ウクライナの覚悟、ロシアの孤立【私の雑記帳】
財界オンライン / 2022年4月2日 11時30分
ウクライナの覚悟 狂気の世界─。まさか21世紀入りして20年余も経って、「こんな侵略が起こるとは」と思う人がほとんどである。
ウクライナでは避難途中の小さな子どもたちや民間人が無残にも殺されてしまう。都市には、容赦なく遠距離砲が打ち込まれる。
男性の大半は、「国を守るため」として、家族を隣国のポーランドなどへ脱出させた後、自らは侵略して来るロシアと「戦う」と覚悟を決める。
現地から流れてくる映像に、1人で歩く年配の女性が、「世界の人たちよ、助けてください」と悲痛な声をあげる。観ているほうも心が痛む。
日・米・欧の自由主義諸国はロシアへの経済制裁で動いているが、軍事的には対応できずにいる。
米国も加わって、欧州には相互に安全保障で協力し合うNATO(北大西洋条約機構、加盟国30カ国)があるが、ウクライナはNATOには未加盟。
NATOは加盟国の中の1カ国が侵攻を受ければ、加盟国全体で反撃するわけだが、そうではないので、NATOとして参戦できないというのが米・欧のスタンス。
もし、米国が参戦すれば、ロシアとの間で核戦争にまで発展しかねない。そういう懸念から、欧米諸国は参戦できずにいる。
一定の兵器類や防衛関連用品が西側からもウクライナ支援として提供されているようだが、西側の本格的な軍事介入はなさそうだ。
となると、ウクライナは単独で対ロシア戦を戦わねばならない。
戦力的に圧倒的に優位なロシア軍だが、侵攻から約2週間経った3月9日現在、首都キエフは陥落していない。
ゼレンスキー大統領をはじめ、同国のリーダーたちは戦う覚悟を示し、最後まで諦めない姿勢を世界に発信。世界の大半がウクライナを支援し、ロシアのプーチン大統領は孤立感を深める。〝プーチンの誤算〟と言われるユエンだ。
兼原信克さんの分析 それにしても、わたしたちの感覚からすれば、〝狂気の沙汰〟としか思えない侵攻。プーチン氏はなぜ実行するに及んだのか?
1989年に『ベルリンの壁』が崩れ、1991年に旧ソ連が崩壊した段階で、わたしたちは、旧社会主義陣営は資本主義・自由主義陣営に敗れたという認識を持っていた。
しかし、プーチン氏の認識は違うようだ。東西対立の冷戦はそのまま続いており、「冷戦に負けたとは考えていないのです」と言うのは、外交官出身で国家安全保障局次長(2013―2019)を務めた兼原信克さん。
そのプーチン氏の心理について、兼原氏は、「自分たちの子分だと思っていた東欧の国々が西側に寝返っていくのですから、ロシアにとっては全然面白くないわけです」と語る。
異民族との戦い、侵略を経験してきたユーラシア大陸、欧州の歴史をひも解きながら、兼原さんにはウクライナ戦争の背景、勃発理由、そして国際秩序はどう動くのかを都合3回にわたって語ってもらうことにした。
東西2地域に分かれて… それにしても、ウクライナの人たちの覚悟の強さである。戦力的にはロシア優位だが、侵攻2週間経っても首都キエフは落ちない。
世界は、ロシアはウクライナ東南部の2州を含むドンバス地方を奪取すれば、そこで侵略を終えると見ていた。しかし、侵攻間もなく、ウクライナ北方のベラルーシ側から首都キエフへの侵攻も開始。
この侵攻について、「おそらく緻密な作戦の無いままにキエフへとなだれ込んだのでしょう。侵攻したロシア軍が、道路で立ち往生している姿は不様ですね」と兼原さんは語る。
仮にロシアが首都キエフを陥落させたとしても、ウクライナの統治に手こずることは間違いない。
ある見方では、同国を南北に流れるドニエプル川を境に、東側の区域はロシアに支配され、西側はNATO陣営やEU(欧州連合)が応援する地域になるという予測もある。
東側のウクライナ国民にしても、これだけの侵略を受けて、ロシアへの反発は当然のごとく高まる。ロシアにとっても苦難の時が始まる。
現在、1日に日本円換算で2兆円の戦費がロシア側にかかっているといわれる。この戦費負担は重い。
大国の振る舞いをするロシアだが、GDP(国内総生産)では世界10位の韓国(1兆8067億ドル、約207兆円)を下回る1兆7107億ドル(約196兆円)で世界11位(2021年の統計)。
経済的にも追い込まれたプーチン氏の、自分勝手で、相手にも相当な犠牲を強いる侵略は決して長続きしないことは明らかである。正気に戻る時だ。
リーダーの覚悟と決断 世界の株価は乱高下しながら、ジリジリと下げ基調。一方、原油価格は高騰し、石油、天然ガス不足の長期化が懸念される。
このままでは、世界経済は大不況、しかも、「経済大停滞の中で物価が上昇するスタグフレーションになる」(某経済研究所の首脳)という見方が強まる。
日本という国の立ち位置と進路をどう定めるか─。日米同盟を基軸にし、また自由主義、民主主義で価値観を共有する欧州とも共同歩調を取りながらも、日本ならではの立ち位置を確保すべき。
キーワードは『自立・自助』。国としての基軸をしっかり持ちながら、各国・各地域と連携していくことが大事。
相互に依存しながら生きるというグローバリゼーションの道は、今回、ロシアのウクライナ侵攻という暴挙で、〝妨害〟を受けたが、基本線は『共生・共存』にある。『共生・共存』の中で『自立』を確立する生き方。
苦難の中に活路を見出すという意味で、リーダーには『覚悟』と『決断』が求められる。
食を通じて、共生の世を 混沌の中で、企業にも自分たちの生き方に基本軸が求められる。
「やはり食を通じて、世界中に幸せの輪を広げていきたい。食の喜びを広げていきたいと思います」と語るのはキッコーマン社長の中野祥三郎さん。
本業のしょう油をはじめとした調味料や加工食品は世界中の人に愛されている。いわば食を通じて、人々を幸せにするという存在。
「やっぱり平和であることが、われわれにとっても一番です」と中野さん。
キッコーマンは日本で生まれ育ち、今や米国、欧州にも生産拠点を構え、世界の人々に商品を届けている。
コロナ禍では、世界的に外食が減り、内食が増えた。家庭の中での食事は、料理するのにしょう油や調味料を使う。家庭でみんなと一緒に食を共にし、苦楽を共にする幸せを届けていく。本業を通じて、世のため、人のために尽くすという企業の努力は続く。
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