【厚生労働省】「コロナ対応」最優先で感染症法改正案の提出見送り
財界オンライン / 2022年3月8日 15時0分
政府が新型コロナウイルス対策の強化に向けて検討していた感染症法改正案の通常国会提出が見送られた。今夏の参院選を控えて会期延長が難しい上、国会で野党との対決を避ける狙いがあったとみられ、岸田文雄首相は「中長期的な課題を6月までにしっかり洗い出した上で法改正を考える」と述べた。
改正案は、感染拡大時に病床が逼迫した過去の反省を踏まえ、国や自治体の権限を強化し、医療従事者や病床の確保の実効性を高める内容。ただ権利の制限も伴うため、国会論戦で争点となる可能性があった。
提出見送りに対し、野党だけでなく、与党内でも批判や疑問の声が上がったが、後藤茂之厚労相は記者会見で「権利義務に関わる問題をもう少しきちんと検討してから法案を提出する」と強調し、今国会での提出見送りはやむを得ないとの考えを強調。結局、厚労省所管の法案は、雇用保険法改正案、児童福祉法改正案、医薬品医療機器法改正案の3本で、いずれも与党の党内手続きを受けて3月中旬までに国会に提出される予定だ。
ただ、同省の場合は、参院選という事情とは別に、「新型コロナ対応で忙しすぎる」(官房幹部)ことが大きな制約要因となっており、感染症法改正案の場合も「法案作成チームとコロナ対策で現場で闘っているチームは同じチームで、人材を割けない」(後藤厚労相)というのが実情のようだ。
省内では「厚労省の法案は、国民の生活に直結する内容が多いので野党にとっては格好の攻撃材料になる。夏の参院選への影響や審議日程を考えれば仕方がない」(別の幹部)とあきらめムードが強いが、すでに数年単位で国会提出に至らない法案も。旅館業者が感染防止対策として宿泊を拒むことを認める旅館業法改正案などコロナ禍で業界からの要望が高い法案もあり、法案審議が順調に進めば追加提出を模索する動きも出てきそうだ。
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