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慶應義塾長・伊藤公平の「大学は個人や企業をつなぐプラットフォームになる」

財界オンライン / 2022年6月9日 7時0分

今まで何のために知識を蓄積してきたのか?

 ―― 現在はコロナ禍とウクライナ危機が重なっているのですが、こういった危機の時代にあって、どのように大学運営をしていくのか。この辺の現状認識から聞かせてもらえますか。

 伊藤 本当に大変な状況ではありますが、わたしが思っていることは、世の中の歴史学者の知見や考えていることを見逃してはいけないということです。つまり、学問や知というものには、それだけの重みがあるということなんですね。

 どういうことかと言いますと、現在の状況はこの数年で予兆があったのだと思います。世界的なベストセラーとなった『サピエンス全史』の著者、ユヴァル・ノア・ハラリさんが2019年に『21 Lessons(トゥエンティワン・レッスンズ)』という本を出しています。わたしもそれを読んだのですが、中身が本当に凄くて、予言のように全てが書いてある。

 今の人類にとっていちばん危険なことは核戦争であり、地球環境破壊であり、テクノロジーの暴走といいますが、いわゆる、インフォメーションテクノロジーによるディストラクション、破壊だと。この3つがもっとも大きな危機のきっかけだと指摘しています。

 その中で、プーチン・ロシアの危険性についても結構なページを割いて書いており、オルグという富のほとんどは一部の金持ちに集まっていて、完全に情報をコントロールしていると。わたしもそういうものかと思っている中で、今回のことが勃発したので非常に驚きました。

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 ―― 歴史学者の知見を見逃してはいけないというのは、そういうことだったんですね。

 伊藤 ええ。今年の1月に出版された慶應の機関紙『三田評論』で、わたしは歴史学者の磯田道史さんと対談しました。磯田さんは著書の中で、今回の新型コロナウイルス感染症について、初期の段階から第一波、第二波、第三波と波状攻撃が来ると指摘していました。

 京都大学の歴史学者・藤原辰史さんも、コロナが拡大し始めた2020年4月の時点で長期戦に備えよと言っています。お二方がおっしゃるには、これは歴史が物語っている。どんなに公衆衛生や医療が進歩しても感染症は長続きすると。だから、中途半端にちょっと頑張って耐えれば大丈夫というようなメッセージを出すのは間違っていると。そういう話を聞いて、わたしは衝撃を受けたんですね。

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 例えば、慶應には石川忠雄先生(元塾長)のような中国研究を専門にした学者がいたわけですが、そのもとで小島朋之先生のような方が出たりしました。今は廣瀬陽子先生が旧ソ連地域研究の専門家としてテレビで発言していますが、要するに、これまで慶應は様々な地域の研究に力を入れてきました。

 今までは何の役に立つんだと思われたかもしれませんが、各地域とのつながりがあり、その地域から見た世界を知っている人たちが揃っている。そういう人たちの知見を合わせた時、わたしは見えてくる世界が全然違ってくると思います。

 だから、大学に蓄積されてきたものを必要な時に瞬間的に出していく。それが大学の役割だと思っていまして、何のために今まで自分たちが知識を蓄積してきたかということですよね。

 それはなかなか民間にはできないでしょうし、国だけでもできないと思います。

続きは本誌で

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