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人口減・少子化や高齢者の孤独化に歯止め 【IBJ】石坂茂社長が進める「婚活ビジネス」

財界オンライン / 2022年5月31日 7時0分

組織化された仲人が数多くの成婚を実現させている

いま婚活ビジネスが見直されている─。デジタル時代を迎え、男女の出会いも多様化する中で、人の手によるサポートにこだわる企業がある。日本興業銀行出身の石坂茂氏が起業したIBJだ。同社はネットを介したマッチングに加え、婚活のプロである仲人が所属する結婚相談所を組織化。2027年までに日本の婚姻組数の5%創出を目指す。同社のビジネスは人口減少とシニア層の孤独化に、いかに歯止めをかけるかにも直結する。

福祉実験ユニット【ヘラルボニー】の〝障害者の才能を活かす社会〟づくり

日本の年間婚姻組数の約2%

「結婚は人生にとって大きな意思決定となる。だからこそ、第三者の冷静なアドバイスと後押しが求められる。人口減少が進む日本において、婚活事業者である当社は成婚を生み出すことが使命だ」─。このように語るのは日本最大級の結婚相談所や婚活サイトを運営するIB
J社長の石坂茂氏だ。

 同社は婚活サイトや婚活パーティーといったマッチングサービスから成婚(婚約)までをサポートする結婚相談所までネットとリアルのハイブリッド型の婚活事業を展開。「マッチングサービスを手掛ける企業はあるが、包括的に成婚までサポートする企業はない」

 日本の婚姻組数は2021年で51万組、出生数は84万人とどちらも減少傾向にある中でもIBJの業績はコロナ禍前の19年12月期の売上高は152億円と12年の上場以来、8期連続で増収。コロナ禍の20年12月期では外出自粛の影響で一時減少するも、21年12月期はコロナ禍前に迫る勢いで回復している。

 石坂氏によれば「コロナ禍でも結婚相談所へのニーズは伸び続けている。パートナーと一緒にいたいという根底的な欲求はなくならないものであり、結婚式は先送りしても、相手探しは先送りしたくない人が多い」。同社は年間1万組を超える成婚を生み出している。これは日本の年間婚姻組数の約2%を占める。

 同社のマッチングビジネスがつなぐのは若年層だけではない。今ではシニア層にも広がっている。「60代、70代のパートナーの誕生も珍しくない。高齢者の孤独化の解消にもつながっている」。つまり、同社のサービスは少子化・人口減対策だけではなく、独居老人の増加に対する歯止めにもなっているのだ。

 そんなIBJの婚活サービスで事業の核となっているのは結婚相談所のネットワーク「日本結婚相談所連盟」だ。全国各地にある結婚相談所と利用者をネットワークでつなぎ、IBJ独自の「成婚メソッド」を波及することで成婚率を高めている。



ヤフーから再独立

 冒頭で石坂氏が強調する〝第三者〟の役割を果たしているのが全国3200社を超える結婚相談所の加盟店に所属するカウンセラー。若い世代や副業として始める人がここ数年で増えており、全国に5200人以上いる。IBJはこのカウンセラーの求心力を高め、更なる成婚カップルの創出に向けたサポートにも力を入れている。


石坂茂・IBJ社長

 石坂氏が仲人の存在に着目したのは偶然ではない。1995年東京大学経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。海運業界を担当した後、起業を目指す。その際、2000年にITバブルが訪れる。

 しかし、全てのIT企業が成功したわけではなかった。そこで石坂氏が意識したのが「ニッチな業界でナンバーワンをとること」。当時から日本の人口が減少に転じると言われており、婚活市場の需要が高まると見込んだ。

 そこで石坂氏は00年に日本初のインターネット結婚情報サービスとしてブライダルネットを創業。出会い掲示板のサービスが多くある中で、結婚を目的としたサービスにこだわり、価格も大手結婚情報サービスの10分の1という低価格で差別化していった。

 ただ、03年にヤフーの傘下になった後も会員からの悩み相談は尽きなかった。それが「運命の人に出会えない」という悩みだ。そこで石坂氏は結婚相談所に出向き、仲人と対話を重ねた。「仲人はその道一筋という70代や80代の人々。これは日本の宝だ。手間暇が最もかかる部分は、やはり人の手による支援が重要な役割を果たす」と感じた。仲人の世話があってこそ、運命の人に出会える確率が上がる。組織化された仲人が今では同社の強みとなっている。

 そうして石坂氏は06年にヤフーから再独立し、IBJを設立した。12年にはジャスダックに上場、15年には東証一部(現東証プライム市場)への上場を果たす。その後、ツヴァイやサンマリエも買収。これらの直営店をベースにして全国津々浦々に結婚相談所の加盟店網を広げている。加えて石坂氏は「婚活事業は他業種との親和性も高い」と話す。

 例えば、ホテルニューオータニとは婚活支援で協働。ニューオータニのハイクラスな会員層を中心に、婚活を支援することで、家族でホテルサービスを利用する機会に恵まれる。さらに「築地の寺婚」を標榜してIBJの加盟店となったのが築地本願寺。婚活支援を通じ、地域とのつながりを深めていくことも目的の1つとしている。成婚に至った際には、仏前結婚式や披露宴を行うこともできる。

 また、IBJが注力するのが地方銀行との提携だ。少子高齢化により事業承継問題が深刻化する地方において、婚活支援を行うことで地域創生につなげることができるからだ。18年の名古屋銀行を皮切りに、現在15の金融機関と提携している。

 日本は先進国の中でも唯一、結婚という文化を大事にしている国。しかし、時代が変わり、結婚に対する価値観も変化している。石坂氏は「時代の変容に合わせて当社の役割を果たしていく」と強調する。結婚に対する人間が持つ根源的な欲求をどこまで満たしていけるかがIBJの腕の見せ所となる。

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