【動乱のウクライナ情勢】ロシアから撤退か、継続か 難しい判断迫られる産業界
財界オンライン / 2022年3月28日 18時0分
ロシアによるウクライナ侵攻を受け、英シェルや米エクソンモービルなどの欧米企業が相次ぎロシアでの事業撤退を表明する中、日本企業も対応に追われている。
日立製作所は当面の間、ロシアへの輸出やロシアにおける製造拠点の稼働を、順次停止していくことを決めた。ロシア事業の大半が建設機械事業。グループ売上高10兆円に占めるロシア事業の割合は約0・5%で、今期(2022年3月期)業績への影響はないという。また、トヨタ自動車やソニーなども相次ぎ操業停止や商品の輸出停止を決め、欧米企業と歩調を合わせた形だ。
一方、アパレル業界では、スウェーデンの『H&M』や『ZARA』のスペイン・インディテックスがロシアでの営業停止を決める中、『ユニクロ』を展開するファーストリテイリングは、当初、「衣服は生活の必需品」として事業を継続する方針だった。しかし、「あらゆる戦争に強く反対する」として一転、事業の一時停止を決めた。
ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使はツイッターで「ユニクロは生きる為のウクライナの基本的ニーズよりも、ロシアのパンツやTシャツ需要の方が重要であると判断した」と表明。コメント欄にはユニクロに対して批判的な意見も多く、同社もこうした意見に配慮したものとみられる。
また、冬の寒さが厳しいウクライナでは、「3月でも気温が氷点下となることが多く、防寒対策も急務」(同社)。人道支援の観点から、ポーランドなどに避難した難民に、毛布や『ヒートテックインナー』などの衣料品や防寒具合計20万点を提供。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)を通じて、1千万米ドル(約11億5千万円)を寄付することも決めた。
ロシアにも拠点のある某企業関係者は「欧米企業に比べて判断が遅いと言われればその通りかもしれないが、一時停止はともかく、完全撤退を決めるのは難しい」という声もあり、もどかしい様子が伝わってくる。
戦争には反対だが、現地の雇用やサプライチェーン(供給網)を考えると迂闊には判断できない。しかし、結論が長引けば戦時下で犠牲者を出すことにもつながりかねず、難しい判断を迫られる日本企業である。
【ウクライナ侵攻】識者はどう見る? 元防衛大臣・森本敏
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