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【内部通報制度が形骸化した理由は何ですか?】日比谷パーク法律事務所代表:久保利 英明弁護士

財界オンライン / 2022年4月12日 15時0分

公益通報者保護法のポイント

 ─ 昨今、企業のコンプライアンスの重要性がさらに増しています。その中で労働者が公益のために内部通報を行ったことを理由に解雇などの不利益な取り扱いを受けることがないようにするための公益通報者保護法が改正されました。まず同法の概要と趣旨から聞かせてください。

 久保利 2004年に公布され、06年4月1日から施行されていますが、国民生活の安全・安心を損なう企業不祥事は事業者内部からの通報をきっかけに明らかになることも少なくありません。

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 そこでこの法律の主旨は、株式会社のみならず、医療法人や社会福祉法人、学校法人といった事業者に対して内部通報者に対する解雇や減給その他不利益な取り扱いを無効として通報をしやすくすることでした。

 ただ、法律の施行から20年近くの年月が経過しているのに、内部通報はほとんど機能していないと言わざるを得ません。実際その間も巨額粉飾決算や製造業各社での品質検査データの改ざん偽装、銀行での不正融資などが相次いでいます。

 東芝の粉飾は外部への通報で発隠し、スルガ銀行での不正融資はメディアや原告団への通報で露呈しました。多くの偽装事件は永年に及ぶ全社での慣習として現場労働者は是正を諦め、通報意欲も失っていたのです。

 ─ そのような環境になってしまったのは、なぜなのでしょうか。

 久保利 事業者の内部から不正を通報すると、事業者内で通報者の探索が行われ、通報者が特定されてしまう。

 その結果、通報者に陰湿な報復や不利益な取り扱いがなされるとの危惧から、通報が行われず、不正情報が隠蔽されたまま、何十年も続けられるという事態が発生していたのです。そこでこの度の改正になったという経緯があります。

 ─ 法律が機能してこなかったため、改正されるということですね。

 久保利 ええ。今年の6月1日から施行される予定です。改正内容としては、従業員300人を超える事業者では、その日から公益通報対応業務従事者を定め、指針に対応した体制整備が実施されなければならなくなります。

 企業グループや子会社、関連会社共通の窓口を設置するにしても、子会社や関連会社も従業員が300人を超える場合は同様の義務を負います。

 ただ、先ほど申し上げたように、これまで法律が施行されても機能してきませんでした。内部告発者は事業者にとって非常に大事な存在であるにもかかわらず、内部告発者をいじめて不利益取り扱いや差別をしてしまう。さらに言えば、内部通報自体があまり活用されていません。

 しかし、どんな事業者であってもパワハラやセクハラといった問題とは無縁ではありません。不正会計など不適切な事案はどこでも起こり得ます。実際に、そういった企業や法人はいくらもあります。それなのに明るみに出されない。内部通報もない。

 そこで消費者庁が調べたところ、「内部通報をすると、自分が損をする」「社内でいじめられる」といった実態が判明したのです。

以下、本誌にて

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