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2022年、日米の株価はどう動くのか?菅下清廣氏に聞く

財界オンライン / 2022年3月1日 7時0分

菅下清廣・スガシタパートナーズ社長

「米国の株価は天井を迎えつつある。日米ともに選挙を控えた7月が相場の転機になる」と菅下氏。米FRBによる金利引き上げが控える中、日米の株価は下落トレンドが続く。今の米国の株価には、下落する3つの条件が重なっていると指摘。特に原油など資源エネルギーが高騰し、半導体不足などでインフレが加速する中でFRBが金利を引き上げ。日米の株価はどう動いていくのか─(2月23日発売号掲載)。

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株価が40年上昇の米国、7年で腰折れした日本
 ─ 米FRB(連邦準備制度理事会)が金利引き上げに動くなど、金融環境が大きく変わりつつあります。その中で長期的視点で日米の株価の動きをどう見ていますか。

 菅下 1982年というのは日米の株価の「底」でした。ここから米国の株価は2022年まで40年、日本の株価は89年まで7年上がりました。そうして日経平均株価は89年12月29日、3万8915円の最高値を付けたのです。

 その後、日経平均は下落を続け、底入れしたのは09年3月10日です。ここが前年に起きたリーマンショックを織り込んだ「大底」となりました。

 相場の波動を見る時に、経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)では予測できません。それは過去の指標だからです。私は波動で未来を予測したいと考えているのです。

 ─ 菅下さんは、独自の手法で相場を予測しようと努めていますね。

 菅下 ええ。例えば相場の天井は「点」で、付けた後、瞬間的に終わり一気に下がります。一方で相場の底は「面」で、底入れするのに時間がかかります。どのくらいの時間がかかるかというと、大きな相場の後にはおおよそ2年半から3年です。

 遡れば、江戸時代中期の米相場、本間宗久という相場名人が出て以来、「大回り3年、小回り3カ月」という相場の格言があります。大回り、つまり天井を付けてから底入れするまでに3年かかり、小回り、つまり小さなサイクルは3カ月で終わるということです。この格言は今に至るまで変わっていません。

 ─ 実際に、相場の動きを表していると?

 菅下 そうです。例えば09年3月10日の底からは、12年11月13日まで足掛け3年で底入れしています。12年11月13日になぜ底入れしたかというと、当時の民主党の野田佳彦首相が、当時野党だった自民党の安倍晋三総裁の質問に答えて、解散総選挙を明言したからです。

 11月13日が株価の底で、翌日11月14日から上昇していきました。相場は総選挙があれば自民党が政権に復帰するであろうことを歓迎して上昇したのです。12月には選挙を経て第2次安倍政権が成立、経済政策「アベノミクス」がスタートしたわけです。

 この「アベノミクス相場」は18年10月に天井を付けました。相場の長期波動から見ると、この時点では安倍首相は首相の座にありましたが、時間軸で「7年」だったという点に着目する必要があります。

米国の株価はまだ「一番天井」?
 ─ 相場を見る上で時間というのが大事な要素なんですね。

 菅下 そうです。注意すべきは2.5年から3年のサイクル、次は7年から10年のサイクル、次が20年のサイクル、最後は超長期波動で40年から60年です。これは景気循環になっており、株価は連動しています。

 先程お話した米国の株価の底が1982年ですから、この超長期波動の40年に当てはまります。この間、ニューヨークダウは約7000ドルから約3万6000ドルと5倍以上になっています。

 ただ、私が重視するのは、おっしゃっていただいたように時間です。米国は40年上げ、日本は途中の7年で天井を打ち、20年下落を続けた後、アベノミクスで上がり始めたのです。

 ─ 「失われた20年」の時期と符号しますね。

 菅下 米国は今、40 年目の天井がやってきており、日本は89年12月の最高値から20年下落して、3年で底入れして、今の相場は12年から始まって、22年でもまだ10年しか上がっていないのです。

 ─ 米国が天井を付けたということは、世界の株価はこれから後は下落するということになりますか。

 菅下 米国はおそらく天井を付けましたが、まだ一番天井です。相場では天井を打つ時には、必ず二番天井を付けます。米国の株価は一番天井の後に下落し、戻りがあるでしょう。そして二番天井を付けた後には、大きく下げる可能性があります。

 二番天井の形には、一番天井と二番天井が同水準、二番天井の方が低い、二番天井の方が高いという3種類があります。ニューヨークダウの二番天井が一番天井である3万6000ドル近辺となるかに注目しています。

 ─ 冒頭に申し上げたように米FRBが金利引き上げに動いています。この影響がどう出ると見ますか。

 菅下 FRBが金融引き締めに動いたのは7%にも及ぶインフレを抑えるためです。一方でコロナ禍で実体経済は傷んでいますから、景気対策は打ち続ける必要があります。ですから、米国の株式市場は下落相場の序盤だと言えます。ここで、これまで安心して米国株を買っていた投資家が青ざめて売っているわけです。

 揉み合った後、再び株価が上昇して3万6000ドルを抜き、例えば3万8000ドル台を付けたりすると、ここで天井となります。この天井は米国発の「ニューハイテク相場」の歴史的な天井となります。

 ─ 足元でまだ、ニューハイテク相場は続いていると。

 菅下 そうです。米国のニューハイテク株の技術革新、企業業績の向上は続いています。実際、決算を見てもフェイスブック(メタ)を除いて好決算を発表しています。

 FRBはインフレを抑えるために金利を上げるとして株価は下落したわけですが、ニューハイテク株の業績がいいので、その銘柄の株価は上昇しています。

 そしてFRBは金融を引き締めていますが、日本銀行、ECB(欧州中央銀行)の金融緩和はまだ続いています。その意味で金融引き締めも、まだ序盤だということです。

2022年の相場は「前半安、後半高」
 ─ 22年の相場全体の動きをどう見通していますか。

 菅下 大まかに「前半安、後半高」だと見ています。なぜ、前半安か。株価が下がる条件は3つあります。第1に中央銀行による金融引き締め及び利上げです。これは日本のバブル崩壊が、当時日銀総裁の三重野康氏による急激な引き締めによるものだったことからもおわかりいただけると思います。

 その意味で、21年11月から株式の取引については「手仕舞い」という投資家が多いんです。私自身も株式や仮想通貨など、保有していた金融商品を売って、現金比率を高め、次のチャンスに備えています。長く続いた米国株の波動は、日本の株式市場に強く影響を及ぼしています。

 短期の波動では20年2月、3月がコロナショックによる底でした。日経平均は2月19日、1万6358円という安値を付けました。ニューヨークダウは3月23日の1万8000ドル台を底に上昇しています。

 ─ 22年には米国株の1つのピークが来ると。

 菅下 ええ。波動から見れば22年の9月から23年の2月くらいまでに株価は天井を打つということが読めます。底値から2年半から3年のサイクルです。日米の株価が今年前半に当面の安値を付けて、早ければ4月以降、遅くとも夏以降に上昇してくる可能性があります。私自身が株取引を一時的に手仕舞ったのは、FRBのテーパリング(量的緩和の縮小)が21年の11月から始まったことが理由です。

 株価が下がる第2の理由は増税と規制強化です。日本で言えば、例えば岸田文雄首相が検討するとした、「金融所得課税」の強化などは、それに当たります。米国でも金融引き締めに加えて、バイデン大統領はトランプ前大統領が下げた法人税を増税しようとしていますし、超富裕層に税金をかけようとしている。

 さらには米国経済を牽引してきたニューハイテク企業「GAFAM」に対して、規制をかけようとしています。

 第3の理由は国際情勢不安です。米国と中国、米国とロシアの対立が今まさに起きています。

 ─ 米国株を巡る情勢は、株価が下がる3つの条件が全て揃っているわけですね。

 菅下 そうです。そして株価が下がる時には直線ではなく、ジグザグに、上げ下げを繰り返しながら下げていきます。私が「波動」と呼んでいる理由もそこにあります。株価が大きく下げても、そこからまた戻る時があるのです。そしてまた下げて、徐々に安値の水準を下げていくのです。

 天井を付けた時から、調整は短くて2、3カ月、少し時間がかかる時には数カ月から半年、さらに時間がかかる時には12~13カ月というのが「日柄」、時間の波動です。

 直近、ニューヨークダウがいつ天井を付けたかというと22年1月5日です。ですから、天井を付けてから、2、3カ月の下落調整なら、前述のように22年の3月末くらいまでに当面の底入れをして4月以降上昇してくる可能性があります。上昇半年ほどの調整で終わるなら夏場、7、8月頃からニューヨークダウは上昇を始めるでしょう。

 ─ 先程の株価が下落する3つの条件が重なっていることを考えると、米国株の状況も難しそうですね。

 菅下 そうですね。その意味で、相場を読む時には時間の波動が非常に重要になります。昔から相場世界では「値頃より日柄」という格言が言われています。目の前の価格の動きよりも、その株がどのくらいの時間、下落しているか、あるいは上昇しているのかという時間軸の方が大事だということです。

 ─ 今後、日米の株価を動かす材料には時間以外にどんなものが考えられますか。

 菅下 日米の株価が転機を迎えるとすると、政治で動く可能性があります。日本は7月に参議院議員選挙、米国は11月に中間選挙を控えています。この政治の動き次第で、株価が反転上昇する可能性があるのです。

 例えば日本で、参院選までに国民受けするような景気対策を打ち出すかもしれません。アベノミクス相場以来、解散総選挙は株高につながっています。

 米国でも11月の選挙に向けては夏頃から景気をよくしておかないと、米民主党が選挙に勝つのは難しくなるでしょう。ですから、日米ともに7月は相場の転機になる可能性があります。

日本は「無形資産」の国への転換を!
 ─ 1982年からの40年間、米国の株価は上げ続け、日本は途中で腰折れしてしまったというのは非常に残念ですね。

 菅下 ただ、日本の株価は20年下げて、その後20年上げる可能性もあります。ですから、米国株が今年か来年に40年のピークを迎えて下落した時、日本の株価も連動して下落すると思いますが米国ほどは下げないかもしれません。なぜなら、株価が上がりきっていないからです。

 この時、日本の株価が上がるならば2024年、25年くらいまでに89年の高値を突破し、4万円を目指す展開もありえます。

 ─ その時に、日本株の上昇を支える銘柄は?

 菅下 日本が絶対に実行しなければならないのは「生産性革命」です。少子高齢化、人口減少が続く中でそれを実現するためには「DX」(デジタルトランスフォーメーション)しかありません。その時に、このDX革命を牽引する「新しいソニー」が出てくるかどうか。

 日本が今、停滞しているのは、高度経済成長期にモノづくり大国として成功した反動です。今も、日本経済は製造業中心で回っており、80%が「有形資産」で動いているわけです。

 一方、米国は80%以上が「無形資産」になっています。日本はいかに無形資産化するかが大きな課題です。その時に大事になるのは優秀な「人」です。日本人は元より、世界中から人材を集め、DX革命の先頭に立つ必要があります。

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