【ウクライナ危機】国、企業、そして個人はどう生きる─新しい産業秩序・国際秩序を求めて
財界オンライン / 2022年5月27日 11時30分
グローバル化から一変して…
新しい生き方とは何か─。国も、企業も、そして個人もその課題に直面している。
【あわせて読みたい】【ウクライナ侵攻】識者はどう見る? 元内閣官房副長官補・兼原信克《その3》
つい昨日までグローバルに生きれば活路は開けるということで、企業も個人もガムシャラに〝グローバル化〟を志向してきた。21世紀はまさにグローバル化の真価を発揮する時であると誰しもが思ってきた。しかし、今年(2022年)2月24日、事態は一変する。
ロシアのウクライナ侵攻である。旧ソ連邦が崩壊したのは1991年。今から30年余前である。1989年に『ベルリンの壁』が崩壊し、その2年後のことであった。旧ソ連邦からはロシアが生まれ、それを取り巻く衛星国群が独立。ウクライナもその1つであった。
冷戦時代は自由主義(資本主義)・市場経済を取る国々を西側、これに対し、社会主義・計画経済を選択する国々を東側と分け、東西対立の時代であった。
その冷戦構造の崩壊以降、我々西側は旧社会主義体制は弱体化し、東欧諸国が旧ソ連邦のくびきから抜け出て、西側のEU(欧州連合)に加盟、市場経済化を積極的に進めたり、NATO(北大西洋条約機構)に参加してきたことから、完璧に旧東側は崩壊したと思い込んでいた。
しかし、プーチン・ロシア大統領の心根は違った。「ロシアとウクライナは同じ民族である」として、宗主権を取り戻すかのような振る舞いでのウクライナ侵攻である。
第2次大戦の終結(1945年)から77年が経つ。多くの日本人が、これからは平和の時代として、大規模な戦争は起こらないと思って、我々の社会の制度、仕組みをつくり、あるいは外交上もそういう振る舞いで臨んできた。
しかし、現実はどうか? ロシアはウクライナに攻め込み、何の罪もない子供やお年寄りの間にも犠牲者を出している。その現実を無視するかのようなロシアの振る舞いである。
日本の生き方
日本の針路はどうあるべきか。それを選択するのは日本国民自身である。グローバル化といっても安全保障が絡み、『経済安全保障』という概念も生まれる。そのことが企業の生き方に大きな影響を与える。具体的には世界第2の経済大国・中国とどう向き合うかという課題だ。
1972年(昭和47年)秋、田中角栄首相(当時)が訪中し、日中国交正常化を果たした。以来、50年が経つ。中国自身もそれ以降、社会主義体制を取りながら、『社会主義市場経済』という概念を生み出し、GDP(国内総生産)で米国に次ぐ第2の経済大国に発展。
宇宙開発競争も含めて、米国と張り合うところまで進展、人口14億人という大きな需要構造を背景に、世界の経済・貿易に与える影響は極めて大きなものになってきた その中国とどう向き合うか?
日本の安全保障は日米安保体制という枠の中で考えなければならない現実。経済安全保障に違背するものは経済取引から除外しなければならない。極めて緊張感が要求される時代に入ったことを、多くの経済人が痛感している。
同時に中国は日本にとって最大の貿易相手国。日用品から衣料、機械、全ての分野で中国抜きの日本経済は極めて成立しにくい現実がある。そういう中で経済安全保障の時代を迎え、中国との新しい関係をどう構築していくかという課題である。
そうは言っても、日中間には有史以来の交流がある。仏教一つとっても、中国大陸から朝鮮半島を経由して入ってきたのが西暦538年。その後、鑑真和尚が来日し、奈良・唐招提寺を開山するなど文化的つながりも深い。
こうした日中交流の歴史を背景に、新しい経済交流をどう進めるかという重いテーマである。
日本が明治維新(1868年)で近代化の時を迎えて15年が経つ。それから第2次大戦での敗戦までが77年、欧米に追いつけ追い越せでやってきて、日清・日露戦役で勝利し、先の大戦で敗戦国となった。
以来、日本は体制を新しくし、民主主義国家の有力国として、また世界有数の経済国として歩み始め、今年で敗戦から77年になる。国民の生き方・働き方もメンバーシップ型から、個人の能力に応じて報酬が決まるジョブ型を取り入れるところも出るなど、新しい動きも出現。
コロナ危機の中で、個人も新しい生き方を求められている。
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