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【環境・DX・共創】セイコーエプソン・小川恭範社長が変える「会社のカタチ」とは?

財界オンライン / 2022年5月23日 7時0分

小川さんが身につけている時計はセイコーエプソンのブランド「オリエントスター」70 周年記念モデルの「スケルトン」

インクジェットに新たな可能性
 2021年以降、足元で国際物流の混乱、遅延が続いており、解消に向かう気配はまだありません。物流費用が高騰し、コスト面にも影響を与えています。半導体を中心とする部材不足も継続しています。

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 コロナ禍を受けた在宅勤務で、当社のプリンターなどの製品の需要拡大は継続していますが、供給制約もあって、十分に対応しきれていないのが現状です。

 実際、足元の状況に対応する社員達はかなり苦労しているというのが正直なところです。

 徐々に回復の方向に向かっていくと思いますから、それを見越し、我々の事業の姿も変わっていかなくてはいけないと考えています。

 これまでは製品を大量に生産して販売し、また新しい製品を生産するという、製品が廃棄されることを前提とした事業を行ってきました。しかし、環境負荷を低減するためには、これを変えていかなくてはいけません。

 当社は21年3月に長期ビジョン「Epson25」を見直しました。これまでの売り上げ成長こそが企業成長であるという考え方から、社会課題を起点に、これをいかに解決していくかという考え方に転換しています。

 重要な取り組みとして「環境」、「DX」、「共創」を挙げていますが、これらは相互に連関しているのです。我々が持つ技術で環境負荷の低い製品を生み出すと同時に、デジタルの力、お客様との共創で、さらに価値を高めていくことを目指しています。

 また、当社がこれまで培ってきた「省・小・精の技術」は、課題解決に貢献できる技術だと思います。例えば、当社の技術を用いたインクジェット方式のプリンターは、レーザー方式に比べて熱をほとんど使いませんし、廃棄物の量も減ります。

 この特性を生かせば、インクジェットを家庭用のみならず、オフィスプリンティングの領域にもさらに広げることができます。この分野は長期ビジョンの中でも強化領域としています。

 同時に、商業・産業の領域は現在もアナログ印刷がかなりの部分を占めていますが、インクジェットを活用して印刷のデジタル化を推進していきたいと考えています。

「多様性」のある経営を
 今の時代、「多様性」を抜きに経営を語ることはできません。私自身は性別に関係なく、仕事で活躍して欲しいという思いを持っています。ただ、現実にはそのような状況になっていない面もありますから、私も社長就任以来、注力しています。

 それは単に「女性活躍」といったことではなく、性別や年齢、国籍などに関係なく、自分で考えて提案し、行動する人が一層増える風土づくりや制度改革が大事だと考えています。そうすれば自然と多様性が生まれてきます。

 マネジメント、リーダーシップのあり方も多様化する必要があります。上意下達ではなく、メンバーをエンカレッジするような形に変えていきたいという思いを持っているのです。

 世の中は安定して動いていくわけではなく、必ず変化がありますし、想定通りにいかないことばかりです。長期的な視点を持ち、我々の存在意義を見つめ直しながら、変化の中にチャンスを見つけていきます。


小川 恭範 おがわ・やすのり
1962年4月愛知県生まれ。88年東北大学大学院工学研究科修士課程修了後、セイコーエプソン入社。2017年執行役員、18年取締役執行役員技術開発本部長、19年取締役常務執行役員ウエアラブル・産業プロダクツ事業セグメント担当、20年代表取締役社長。

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