戦争の現状とこれからの展開はどうなる? 答える人 元防衛大臣・森本敏
財界オンライン / 2022年4月20日 18時0分
ウクライナの避難民をどこまでフォローできるか
―― 日本は極東ロシア・サハリン沖の原油・液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン1」と「サハリン2」について撤退しない方針を表明しましたが、これはどう考えますか。
森本 今まで撤退するべきでないと考えていました。日本が撤退すれば、今までの投資が無駄になるし、中国が代わりに入ってくるだけですから。しかし、ロシアの非人道的虐殺事案を見ると、こういう国からエネルギーを入手し続けることは国際社会における日本の対応に疑問を有する国が出てくるのではと思います。これは決心のしどころですね。
一方、ウクライナの避難民を受け入れるということは真剣にやるべきです。100人単位の避難民を受け入れるのでは少なすぎますし、文化も言葉も違う日本にどれくらいの人が行きたいと答えるかも分からない。
家も就職先も手配するというけれど、どこまで避難してきた人たちをフォローしてあげられるのか。わざわざ林外務大臣がポーランドへ行って支援を表明してきたのですから、受け入れ態勢をしっかり整えてほしいと思います。
【政界】ウクライナ問題が内政・外交を直撃 追加経済対策で打開図る岸田政権
―― 本当ですね。今後、世界全体が食料やエネルギーの2つを軸に緊張感を強いられる状況が続くわけですが、どう手を打てばいいのか。
森本 制裁は経済とエネルギーに跳ね返っているわけですが、環境対策にも影響しています。要は、エネルギー価格が上昇しているし、石油や天然ガスが手に入らず、再生可能エネルギーには時間がかかるため、火力発電を増やそうとしている国もある。今まで努力して来た地球温暖化対策が後退することを意味します。これはあってはならないことです。
先進国だけでなく、途上国も含めた多くの国々がこれから気候変動やエネルギー、物流、食料など、いろいろな問題に頭を悩ませながら対応を迫られるようになるわけです。しかも、まだコロナ禍が続いていますから、今後しばらくは厳しい情勢が続くと覚悟せざるを得ません。
しかし、最も重要なことはプーチン大統領のような妄想にとらわれて無謀な戦争をするような事態を世界は、二度と起こさないためにわれわれは何をすべきか真剣に考えることです。
国連はこれで良いのか。NATOの抑止は機能するのか。核戦争を防ぐためにどうすべきか。中国が同じような行動を取らないという保証はあるのか。その場合、日本はどうすべきか。今回のロシアによるウクライナ侵攻はまだ決着がついていませんが、われわれには、この後の世界をどうするのかといった重大で深刻な課題を突き付けられています。
【ウクライナ侵攻】識者はどう見る? 元内閣官房副長官補・兼原信克
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