安全保障>経済の流れで民間経済はどうなる?ニッセイ基礎研チーフエコノミストの警鐘
財界オンライン / 2022年4月17日 11時30分
半導体など重要物資のサプライチェーンの強化を柱とした経済安全保障推進法案が国会で審議されている。
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法案は「供給網強化」「先端技術の官民協力」「基幹インフラの事前審査」「軍事転用可能な機微技術の特許非公開化」の4分野で構成されている。
安保上重要な物資の安定供給確保や、先端技術の研究開発強化を図る一方、基幹インフラに関する虚偽の届け出や、保全指定された特許技術の情報漏洩に対しては、最大で2年以下の懲役か100万円以下の罰金、またはその両方が科される。
経済界が懸念するのは、法案の柱である「供給網強化」「基幹インフラ事前審査」で、政府関与と政策対応の拡大だ。
法案には、支援対象の重要物資の供給網や基幹インフラのサイバー攻撃対応に関して、関係省庁が調査・審査できる仕組みが盛り込まれている。
対象企業は、政府と十分に意見交換する必要があり、情報流出リスクの高い海外製品の点検強化も求められる。
筆者は、この分野で日本の法整備は遅れており、対応が必要だと感じている。また、米中対立に加えて、今般のウクライナ情勢でも、重要物資の安定供給確保が課題となったことから、国民の間でも、その重要性が共有されたと感じている。
ただ、法案の枠組み如何では、民間企業が必要以上に萎縮し、日本の競争力が削がれる事態が懸念される。
米国では、経済安全保障政策が強化される中でも、民間企業は萎縮せずに活動を続けている。
中国事業への投資実績は、2020年に世界的な新型コロナウイルスの蔓延や、米中対立激化などを受けて、中国で「投資を拡大」した企業の割合は前年比で下落した。
しかし、制度が整備されるにつれて企業の投資計画は変化し、21年には「投資を拡大予定」とした割合が急増している。米国ではここ数年、機微技術の流出防止や輸出管理強化などの法整備が相次ぎ、米中覇権争いの中、制約要因が拡大しているとのイメージはあるが、ビジネス自体は萎縮しているわけではない。
米国の法律は安全保障面でダメだという領域を明確にしている。企業は法律でダメだと明文化されていない領域には積極的に投資する。民間経済は動く。
しかし、日本企業はリスクを極力避ける傾向が強い。
できるだけグレーゾーンを少なくする法整備と運用が重要だ。企業がグレーな領域に投資をして罰せられるのを恐れるあまり、投資をやめてしまうとか、複雑な申請手続きを嫌って、かえって空洞化が加速するというような制度設計は避けなければならない。
中国にロシア問題も重なり、法案審議では、安全保障に傾斜しがちだろうが、規制に保守的に構え萎縮する日本企業とならないようにする配慮も必要となる。安保と経済のバランスという難しい問題である。
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