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「社員がとにかく働きやすい仕組みを」トラスコ中山の『有給』改革

財界オンライン / 2022年3月11日 18時0分

『積休バンク』とは何か?

 ―― コロナ禍で多くの気づきがあったと思うんですが、改めて、この2年間に感じたこととは何ですか。

 中山 新型コロナの拡大によって、われわれは昨日までの常識が一変し、ある日を境に非常識となることを学びました。それでも、当社が考える「お客様が必要とする商品を、どこよりも早く確実にお届けする」という商売の原理原則は変わりません。そういうことを再認識しました。

 ―― 会社は何のためにあるのか、個人や社員は何のために働くのかを再確認したということですね。

 中山 ええ。個人が何のために働くのかということでいえば、働き方改革じゃないですが、昨年10月から『積休(つみきゅう)バンク制度』というのを始めました。既存の有給制度を改正しまして、利用しなかった有給休暇を上限なく積み立てられるようにし、退職時に会社が使用しなかった有給を買い取るのです。

 ―― それは面白いですね。こういう制度は日本で初めてじゃないですか。

 中山 初かどうかは分かりませんが(笑)、これまで当社では、有給の上限は60日まで積み立てられるようになっていました。普通の会社は40日ぐらいなので、それでも多い方だったと思うのですが、ふとしたことから上限を撤廃したらどうだと。

 ふとしたことというのは、ある時に物流のセンター長のスケジュール表を見ました。それは飛び石連休が入っている時のスケジュールだったのですが、それを見て人繰りが大変だなと思いまして、何とかしてやらないといけないと思いました。

 ―― 物流倉庫の人手不足という問題ですか。

 中山 人手不足というよりは、人の配置の問題です。

旅行に行くのでも、親の介護でも、理由は何でもいいのですが、この日はちょっと休みたいと思う日がありますよね。

 ところが、物流センターに人がいなかったら、センターが回らない。だから、センター長のように現場を預かる立場としては、誰かが急に休んだりすることを考えて、余分に人を張り付けておかないといけないわけです。ですから、そういうことが少しでも緩和されれば、運営上のコストも多少はダウンできるのではないかと。

 そこでふとひらめいたのが、有給は使わないと損だと考えるのが普通ですけど、これからは有給を貯めたら安心だと考えられるように、発想を変えたらどうかと思ったんです。

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 ―― 使わないと損から、貯めた方がお得だと。

 中山 貯めた方が得だと言われるとちょっと(笑)。貯めても安心だということで、60日という上限を撤廃したんです。

 ―― それはいつ頃の話ですか。

 中山 思いついたのは、昨年の9月か10月くらいですね。

 ―― 先ほど、積休バンク制度を決めたのは10月と言っていましたが、思いついてすぐに制度化したというのは、素早い決断ですね。

 中山 ええ。もちろん、労務関係の先生にも相談したのですが、何も問題はないということで制度化しました。そういうことをやっていくと、有給を使い切らずに貯めても安心だということで、有給を無理に利用する人が少しは減ってくるのではないかと考えたのです。

続きは本誌で

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