【総務省】大阪のビル放火事件受け、防火避難対策を議論
財界オンライン / 2022年3月28日 11時30分
大阪市北区の雑居ビルの放火殺人事件を受け、総務省消防庁は学識経験者らによる検討会を国土交通省と共同で設置し、防火避難対策の議論に着手した。2001年の歌舞伎町ビル火災をはじめ、過去にも甚大な被害を出した雑居ビル火災。検討会は6月をめどに、再発防止策を盛り込んだ報告書をまとめる。
25人の犠牲者を出した今回の放火事件。大半の死因は一酸化炭素中毒だった。事件が起きたビルには非常階段が一つしかなく、その唯一の避難経路が火の手に阻まれ、多くの人が逃げられなかったとみられている。
階段が一つしかないビルは古い建物に多く、消防庁は事件を受け、全国の消防本部を通じて類似ビルの緊急点検を実施。その結果、調査した2万9229棟の13%に当たる3894棟で、避難経路に段ボールやロッカーなど避難の妨げになる物が置かれていた。すでに2196棟が是正指導に応じ、撤去したという。
消防庁は、歌舞伎町ビル火災後に雑居ビルの避難経路の確保などに関する指導を強化。しかし、今でも非常階段に障害物が置かれているビルが一部にある現状を同庁関係者は問題視しており、ビル関係者に防火意識の向上を呼び掛ける。金子恭之総務相は「不備を是正していくことは、リスクを減らすという観点から非常に重要だと考えている」と強調している。
同庁などは、今回の事件を踏まえ、防火体制を強化したい考えだが、効果的な対策を打ち出すのは容易ではなさそうだ。2方向の避難経路を確保するためには大掛かりな工事が必要となるため、ビル側には大きな負担となり、新たな規制には慎重な声もあるからだ。
また、事件では容疑者(すでに死亡)が事前に購入したガソリンを犯行に使用したとみられている。19年の京都アニメーション放火事件を受け、ガソリンの販売には身分証による本人確認と使用目的の確認などが義務化された。それでもガソリンを用いた放火は後を絶たないため、検討会はガソリンなど危険物の取り扱いについても議論する。
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