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【前代未聞の鉄道ネットワーク】首都圏の7社14路線を1本でつなぐ 東急電鉄の沿線活性化策

財界オンライン / 2022年4月26日 15時0分

乗り入れる鉄道会社の車両が勢ぞろい

1年後、7社14路線が一気につながる――。前代未聞の鉄道ネットワークが首都圏に出現する。東急電鉄と相模鉄道が相互直通運転を始め、「横浜の真ん中と、東京の真ん中がもっとつながる」。しかし、東急にとっては東海道新幹線の停車駅である「新横浜」の誕生も大きい。直通線の開業を契機に自社の沿線を広げ、新たな再開発にも乗り出そうとしている。

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沿線初の新幹線との接続

「東急東横線の新綱島など相模鉄道と乗り入れるエリアは我々にとっても新しいエリアになる。沿線で再開発の余地がある以上、わざわざ沿線外に出る必要もない。もっと沿線開発を充実させることができる」――。東急社長の髙橋和夫氏は語る。

 横浜の真ん中と、東京の真ん中がもっとつながる――。こんなキャッチフレーズを掲げて東急電鉄と相模鉄道が相互乗り入れする「相鉄新横浜線・東急新横浜線」の開業が来年3月に迫った。この直通線は相鉄の西谷と東横線の日吉を結ぶ約12・1キロ。距離は僅かだが、単に両社の沿線を結ぶだけではない。

「前代未聞の鉄道ネットワークができる」と東急幹部が語るのように、直通線が開業すると、既に東横線と直通運転している東京メトロ副都心線や東武鉄道、東急目黒線と直通運転している南北線と都営三田線、更に相鉄が2019年から乗り入れるJR東日本ともつながり、7社14路線が1本の線路で結ばれる。

 神奈川県の相鉄沿線に住む男性会社員は「東京・大手町に行くときは、一度、横浜駅に出てJRに乗り換えなければならなかったが、これが乗り換えなしの1本で行ける」と期待する。

 直通線の開通で神奈川から埼玉の距離はグッと縮まる。相鉄の海老名や湘南台から、目黒を経由して三田線であれば西高島平、南北線であれば埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線の浦和美園まで行ける。また、渋谷を経由して東武東上線の川越方面や直通運転ではないが、西武池袋線の飯能にも行けることになる。

 このほかに東急にとってもう1つ大きなメリットがある。鉄道事業本部技術戦略部課長補佐の小口正紀氏が「新幹線に乗れば大阪方面にもつながる」と語るように直通線の開通で「新横浜」と「新綱島」が新設される。

 つまり、東急沿線で初めて新横浜駅という新幹線との乗り換え駅が誕生する。幹部は「新幹線とのアクセスは悲願だった」と強調。人を呼び込む要素として沿線に新幹線の駅があるかないかは大きい。渋谷から新横浜までは菊名経由で約30分かかるが、直通線なら11分ほど短縮できる。相鉄沿線民も横浜に出ずに済み、大和からの所要時間は23分程度短縮される。

 相鉄を介した2つの2つの直通線の開業による経済波及効果は約5000億円にも上る。



「新綱島」「新横浜」で再開発

 冒頭の髙橋氏の発言にあるように、東急にとっては直通線の開業は”沿線が広がる”ことを意味する。そのため、既に同社は沿線開発にも手を着け始めている。その1つが新綱島だ。

 東急は新駅に直結する29階建ての高層タワーマンション(252戸)を開発。周辺に所在するマンション約3000物件のうち、20階建て以上の高さで駅から徒歩3分以内の物件数は1%に満たない。そのため同物件の希少性は高く、抽選倍率は最高で4倍。第1期の66戸はほぼ完売だ。しかも、平均坪単価は約400万円に上る。

 戦時中の駅名が「綱島温泉」だったように、かつての綱島は温泉街。東京の奥座敷として人気を博し、旅館だけでなくレジャーランドも造られて活況を呈したこともあった。1970年代に入ると商業・住宅エリアへと変わるのだが、今では街路が狭いなど、綱島駅と新綱島駅の間では「綱島駅東口駅前地区市街地再開発事業」をはじめとした再開発の機運が高まっている。

 加えて今後の東急の出方が注目されるのが新横浜だ。高層ビルが建つ駅北口とは対照的に「篠原口」駅前はコンビニが1件ある程度の未開拓地。駐車場や住宅が主な場所であるため、エリアの土地所有者が中心となった再開発構想が動き出している。「新横浜駅南口駅前市街地再開発準備組合」が結成され、相鉄線の羽沢横浜国大駅前での再開発に携わる日鉄興和不動産と東急が協力企業に選ばれている。

 篠原口の風景は、かつての二子玉川の姿と重なる。狭い道路や老朽化した木造家屋が密集し、「交通インフラの整備もなかなか進まなかった」(担当者)。それが今では楽天グループが拠点を置くオフィス拠点にもなり、映画館やホテル、商業が周辺住民と共存する職住近接の街となっている。ニコタマ再開発の「ノウハウを篠原口でも生かせる」(前出の幹部)と考える。

 東急電鉄はポスト・コロナでも鉄道利用者はコロナ前には戻らないと捉える。そんな同社にとって直通線の開通はまたとないチャンス。ただ、新線開通時には多数の鉄道が乗り入れるため、運行障害が頻発することも予想されるだけに、直通線の開通を起爆剤にできるかどうかは東急の腕次第となる。

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