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【働き方改革】パーソルHD社長に直撃! 雇用のあり方、個人の働き方はどう変わる?

財界オンライン / 2022年5月30日 18時0分

和田孝雄・パーソルホールディングス社長

「人生100年時代、より長い期間、様々な形で働くようになり、2~3回、転職をする可能性は出てくるでしょう。この流れは変わらないと思います」─。パーソルホールディングス社長CEOの和田孝雄氏は、社会の変化に伴う働き方の変化をこう語る。就職して終わりではなく、自らのキャリアをいかに向上させていくかが問われる時代。働き方の変化に、個人そして企業は、どう対応していくべきか─。

▶【働き方の二極化】にどう対応? 創業10年を機に「個のためのインフラになる」クラウドワークス

キャリアの市場価値を
いかに高めるか

 ─ 和田さんが社長に就任して1年が経ちました。コロナ禍でのスタートでしたが、2021年度は過去最高益になりそうですね。

 和田 コロナ危機で就任直前まで一時、業績が厳しい局面もありましたが、この間もお客様とのつながり、働いて下さっている方々とのつながりを大事にしてきたので、その延長線に21年度があったと考えています。

 コロナ禍でコミュニケーションが取れない中でも社員が働く方々との関係性をつないでくれたこと、そして、企業様が特に派遣雇用をしっかり維持しようと取り組んでいただいたことも相まっての業績だと受け止めています。

 ─ コロナ禍でも、労働力不足が言われています。この状況は今後も続きますか?

 和田 労働力不足は今後も続くと思っています。

 直近の状況ですと、需要は2019年の水準まで戻ってきています。これは人材紹介でも、人材派遣のご依頼でも同じです。けれども、応募者、求職者の戻りがまだ遅いところがあります。

 これは、コロナの状況を見ているのもありますし、落ち着いてから新たな働き方を決めていこうと考えておられる方も多いからだと思います。

 それから、人口は今後も減っていくので、需給ギャップが広がったままになっているのが現状です。

 ─ 和田さんは、このコロナ禍で、社員にはどんな言葉を掛けてきましたか?

 和田 個人にしっかりフォーカスをしていこうと。

 われわれは、個人に寄り添うビジネスモデルをつくっていこうと考えています。カメラのファインダーを模したパーソルのロゴにも、この思想が込められています。

 個人をしっかり見ていくことで、当グループのビジョンである「はたらいて、笑おう。」が実現される世界をつくっていこうとしています。

 ─ パーソルグループのビジョンである「はたらいて、笑おう。」を通じて、どんなことを実現しようとしているのですか?

 和田 個人の選択肢をより多く提供したり、働く意義をわかりやすくお伝えしたり、仕事がしっかり評価されるような環境を整備していくことで、働く方が自らの目標に向かって努力をし、それを達成して「はたらいて、笑おう。」を実感できる状態になっていただきたいと思っています。

 そうした世界をより広く、多くの方々に提供していきたいと考えています。

 ─ ロシアによるウクライナ侵攻など、環境変化が激しい時代です。職場を変えて、自分のスキルを高めていく時代でもあります。こうした変化をどう認識していますか?

 和田 キーワードとしては「キャリア自律をいかに支援していくのか」ということだと思っています。

 人生100年時代と言われる中、より長い期間、様々な形で働く時代になってきています。

 企業の寿命が30年だとすると、働いている数十年の間に2~3回、転職する可能性が出てくるでしょう。この流れは変わらないと思います。

 そのとき、いかに自身の価値を市場の中で高いものにしていけるか。もしくは、市場の求めるものに高めていけるか。

 こうしたことが非常に重要だと思いますし、これは単に「個人でやりなさい」というよりも、企業サイドも個人のキャリアにつながるスキルアップを支援していくことが大切です。

 企業にとっても、こうした支援が成長に不可欠になってくるでしょうし、そういう支援をしてくれる企業にいい人材が集まっていく。そして、そこで経験を積んだ方々がまた成長して、いいアウトプットを出していくというサイクルになっていくのだと思います。


DXは新たな雇用
新たなニーズも創出

 ─ 世の中はDXの時代なので、とりわけDX関連のスキルアップが必要になってくると思います。こうしたニーズには、パーソルとしては、どう対応しているのですか?

 和田 例えば、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の取り組みがあります。RPAは業務のプロセスを自動化するものですが、当社としては様々なプロダクトを提供していますし、数多くの企業様への導入のお手伝いをさせていただいています。

 その際、RPAを導入できる人、導入した後にそれを使いこなす人、メンテナンスをする人が必要になってきます。

 DXの推進は同時に、またそこで新たな雇用やニーズを生みます。

 つまり、DXは仕事をなくすわけではなく、新たな仕事を生みだします。 定型的な業務を機械に任せられるようになるので、人は人にしかできない仕事をすることで、サービスや商品の提供価値を高めていくことができます。

▶派遣社員のスキル向上策

 こうした社会になっていくと思うので、われわれはDXをどんどん進めていきますし、企業様の導入も後押しさせていただいています。

 その他、自社でお受けしている受託業務の中でも、これまでに培った知見やノウハウから、最適なデジタルツールを導き出し、それらのツールも活用しながら生産性の向上に努めています。

 それから、人材紹介でも、DXやAIの活用でマッチングの精度を高める取り組みを行っています。テクノロジーを活用しながら、人が持つ経験値も活かすことで、働く方1人1人のベストなマッチングを実現しています。


フェアな処遇を実現する
『サラリーズ』

 ─ 『Salaries(サラリーズ)』や『ミイダス』などデジタルやデータを活用したサービスも提供していますね。

 和田 はい、『サラリーズ』は、フェアな報酬を実現することで、企業の採用力強化や離職防止などをサポートするサービスです。

 「メンバーシップ型雇用」が根付いている、かつ労働力不足が叫ばれ続けている日本では現在、企業はその人のスキルに見合った給与額を提示できず、欲しい人材が採用できない。優秀な既存社員が、給与面での不満を理由に退職してしまうといったケースが散見されます。

 これは、日本には海外のような業界・職種ごとの労働マーケットが確立しておらず、多くの企業はジョブごとの報酬水準が分からず、

「マーケットに準拠したフェアな処遇」が実現できていないことが要因の1つだといえるでしょう。

 労働人口の減少や同一労働同一賃金、「人生100年時代」、新型コロナによる「はたらく」価値観の変化など、日本の労働市場は今大きな転換期を迎えており、「フェアな処遇」は今後さらに世の中から求められることになると考えています。

『サラリーズ』は、パーソルキャリアが提供する転職サービス『doda』の膨大なデータをベースに、機械学習による推定が有効な170万件以上のデータを厳選し、『ジョブごとの報酬水準データ』を作成しています。

『サラリーズ』では、業界・企業規模別に、職種と役割階層(グレード)に応じた、マーケットに準拠するジョブごとの報酬水準が分かります。

 それから『ミイダス』は、個人がコンピテンシー診断という適性検査を受けると、その結果をもとに企業から直接オファーが届く、アセスメント機能を搭載した中途採用サービスです。

 例えば、地方で人材の採用に苦労されている企業と、自身のライフプランとして、様々な地域で働きたいとお考えの方のマッチングなどが進んでいます。

 ─ どんな地域の実例がありますか?

 和田 島根県海士町の事例では、漁協組合や地元のホテルが繁忙に合わせて様々な仕事をしてくれる人材を求めていて、自然豊かな地域で働いてみたい、様々な業務を体験してみたい、というITエンジニアの方の希望が合ったので、ミイダスでマッチングが成立しました。


勉強しない
日本の会社員

 ─ 働き方の変化も激しいですが、転職できる人、できない人の二極化も起きていると思います。この問題には、どう対応していますか?

 和田 先ほどの話と重複しますが、キャリアの自律をいかに支援するかが重要だと思っています。

 そのためには、若い頃から、自分のキャリアを自分で積み上げていくという意識を持つことが必要だと思っています。

 今、パーソルでは、様々なデータを活用して個人の〝未来のはたらく〟を支援する「はたらく未来図構想」の中核サービスとして「PERSOL MIRAIZ(パーソルミライズ)」を提供しています。

 同サービスを通じて、スキルの可視化やキャリアシミュレーションをすることができ、目指したいキャリアとのスキルのギャップが把握できます。

 それと併せて、企業サイドにもキャリア自律を支援する価値があることもお伝えしています。

 そして、そのベースとして、われわれ自身が教育環境やインフラを用意して、そこで教育を受けた方々が企業の中で活躍いただけるようにしていくことも重要です。

 日本で働く方たちは今、世界で一番勉強していないとも言われています。

 これは、勉強することと報酬が結び付かなかったり、勉強することに価値を感じてもらえない状況が長く続いたことも原因と考えられるので、そこを変えていくことも必要だと思います。

 われわれも、企業の教育の部分をしっかりご支援できるようなサービスを用意していきたいと思います。

 ─ 頑張った人が報われる社会ですね。

 和田 そうです。海外との一番の違いはそこにあります。

 勉強してこのスキルを身につければ、この報酬になるから頑張れるという環境と、いろんな勉強をしたけれど仕事にリンクしないから別のことをやったほうがいいと思ってしまう違いです。

 われわれは企業様、個人の方など様々なつながりがありますので、そこで得たデータを分析し、世の中の皆さんに還元して、この状況を変えていきたいと思っています。

 ─ 大企業は人材育成にお金を掛けられますが、中小企業は難しい部分もあります。行政や国の支援も必要になってきますね。

 和田 そうですね。ていくことも必要だと思います。

 われわれも、企業の教育の部分をしっかりご支援できるようなサービスを用意していきたいと思います。

 ─ 頑張った人が報われる社会ですね。

 和田 そうです。海外との一番の違いはそこにあります。

 勉強してこのスキルを身につければ、この報酬になるから頑張れるという環境と、いろんな勉強をしたけれど仕事にリンクしないから別のことをやったほうがいいと思ってしまう違いです。

 われわれは企業様、個人の方など様々なつながりがありますので、そこで得たデータを分析し、世の中の皆さんに還元して、この状況を変えていきたいと思っています。

 ─ 大企業は人材育成にお金を掛けられますが、中小企業は難しい部分もあります。行政や国の支援も必要になってきますね。

 和田 そうですね。 最近、よく「リスキル」と言いますが、先ほどお話したRPAでは、もともと事務系のデータ入力やExcelの業務をやっていただいていた派遣社員の方々に、研修を受けてRPAのプログラムを覚えていただいて、RPAの導入支援や導入後のメンテナンスができる人材になっていただいています。

 参加された方々からは「自分のキャリアが見えた」と喜んでいただいていますし、スキルが上がったことで報酬も上がっています。

 プログラムを書くようなシステム人材ではないけれど、企業サイドから見たら頼りになるDX人材と言えるでしょう。

 働く方も、企業から求められることに応えようと、一生懸命勉強し、スキルを業務に還元する。

 それを繰り返すことで、自身の存在価値を再認識し、仕事に対するモチベーションも上がるという好循環が起きています。

 こうした事例をどんどん増やしていきたいと思っています。

▶【雇用流動時代】社員のロイヤリティをどう高めるか?

パーソルホールディングス社長CEO
和田 孝雄
Wada Takao わだ・たかお
1962年11月京都府生まれ。立命館大学法学部法学科卒業後、88年スパロージャパン入社。91年テンプスタッフ(現パーソルテンプスタッフ)入社、08年HD取締役、16年専務、20年取締役副社長、21年4月社長CEOに就任。

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