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国家安全保障戦略を改定する狙いは何か? 答える人 元防衛大臣・小野寺五典

財界オンライン / 2022年6月8日 7時0分

自らも一定の能力をつけて仲間を増やすことが大事
 ―― 自民党安全保障調査会は、国家安全保障戦略など、戦略3文書の改訂に向けた政府への提言書をまとめました。反撃能力の保有や防衛費の増額などを提言されたわけですが、この提言書をまとめた狙いから聞かせてくれませんか。

 小野寺 日本の安全保障環境はとても厳しい状況にあります。それは北朝鮮、中国の動向です。中国はどんどん防衛力を増し、日本と中国は尖閣諸島を巡って緊張関係にあります。そういう意味では、世界の中でも日本の安全保障は厳しい状況にあるというのが基本的な考え方です。

 その中で、岸田(文雄)総理も、総理に就任してすぐに、このような厳しい安全保障環境にあるので、国家安全保障戦略を見直します、そして防衛計画大綱等も見直します、という話をされました。わたしが会長を務める自民党安全保障調査会で新たな提言をまとめましょう、ということで、去年の11月から19回専門家を呼んで議論をしました。それが今年の4月末に最終的には議員だけが集まり、今回の提言書になりました。

 ですから、ウクライナの問題を意識してスタートしたわけではなくて、予め安全保障環境が厳しいからやりましょうということでスタートしたのです。

 ―― 当初は対中戦略に主眼を置いていたわけですね。

 小野寺 当然、ロシアも中国と手を組んで、日本周辺でかなり軍事演習を頻繁にやっています。ですから、以前まで北方領土問題で対話できるかなと思っていたロシアは、残念ながら、すでに中国と近くなっていた。とすれば、ロシアにも注意を払わなきゃいけないねという考えだったんです。そういう中で、実際にウクライナの紛争も起きてしまったということですね。

 さて、なぜ日本が防衛力を整備しなければならないかというと、実は戦争を起こさないためです。戦争はどうして起きるかというと、兵力の差に大きな差がついてしまったと。そうすると相手からすれば、たいした被害、代償を払わなくても、武力をもって自分の目的を遂行できるのではないかと考える。こういう時に戦争が起きるんです。

 もう一つは、偶発的に衝突して、両国の国民が、政治家も含めてヒートアップして、抜き差しならぬ状況になってぶつかるということもあり得ます。少なくとも後者は、政治家が冷静に判断すれば外交である面では対話ができますが、問題は兵力に差ができた時に大変なことになるわけですね。

戦争の現状とこれからの展開はどうなる? 答える人 元防衛大臣・森本敏



 ―― 戦力バランスに差がついた時ですね。

【ウクライナ侵攻】識者はどう見る? 日本エネルギー経済研究所理事長・寺澤達也

 小野寺 今回、ロシアがなぜウクライナに侵攻したかというと、ウクライナは弱いと思ったからです。2014年にロシアがクリミア半島に侵攻した時に、ロシアはほぼ無血でクリミアを占領できました。また、昨年、米バイデン大統領はウクライナに対して、武力をもって守ることはしないと。NATO(北大西洋条約機構)もウクライナは加盟国ではないので、武力行使はしないと宣言しました。

そうなると、プーチン大統領にすれば、ウクライナは弱いし、一緒に守ってくれる仲間もいないんだなと。それで、ロシアは侵攻を決めたと思うんです。

 われわれは日本という国を、これからも平和で豊かな国であるために何をしなければならないか。そう考えたら、きちんとバランスを取るために日本も一定の能力をつけるべきですし、仲間を増やすということで、同盟国のアメリカだけでなく、例えば、日米豪印の4カ国の枠組みである「Quad(クアッド)」やイギリスなどと組んで仲間を増やしていく必要がある。これは戦争を起こさないためです。

続きは本誌で

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