【ロシアのウクライナ侵攻】日・米・欧は新国際秩序作りへどう動くか、そして日本の対応は?
財界オンライン / 2022年3月16日 7時0分
「新冷戦」でなく「戦争」
「まさか21世紀の世界で、こんな暴挙が起こるとは」─。まさに世界中が虚を衝かれた感じのロシアのウクライナ侵攻である。
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2014年のクリミア半島の併合に加えて、今回の侵攻である。第2次世界大戦が終結(1945年)して77年。東側(社会主義)と西側(資本主義)が対立した戦後の冷戦に終止符を打ったと見られたのはベルリンの壁崩壊(1989年)。
冷戦は、互いに核兵器が使えないということで生み出された言葉。ところが今回のロシアの侵攻は現実に重火器、戦車、航空機ミサイルを使って行われた。だから新冷戦ではなく、昔ながらの戦争への突入である。
まさに第2次大戦後、80年近く経って、こうした露骨で理不尽な戦争をプーチン大統領はなぜ起こしたのか。
80年近く前、ポーランドや他国に侵攻したヒトラー(ドイツ)のナチズムと同じ暴挙。もしウクライナを侵攻したとしても西側は反撃してこないというプーチン氏の間違った判断だ。
確かに、欧州を守るNATO(北大西洋条約機構)軍は領域外として軍事的な反撃は取れなかった。
そこで日・米・欧を中心に経済制裁に打って出た。そして大事なのは、国際的に広がったロシア非難・批判である。ロシア国内は強権的に抑え込んでいるが、海外ではロシアの若者や国民が反プーチンの動きに出ている。
そして、国連総会の舞台である。確かに国連安全保障理事会では5大国(米・露・英・仏・中)の特権として拒否権があり、ロシア批判の提案は拒否された。しかし、米国を中心に加盟国の大半が協力して国連総会を開催、そこでロシア批判を行うという〝世界の意志〟を表明。ロシアは完全に孤立した。
そこで急遽浮かび上がったのが、ロシアとウクライナの停戦協議の話である(2月28日現在)。この停戦協議がうまくいくことを願うのみである。
今後の中国の出方は?
ナチズムの敗北を見てもわかる通り、自由主義に対して全体主義(専制・独裁主義)が勝利した試しはない。しかし、ややもすれば軍事力に頼り、相手を屈服させる誘惑に駆られる独裁者は今後出ないとは限らない。それを防ぐ手立てはあるのか?
当面、NATOの機能をどう活用するかという課題。コソボ紛争(1996年―99年)では旧ユーゴスラビア諸国は当時NATOの埒外であったが、コソボ紛争は欧州全域の安全保障に影響するとしてNATO軍は出動。しかし、今回のウクライナでは出動しなかったということをどう受け止めるか。
「この問題はNATOの再定義が必要」と語るのは森本敏・元防衛大臣。
台湾問題や北朝鮮問題を抱える東アジア情勢も緊迫感を増している。北朝鮮は早速、飛翔体(ミサイル)の発射に及んだ。世界中がきな臭くなり、放心状態に陥るのは避けねばならない。
要は、それぞれの国が自分達の国を守る権利を尊重することという原点の確認が不可欠。
今回、世界的連帯が短期間に進んだのは、ウクライナ・ゼレンスキー大統領を始め、ウクライナ国民1人ひとりが「国を守る」覚悟を示し、実際に行動に出たからである。『覚悟』は多くの善良な人達を突き動かす。
東アジアの安定を図るには、中国がどう考え、どう行動してくるのかを踏まえるのも大事。
自由、民主主義を守る諸国の団結と協調も必要。幸い、インド太平洋の安全保障を担うQuad(日・米・印・豪)の枠組みも発足。しかし、このインドが先の国連安保理でロシア批判の提案が出た際、中国とともに棄権国に回ったという現実もある。世界は複雑で多様である。
しかし、不正義、不公正な侵攻、暴挙は絶対に認められない。そのことを全地球人が再確認。
日・米・欧は軍事力行使ではなく、経済制裁で対応。国連総会でのロシア批判の決議と同様、国際世論の一致はロシアへの痛烈な打撃となる。
今後、制裁の反動としての痛みも覚悟しながら、新しい国際秩序をつくる時である。
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