『東芝』ファンドから役員受け入れ 株主に翻弄される構図が続く
財界オンライン / 2022年6月8日 11時30分
「不公平という意見は正しくない」
東芝の社外取締役で指名委員会委員長のレイモンド・ゼイジ氏は、5月26日のオンライン記者会見でこう強調した。
東芝は同日、6月28日の定時株主総会に諮る取締役候補13人を発表。”物言う株主”として知られる海外投資ファンドの幹部2人を新たに受け入れる方針を示した。その中には資産運用会社ファラロン・キャピタル・マネージメントの今井英次郎氏が含まれる。ゼイジ氏もファラロン出身であり、会見では公平性が損なわれる恐れについての質問が噴出。だが、ゼイジ氏は「株主との信頼関係を再構築する。候補者の選任は適切だ」などと正当性を訴えた。
もともと東芝は5月13日に取締役候補を公表予定だったが、同日になって急きょ中止していた。ゼイジ氏主導の人選に異論が出たことが原因とみられており、追加の調整を経て26日の発表にこぎ着けた格好だ。
今後は株主総会で承認されるかが焦点となる。しかし21年6月の定時株主総会では、取締役会議長だった永山治氏(中外製薬名誉会長)ら2人の再任案が否決されるなど、これまでも波乱続きだった。今回の新体制案を株主が支持するかは予断を許さない。
また、非上場化を含めた経営再建策の構築も課題だ。従来、海外の投資ファンドなどが東芝を買収して非上場化する案を示してきたが、5月、日本政府が出資する産業革新投資機構(JIC)も東芝の買収を検討していることがわかった。
東芝は半導体や原子力など、経済安全保障と密接に関わる技術を持ち、外国資本だけでの買収は難しいと考えられてきた。
「外為法の規制をクリアする観点でも日本政府の関与は必要」(業界関係者)との見方もあり、海外勢がJICと組むことになっても驚きはない。
ただ、東芝がファンドや国に翻弄される構図は変わらず、長期的な視点で事業の成長をどう図るかは依然見えにくい。 ”株主視点”ばかりで”社員視点”の議論が見えてこない東芝は、早期に経営体制を安定させ、成長分野の深耕につなげられるか。3月から社長に就任した島田太郎氏の手腕が問われている。
【日本のガバナンスを問う】上村達男・早稲田大学名誉教授
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