持続可能な開発目標)の中では人権も重要な目標で、国連人権理事会は先に、中国の新疆ウイグル問題を批判する決議を図ろうとしたが、否決されてしまった。
『賛成』の米国、日本などの数より、中国サイドに立った国々のほうが多かったという現実。
日本の使命と役割
民主主義とは何か─という重い命題である。
米国内も人種差別の気風は残っているし、格差もある。移民に対する扱いも酷いものがあり、何よりトランプ前大統領支持派による議会乱入事件を見ても、米国も「人権問題の優等生」とは言えない。
欧州のフランス、イギリスでも移民問題はくすぶる。
新しい基軸として、森本さんは『QUAD』(クアッド、日米印豪4か国の連合)に注目する。
インドはかつてネルー元首相が非同盟外交を進め、旧ソ連、今のロシアとも独自の関係を結んだ。中国とはカシミール地方で国境争いが続くが、インドは自由、民主主義といった価値観を欧米、日本とも共有している。
日本はインドとは親密な関係。そうした国々と共に、民主主義の価値観外交を進める上で、「日本の役割は大きい。その役割を果たすべきです」と語る森本さんだ。
宇野康秀さんの挑戦者魂
『必要とされる存在』とは何か?
企業の世界でも、この事が根底から問われようとしている。
動画配信、音楽配信を主軸に医療機関向けの自動精算システムを開発したり、外国人労働者を受け入れる企業向け業務クラウドサービスを手がけるUSEN―NEXT HOLDINGS。社長の宇野康秀さん(1963年=昭和38年生まれ)は、社会に必要とされる存在であり続けるために、「変化を恐れてはいけない」という言葉をグループ社員に投げかける。
1989年、25歳のとき、人材ビジネスのインテリジェンス(現パーソルキャリア)を設立。
35歳になった1998年、父親が急逝。父の仕事を受け継いで、大阪有線放送(現USEN)の代表取締役に就任した。
この間も、動画配信サービス事業を掘り起こそうと、無料動画配信サービス「Gyao!」を開始。
「レンタルビデオ店に出かけなくても、いずれ家で映画やアニメが見られる時代が来る」と予測し、映像配信サービスを始めた。しかし、時代の予測が早すぎたのか、U―NEXTの船出には苦労がつきまとった。
この頃、業績が低迷し、2010年、USEN社長を辞任。U―NEXT社長に専念する。
そして2017年、U―NEXTとUSENの経営統合を果たしたという経緯。コロナ危機下で、同社は増収増益を続け、2022年8月期も増収増益の見込み。
いろいろな試練を経て、今日の「USEN―NEXT」をつくり上げたということである。
『人間万事塞翁が馬』
『人間万事塞翁が馬』─。宇野さんの座右の銘である。
現在58歳の宇野さんは、ほぼ10年おきに試練を迎えた。起業家としての自分がありながら、父親の手がけた事業を引き継がざるをなくなり、新旧の事業を同時に手がける中で、いろいろな試練や挫折を味わった。
「悔しい思いもしました」と宇野さん。その悔しさを事業家としてのバネにしていく気力、パッション(情熱)を宇野さん自身が持っていたということであろう。
静かな口調、落ち着いた物腰の中にも、前向きに生き、フロンティア精神をのぞかせる宇野さんだ。
試練が人を鍛える。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
なぜプーチンは長期政権を維持できるのか...意外にも、ロシア国内で人気が落ちない「3つの理由」
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月15日 13時57分
-
トランプがウクライナ支援を減らすならイギリスが軍隊を送る必要がある── ジョンソン英元首相
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月14日 16時41分
-
トランプ再選で「ドイツ経済悪化」3つのリスク 1期目より2期目のほうがリスクが大きい理由
東洋経済オンライン / 2024年11月14日 8時40分
-
トランプ次期政権「民主主義の危機」で思い出すオバマ元大統領の演説
RKB毎日放送 / 2024年11月12日 15時8分
-
ウクライナの中立維持が和平条件=プーチン氏
ロイター / 2024年11月8日 8時8分
ランキング
-
1春日部のイトーヨーカドーが閉店=「しんちゃん」のスーパーのモデル
時事通信 / 2024年11月24日 19時58分
-
2「京急」「京成」に照準定めた旧村上ファンドの思惑 2006年の「阪急・阪神合併」の再現を想起
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 7時50分
-
3みずほ「楽天カードに出資」に透ける将来への布石 サービス協業や業務連携だけにとどまらない
東洋経済オンライン / 2024年11月25日 7時30分
-
4トヨタ『ランドクルーザー』リコール…ドライブシャフト不良、走行不可能になる恐れ
レスポンス / 2024年11月24日 18時30分
-
5異例の「ケーブル盗難でリフト運休」 スキーシーズン前に 捜査は継続中
乗りものニュース / 2024年11月24日 14時12分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください